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後悔先に立たず(12)

ちょっと忙しくて・・・更新遅れました

SIDE TAKARADA

最上君が主演したドラマ『SWING-BY』。
マリアが夢中になって見ていて、俺も何話か一緒に見ていた。

(なかなか良い演技だ・・・)

視聴率は今期のドラマでは文句なしのトップ。今年1番になるかもしれない。その人気を受け、既にBlu-RayBOXの発売が決定し、その特典映像としてメイキングビデオが付けられることになっていた。

その件で「SWING-BY」の監督が相談に来ている。

彼が持ってきたディスクには・・・初めての海外だとパスポート片手にはしゃぐ京子が写っていた。そして撮影現場の様子が映しだされ・・・そこは問題無いらしい、監督が撮影の様子を早送りをする。そして、

「はいカーット! これにて「SWING-BY」の撮影終了!」

そこから、再び再生が始まり、カットの声が掛かった後もその場に立ち尽くす最上君が映る。彼女はそのまま、ゆっくりと空に向かって手を広げ、動きを止めた。カメラには、

(京子ちゃんは、役に入り込むと・・・完全にノリコの気分になっちゃう時があるんです、ちょっと近寄ってみましょう?)

そんな監督の声が入っている。

(これはオープニングと同じような絵ですねー)

特典映像用のカメラが最上君の顔を映し出す。すると最上君の口が動いていて・・・何かを言っている?

(-------------?!)

「音声は流石に使えないので消しますけど・・・映像だけなら、何を言っているか、読唇術のプロでも分らないそうです。だからこの絵を使わせて貰っても宜しいでしょうか?京子ちゃんの表情が・・・素晴しいと思いませんか?」

「この映像を使ってくれて構わないぞ!」

俺は、興奮して思わずソファから立ち上がっていた。

(----やっと最上君の気持ちが蓮に向いたか!)

セバスチャンから「日本に戻ったら真っ先に最上さんに会いに行きます」という・・・蓮からの伝言を聞いていた。これで二人は纏まったも同然。俺は、小躍りしながら『ささやかな』ラブミー部員卒業パーティーの企画を練り始めることにした。


***


蓮が帰国した翌日、最上君と蓮から、

「「大事な話があります、なるべく早く・・・できれば今夜、お時間頂けませんか?」」

とアポイントの申し込みがあった。

(おおっ!?早速、動きがあったか!?)

「20時以降であれば、いつでも宝田邸に来てくれて構わないぞ!」

俺は、そう返答し、その日一日をワクワクしながら過ごした。そうして、夜・・・先に到着したのは蓮。20時丁度にやってきた。

「おっ!早いな!褒美に良いものを見せてやろう!」
「結構です。それよりも先に、話があります」
「俺が見せたいから見せるんだ。話は後だ!まぁ、見てみろ!」

蓮を無視して再生ボタンを押す。例の最上君のドラマのメイキング映像の「アレ」が流れはじめる。こいつには不意打ちでも仕掛けなけりゃ・・・滅多な事では慌てたり、焦ったりする姿を拝めない。俺は・・・折角の面白いネタを握っているのだから・・・蓮が動揺する様子を見たいと、悪戯心を働かせていた。

さて、どんな反応を示すだろう?と、最上君の映像を凝視する蓮を眺めていたら・・・

(蒼白になってやがる。なんだ?その反応・・・)

「これ・・・例のフロリダのロケですか?」
「そう、だが。何だお前ら・・・纏まったんじゃないのか?」

蓮の奴が、どす黒いオーラを放って、俺を睨みつける。

「・・・フラれましたよ、俺は。俺の事・・・何とも思っていないって・・・演技者としては尊敬してるけれど、男としては見られないって・・・なのに・・・・・・」

そんな時、セバスチャンがやってきて、最上君の到着を告げる。

「失礼しま・・・す・・・」

応接室に入ってきた最上君が、蓮の顔を見てビッキっと固まった、けれどすぐに、

「・・・失礼しました」

そう言って、部屋を出て行こうとする。そこからの蓮の行動は素早かった。

「待って!最上さん!」

そう言って、最上君の腕を掴み(離してください!)と騒ぐ彼女を、部屋の中、ディスプレイの前まで連れてくる。そうして、俺からプレイヤーのリモコンを奪い取り、さっき蓮に見せた場面を再生させる。

『・・・いつかは敦賀さんと同じ高みまで・・・輝く星をこの手に・・・あなたが大切な人を作らないと言うのなら、私も一生作りません・・・だから・・・せめて演技者として誰よりも貴方の近くに・・・』

最上君が、自分の映像を・・・茫然と眺めていた。


***


さっきから・・・目の前で言い争いが続いている。

「私は!クオンさんと結婚するって決めたんです!」
「君は俺の事が好きなんだろう!?結婚をしたいなら俺にすればいい!」
「あなたの事なんて昨夜、だ、大っ嫌いになりました!変態!強姦魔!!」

(おっ 「大嫌い」 は、蓮の奴に相当なダメージを与えてるぞ♪)

「・・・俺はっ!君に何もしていないっ!!」
「女の子の一人暮らしの部屋に、真夜中に押し掛けてくる事が既に犯罪なんです!それに、」
「君を抱きしめて、愛を告白しただけ・・・」
「ぎゃー、恥ずかしい事、言わないでください~~~!」

最上君が耳を塞いでしゃがみこんでいる。

(何だかな・・・これは・・・いわゆる痴話げんか、ってヤツか?)

「とにかく、私が今、好きなのはクオンなんです!あなたの入り込む余地はないんです!!」
「さっきからクオン・クオンって・・・君とクオンは1週間前に会ったばかりじゃないか!どうして俺と過ごした4年を、そう簡単に上書きできる!?」

最上君が、ひっ、と、小さく声を漏らした。蓮の奴が「昔の自分」を全開で・・・最上君に詰め寄ってやがる。

「クオンは妖精コーンだったんです。幼馴染なんです!だから敦賀さんよりも、ずっと付き合いが長いんです~~~!」
「でも、再会してたった3日じゃないか!奴がどんな人間か、君は知らないだろう?」

「敦賀さんだって!映画でちょっと共演したからって、クオンの事を知ったかぶらないでください!」
「俺は誰よりもクオンを理解してるっ!」
「な!?敦賀さんの傲慢!嘘吐き!」

最上君が立ちあがって、蓮に対抗し始めた。

「とにかく、敦賀さんよりもクオンの方が何倍も素敵なんです!敦賀さんみたいに似非紳士じゃなくて本当の紳士だもの!背だって敦賀さんより高いし、ハンサムだしっ!」
「君こそ、嘘を吐くな!」
「な!?言うに事欠いて、人を嘘つき呼ばわりですかっ!」

(うーん、・・・気持ち悪い会話だな。まるでクオン本人がここに居ないみたいだ・・・)

「とにかく、私はクオンと結婚します!」
「~~~奴はゲイだぞ!君を女性として悦ばせてあげられな」
「破廉恥!!敦賀さんのスーパー破廉恥!!!!!!!」

(もう、何も言う気が起きやしねぇ・・・が・・・このまま、この気持ち悪い会話を聞き続ける気もしねぇ・・・)

「蓮・・・」

俺は、心の底から面倒くさくなって、けだるく声を掛ける。

「取りあえず、最上君がクオンと結婚したいというんだ。結婚すればいいじゃないか・・・俺が許す」

「・・・!?」

蓮の奴が怖い顔で俺を睨んでくる。

「社長さんを睨むなんてなんて不遜なんですか!社長、ありがとうございますっ!私!これにて失礼させて頂きます!」

最上君が脱兎のように部屋から駆け出して行った。一人残された蓮は、俺を睨み続けたまま、

「・・・俺を卑怯者にする気ですか・・・」

低い声で唸る。

「まぁ・・・愛っていうやつは・・・時に手段を選らばねぇ、もんだぜ?」





次回で最終回の予定です。本誌発売までには終わらせないと!また、思考停止しちゃうかもしれないし!!

後悔先に立たず(11)

5話で終わるといったのに~やっぱり長くなった~嗚呼いつ終わるのか~嗚呼いつ終わるのか~もうちょっと♪誤字直しました!!

SIDE KYOKO

私は、日本に帰る飛行機の中で、左手の薬指の指輪をぼんやりと眺めていた。
空港でクオンとお別れの挨拶をしている時、彼は私が右手にはめていた例の指輪を抜き取って左手の薬指にはめ直した。

「日本に着くまでは左手にしてて・・・」

クオンが何を意図してそんな事をするのか分らなくて、戸惑ってしまう。すると、彼は私の左手を両手で包み込むように覆い、真意を告げた。

「一人の時間に・・・左手の薬指に指輪を付ける意味について・・・結婚に付いてよく考えて欲しい。俺はキョーコと結婚できたら凄く嬉しいけど、本当に君はそれで良いのか、後で後悔しないように、もう一度考えて?」

彼の手に力が籠る。

「俺は来月、出演映画の日本公開に合わせて東京に行くけれど・・・もし君が、愛の無い結婚なんて間違ってる、って思ったら・・・会いに来なくていいから」

クオンを見上げると、慈しむような目で見つめられていて・・・相変わらず優しい・・・彼の気使いに、胸が熱くなる。

「遠距離恋愛をしている恋人が日本に来るんですから・・・会いに行かない訳ないじゃないですか・・・」

彼を安心させたい一心でそう答えた。すると、握られていた手を引かれ・・・気がつくと私は彼の腕の中に収まっていた。そのまま、抱きしめられて頬に軽くキスをされる。

アメリカだと、ハグも頬へのキスも挨拶だと分っているのに、先生やジュリエナさんにされた時には特に何も感じないのに、クオンにされると何だかとても緊張する。私は、条件反射的に身を固くして・・・ギュッと目を瞑ってしまった。

「キョーコちゃん・・・10歳の時に出会ったときから・・・世界中の女の子の中で、君の事が一番好き」

その言葉にはっとしてクオンを見上げると・・・目の前で微笑むクオン。その輝く碧い瞳は・・・まるで太陽が沈んだ直後の、まだ明るい夜空に「宵の明星」が輝く様を写し取ったみたいだった。

私の思考は、左手で輝く指輪の石と、思い出していたクオンの瞳が重なることで、ゆるゆると現実に引き戻される。

(クオンの演技・・・凄かった)

私は、アメリカでは既に公開されているクオンの出演映画を見せてもらって、戦慄を覚えていた。

(・・・一流の俳優は皆、空に輝く星なんだわ・・・)

彼は俳優として尊敬できる。きっと、同じ方向を見て歩いて行ける。

それに、先生だってジュリエナさんだって、クオンと私が結婚したら・・・私の自惚れでもなく・・・すごく喜んでくれると思う。お2人は、私が「娘」になる事を本気で期待して下さっているのが今回の滞在で良く分かった。偽装結婚みたいな真似を、敬愛する先生の息子さんとする・・・その罪悪感も今はもう無い。

「----私、後悔しないよ」

私は指輪ごと左手をそっと胸に抱きしめて、そう自分に言い聞かせた。


***


ショータローの告白を受けて、開きかけた・・・恋心を隠していた箱。

クオンと結婚を決意することで、再び何重にも鍵を掛けたはずなのに。

突然、敦賀さんから愛の告白をされ、その鍵はあっけなく外れ・・・ついに蓋が開いてしまった。



===== アメリカから帰国した翌々日 =====


・・・・携帯が鳴ってる?

突然意識に飛び込んできた音が、聞きなれた携帯の着信音だと気付いた。一体、今何時だろう?ベットに入った時に既に0時を過ぎていたから、もっと遅いのは確実・・・そう考えながら、枕元に置いてあった携帯を掴んで、片目を開けてディスプレイの表示を確認する。

するとそこには「敦賀さん」の4文字。慌てて通話ボタンを押すと、

「夜遅くに御免、大事な話があって・・・君の部屋のドアの前に居るんだけど、中に入れて貰えないかな?」

----敦賀さんが・・・私の部屋の前にいる?!

寝起きの頭に「長身の男性が私の部屋の前に佇んでいる」そのイメージだけがハッキリと浮かんでしまい、慌ててベットから転がり出てドアを開けた。

「こんばんは」
「本当に・・・いた」

真夜中の、突然の超人気俳優の訪問に、

「早く中に入って下さい!」

とりあえず彼を部屋に招き入れ、そうっと廊下を見渡してみる。高校卒業と同時に一人暮らしを始めた時、セキュリティとプライバシーを考えて、内廊下のマンションを選んでいた。

(誰にも見られていないみたい・・・良かった)

ほっ、と一息ついてドアを閉めて鍵をかけ、振り返ると、急に両足が中に浮いて、顔が敦賀さんの肩口にぶつかった。

(なにごと!?)

混乱している頭が「自分は敦賀さんに抱きかかえられて運ばれている」そう理解した時には、彼はベットの前まで移動していて、私を抱えたまま、座りこむように背中からベットにダイブし、勢いのままに体を半回転させていた。

つまり敦賀さんは、私に覆いかぶさるような格好になって・・・その腕で、私の体をぎゅうぎゅうと締め付けてくる。

(なななななな、何が起こったの~~~~~~!?)

「最上さん・・・俺は君を愛してる・・・」

(!?)

「ずっと・・・ずっと好きだった。付き合うのも、結婚するのも・・・俺にして」

(!?!?)

「ダークムーンごっこの時だって、あの時はふざけて誤魔化してしまったけれど・・・あの時、もう既に・・・俺は、君の事が愛しくて、思わず君を抱きしめてしまった・・・」

(!?・・・そうだ、この状況、あの時と一緒だ!)

「ちゃんと伝わるまで、信じてもらえるまで、何度でも言う。敦賀蓮は、ずっと前から最上キョーコさんを愛してる」

そう言って、敦賀さんが上半身をゆっくりと起こす。

突然の訪問に混乱して、私は電気も付けずにベットから飛び降りていてた。暗くなったら自動点灯する・・・フットライトだけが、部屋を頼りなく照らすけれど・・・その光だけでは、敦賀さんの表情まで伺い知れない。でも、暗闇の中・・・

----敦賀さんと目が合った

そんな気がした。

・・・その時に思い出したのはクオンの優しい碧い瞳だった。

後悔先に立たず(10)

とりあえず・・・出来た分だけ

SIDE REN(KUON)

『敦賀蓮』の時、最上さんと俺の関係は何年たっても先輩・後輩のままだったのに、『クオン』になったらあっという間に結婚の話まで行き着いてしまった。

(でも・・・恋人までの距離がまた遠くなった気がするのは気のせい・・・か?)

最上さんはクオンとの結婚を快諾してくれたけれど、理由が理由なだけに嬉しくない。でも、恋をしたくないから結婚します!というとんでもない事を言い出した彼女を他の男に行かせないようにする確実な方法が思い付かなかった。

思わず溜息が漏れてしまう。

「あらクオン?、朝から元気が無いのね?可愛いキョーコがいて、緊張しているのかしら?」
「だよなぁ。少し会わないうちに、キョーコは随分綺麗になったし」

俺の沈んだ気持ちとは裏腹に、両親は明るい。

「/// 何をおっしゃってるんですか!ジュリエナさんも先生も・・・」
「キョーコ、私はお前の「とうさん」だろう?いつ、私とお前の親子の縁は切れてしまったんだ?」
「そうよ!ここに居る時には私の事も「かあさん」って呼んでくれなきゃ嫌よ!」
「・・・あの、先程も申し上げた通り、本物の息子さんがいる前でそれはちょっと・・・」

最上さんのヒズリ家・滞在2日目の朝。
この朝食の席で、父さんは最上さんと久しぶりの再会。母さんに至っては初顔合わせを果たしていた。ハリウッドスター×2は「キョーコの滞在中にオフを取るぞ/取るわ!」と決意していたけれど、結局それは、最上さんの滞在初日の深夜まで仕事がみっちり、という状況を作っていて、昨日は会えずじまい。そのせいか、朝だというのに俺の両親のテンションが妙に高い。

「ならいっそ、クオンと結婚して、本当の「娘」になってくれたら良いのに~。そうしたら「かあさん」って呼んで貰えるわよね?」
「そうだよなぁ~、私も常々娘がいたら良いと思っていたし・・・」

「「キョーコ・ヒズリって良い響きだな/ね・・・」」

2人の声が同時に響く。相変わらず・・・仲が良いというか。最上さんは、(どうしてこんな!?)と、俺の方を見つつ、目が泳いでしまっている。俺は肩を竦めて、(何も言っていないよ?)と彼女に合図する。

「・・・キョーコが困ってますよ?」

暴走気味の両親に、ゆるく釘を刺す。既に、最上さんと俺の間で「婚約」が成立している事は、まだ秘密。彼女とは、

『俺達は、君がヒズリ家に滞在した時に運命的な再会を果たし、それをきっかけに付き合いだして、電撃結婚する』

という流れにしようと話し合っていた。だから、それなりにこの滞在期間中に仲良くなった事をアピールする必要はあったのだけれども・・・両親は、俺の長い片思いを知っているせいか、彼らなりに気を使っているというか、お節介と言うか・・・さっきから妙な熱烈歓迎ムードだ。

両親には、久遠の仕事が軌道に乗るまで、「敦賀蓮」=「クオンヒズリ」である事は最低限必要な人間にだけしか明かさない。 最上さんにも・・・いずれ言うつもりだけれど、今回の滞在中はまだ秘密、と前もって告げていたのにも関わらず。

「あの、私とクオンさんがどうの、というのは、ジョークにしても、どうかなとか思うのですが・・・」
「どうの、がどうかなとは?どうゆう意味だ?キョーコ」

「えっと、結婚とか・・・唐突過ぎて・・・クオンさんも困っていますし・・・?」
「キョーコはクオンじゃ不満かしら?」

「いえ、クオンさんのほうが、私ごときじゃ・・・ご不満かと・・・」
「「それはないから!!」」

「は・・・そですか・・・それは、何よりな事でゴザイマス」

最上さんが、両親の迫力に他人事のような反応をしつつ、俺に縋るような眼差しを向けている。でも、この二人はある意味確信犯だから、俺がどうこう出来るはずもないし、どうこうする気も無い。だから流れに乗って、

「俺は京都の河原で会ったときからキョーコ忘れた事はなかったよ?・・・日本の女の子と言えばずっと君の事だった」

両親にも告げていなかった過去の思い出話---京都の河原での出会い---を披露した。それを聞いた2人は、

「「まさにクオンの運命の相手!!!」」

と感激してしまい、3日間の最上さんの滞在中、熱烈歓迎ムードはエスカレートするばかりだった・・・。


***


最上さんを空港に見送った後、社長に国際電話を掛けて、簡単に今回の事を報告する。
きっと、彼女は日本に帰ったら、椹さんなり社長になり、近々俺と結婚するという話を持っていくはずだから。

『最上さんが愛の無い結婚すると言い出したから、クオンヒズリが相手として名乗りを上げて快諾を貰いました』と。

「まったくラブミー部員は何を考えているのやら・・・」

社長の溜息が聞こえる。

「俺だって知りたいですよ・・・」
「で、これからどうするんだ?そのまま結婚しちまうか?」

「そんな・・・出来る訳ないじゃないですか。とりあえず他の男と結婚させないための苦肉の策ですよ」
「しかし・・・敦賀蓮が駄目なら、久遠ヒズリか・・・必死だな」

電話越しに、社長が、ふふん、と鼻で笑った声が聞こえる。

「それにしても、お前がここまで、形振り構わない恋をするとはなぁ・・・本気の相手には、フラれたって簡単に諦められない、って事これで身に染みただろう?」

今は・・・きっと、ニヤニヤと嫌な顔で笑っているに違いない。なんとなく、それが気に入らなくて、

「・・・俺はまだ一度も、最上さんにフラれてませんから」

と、反論する。すると、電話越しに社長が息を飲むのが分かった。

「るぇん・・・ちょっと待てや・・・」

悪の組織のラスボスのようなドスの効いた声が受話器から響く。

「お前・・・まさかと思うが、敦賀蓮の姿で最上君に一度もフラれた事がない、とか言わんよなぁ・・・」
「ない・・・ですが、それが・・・?」

「なんだとぉぉぉぉ!? この大馬鹿野郎!!!!!!!」

受話器から突然落ちてきた雷声に、耳がキーンとなる。

「俺はてっきり「敦賀蓮」が最上君に告白して玉砕したから仕方なく「クオン」を持ち出したのかと思ったのに!
自分の気持ちは言わないままで妙な策を弄するとはっ!
まずは敦賀蓮として最上君に正面から当たるのが筋だろう!
お前は、只の格好付けの・・・・ヘタレだっ!」

「俺は何度も告白しようとしましたよ!でも、その度に・・・」

「えぇい!言い訳なんぞするな!お前、フラれるのが怖いとか、自己保身に走って無かったと言えるのか!?本気で最上君を愛しているというのなら、まずはその熱い想いを持って、粉々に粉砕されるつもりで彼女にぶち当らんでどうする!!もし、最上君が俺の所に話を持って来るまでに、お前が告白しなかったら「クオン」=「蓮」だとバラしてやるっ!俺の目の黒いうちは認めんぞぉぉぉ!このチキン野郎!!」

「な!?一体何の権利があってそんな事・・・これは、俺と最上さんの個人的な問題で・・・」
「権利もくそもあるかっ!他人に堂々と言えない疾しい事に権利になんてモンは無いっ!!!」

愛は卑怯であってはならんのだーーー!!

----ガチャン。

電話が切れた。直に掛け直すけれど、社長秘書から取り継ぎ拒否を申し渡されてしまう。

(ちょっとまってくれ。今の状況で、「クオン」=「蓮」だとバレるのは・・・かなり不味い、だろ?)

社長なら、本気でバラしかねない・・・と思うと、嫌な汗が流れるのが分かる。でも・・・社長の言う事は正論だ。これまで俺は、彼女に気持ちを伝えてた事がないのに、勝手に嫉妬したり、社長いわく「妙な策」を弄したり・・・。彼女が突拍子も無い事を言い出したから、言えなかった、というのは確かに言い訳に過ぎない。

----あの不破ですら、ちゃんと彼女に気持ちを伝えたのに・・・。

「いつまでも進歩が無い奴だな」

思わず、一人呟いてしまった。




蓮様の危機は、相変わらず続くのです・・・。

後悔先に立たず(9)

意地でも間に合わせると思ったのに、間に合わなかった・・・。敦賀蓮さん、お誕生日おめでとうございます。仲村先生、乙女(?)の 欲望 願望そのままのマンガをありがとうございます・・・

SIDE KYOKO

「ここから宇宙に旅立つの・・・」

私は、スペースシャトルの発射台を見上げて言葉をこぼした。


「はいカーット! これにて「SWING-BY」の撮影終了!」

その声にスタッフ全員から歓声が上がる。ドラマ「SWING-BY」の最後の撮影はアメリカ合衆国フロリダ州の宇宙センターで行われていた。

----最終回、ノリコは大学院を修了し、宇宙開発事業団に就職。ついに宇宙飛行士候補に選ばれる。

私は、シャトルの発射台を見上げたまま、ノリコがここまで来るまでの道のりを、まるで自分自身の物のように思い出していた。
子供の頃から宇宙に憧れて、ついにここまで来た。でもそれは・・・決して一人の力じゃない。小学生の頃、アニメを見て宇宙に憧れるノリコに、両親は子供の他愛ない夢だと本気にしなかったけれど、天体望遠鏡を買ってくれた・・・高校時代、唯一、物理の先生だけが私の夢を真剣に聞いてくれて、夢を叶えたいなら、T大理科一類に入学して本気を見せろと発破をかけてくれた・・・大学に入って航空宇宙工学を専攻してからは、指導教官、そして同じ「宇宙」に夢を抱く同級生に勇気づけられた・・・。

ドラマのタイトルになっている「SWING-BY」、元々は宇宙船が惑星の重力を利用して「運動エネルギー」を分けてもらい飛行方向と速度を変更する技術を指す。「私」も周りからちょっとづつ「夢を叶えるエネルギー」を分けて貰って、見事に宇宙飛行士というゴールに到達した。

発射台を見上げていると、胸がトクトクと高鳴るのを抑えられない。「私」はやっとここまで来て、ここから宇宙に飛び立つ・・・なんて幸せな気分・・・。



暫くして・・・完全にノリコとシンクロしていた最上キョーコが、周囲のざわめきと共に、次第に分離し始める。

(「私」も、こんな遠いところまで来れた・・・私の目標は・・・まだ遠くて手が届きそうにないけれど・・・いつかは敦賀さんと同じ高みまで・・・輝く星をこの手に・・・)

「京子ちゃん?終わったよ?」

監督さんに声を掛けられて、急速に我に返る。気がつくと、私は、無意識にドラマのオープニングと同じ、空に向かって手を広げるポーズを取っていた。

「す、すみません!なかなかノリコが抜けなくてっ!!」

「うんうん、君のノリコは色々と凄いから、そうだろうなぁ~とは思ったんだけど・・・もうカットを掛けてから10分もそのままだったからね?流石に・・・ね?」

(うわぁ、恥ずかしい・・・)

「いやぁ、正直、最初はこんな地味なストーリーのドラマどうよ?って思ったけど・・・君の好演のお陰で、すごく良いものになった。とても貴重な経験をさせてもらった、どうもありがとう」

監督さんにお礼を言われて気恥しくなってしまう。

「監督の演出が素晴らしかったんです・・・」

「SWING-BY」は、恋愛ドラマでもなければ派手なアクションもなく、陰謀も渦巻かない。ショッキングな出来事は何も起こらずに、割と淡々とノリコの時間が過ぎていく。しかし、平凡な女の子が宇宙飛行士になるという、一見、非現実的な夢を現実に起こり得るものとして丁寧に表現されていて・・・ドラマは視聴者の共感を呼び、ずっと20%台の視聴率を保っていた。

「これで、このドラマも終わりなのかと思うと・・・感慨深いというか・・・寂しいよ。きっと視聴者も同じ気分になってくれると思う」

「私も少し寂しいです・・・でも、ノリコの輝く人生はこれからですから!!」

私は役になりきるだけで、こんなにも幸せを感じることができた!私はその手ごたえに、女優として一段階段を上ったことを実感していた。役が終わるのは確かに寂しい。でも・・・それ以上に、次のお芝居のをするのが待ち遠しい。

(----きっと恋や愛の幸せも、お芝居の中で感じる事ができるわ・・・)


***


一夜明け、私はロサンゼルス空港に降り立ち、迎えの人を探していた。

これから、先生ことクー・ヒズリの家を訪ねる事になっている。前から「いつでも遊びにおいで」と誘われていて、今回のアメリカロケが決まった時、せっかくアメリカまで行くのだから!と、真っ先に連絡をして都合を聞いてみた。すると、

「やっと、遊びに来てくれるのか!ジュリと一緒に待ってるぞ!で、どれくらい居られるんだ!!」

先生は私がいる間に絶対にオフを取るから!と、張り切って下さって。この時には、純粋に先生のお家に遊びに行くのが目的だったのだけれども・・・今は、もう一つの、大きな目的が加わっていた。

(久遠さん・・・私の旦那様になるかも知れない人にこれから会うんだ・・・)

敦賀さんは久遠さんについて、

『彼とは今回の映画の撮影で初めて会ったんだけれど、年齢も一緒だし、背格好も良く似ていて、なんだか他人の気がしなくてね。それは彼も感じてくれていたみたいで、あっという間に意気投合したんだ。

それで親しくなるうちに・・・実は彼は女性に興味が持て無いんだって打ち明けられて。アメリカでは彼のような性癖は珍しくはないみたいなんだけど、でも胸を張れる事じゃなくて。特に、尊敬する両親に迷惑が掛かると思うと絶対にカミングアウトできないって、とても深く悩んでいた。

昔は無理して女の子と付き合ってたみたいなんだけど、すぐに我慢できなくて・・・長い間、誰とも付き合っていないみたいんなんだけど、そんな彼に、周囲は実は同性愛者なんじゃないかと疑いの目を向けてくるし、両親にもどこか体が悪いんじゃないかと心配されるし、いたたまれないって・・・』

私はそこまで聞いて、敦賀さんが何を言わんとしているか分ってきた。

『もしかして・・・?』

『もし君が、彼と結婚してあげたら・・・彼の同性愛者疑惑は晴れ、彼は「楽になれる」。君は父親のクーヒズリに気に入られている同業者で出会いは自然だ。君は・・・愛の無い契約結婚が望みなんだろう?』

『・・・』

『とりあえず、良い奴だから一度、話してみなよ。「SWING-BY」のロケの帰りにクーヒズリの家に行くんだろう?きっと、そこで彼に会えるから。君の事は俺から彼に話しておくから・・・本当に結婚するかは、それから考えればいい』


***


「・・・Miss Mogami ?」

一寸、思考の小部屋に籠っていたら、後ろから声を掛けられた。

「Yes! I'm Kyoko Mogami ! 」

慌てて振り返ると、長身で・・・敦賀さんとよく似たシルエットの男性が立っていた。敦賀さんが自分と同じ年で、背格好が良く似ているって言ってた。金髪碧眼で・・・敦賀さんよりも柔らかな印象がするけれど。きっとこれが久遠さんだ、と私は確信する。

「Nice to meet you, Mr. Hizuri! さ、Thank you very much for coming...」
「日本語、話せるよ?」

私の挨拶に流暢な日本語が返され驚いてしまう。

「子供の頃から父に日本語を習っていたからね?」

そう言って、久遠さんが笑顔で小首をかしげると、さら、と金の髪が流れる。

(すっ、ごく綺麗・・・な人)

先生が久遠さんの事を「生きた芸術品、その美しさはもはや人のそれではない」と称えるのは、大袈裟でもなんでもない、と実際に会った今なら分る。自分自身がこんなに綺麗だと・・・女の人には興味を持てない、と言うのも納得してしまう。

「どうしたの?もしかして、俺の顔を見て何か思い出してくれた?」

あまりに人間離れした綺麗なその容姿に私は見惚れてしまっていて、いえ、その、と慌てることしかできない。私が焦りまくっているのを、気にもせず、久遠さんが続ける。

「僕たちの挨拶は・・・本当はNice to meet youじゃなくて、Long time no seeだよね?久しぶり、キョーコちゃん」

そう言って笑う久遠さんの顔に、私が「久遠少年」のを演じる時にモデルにした「妖精コーン」の笑顔が重なった。

「・・・・・・コーン・・・」

「『ク・オ・ン』だよ?あの時、俺は自分の名前を日本語っぽく発音出来なくて『コ・オ・ン』と言ってしまったから、君は俺をトウモロコシみたいに呼んだけど」

「クオン・・・」

「君は俺があげた青い石を大事に持っていてくれてるんだって?蓮に君の事を聞いてから、君があのキョーコちゃんだと確信して、会えるのをずっと楽しみにしてたんだ!」

私は、あまりの予想外の人物との再会に・・・妖精国に来てしまったのかしら?と、しばし見当違いな事を考えていた。


***


SIDE REN(KUON)

ずっと妖精だと信じて疑わなかった「コーン」の出現に、最上さんがピタリと動かなくなってしまった。

(・・・まぁ、呼吸はしているみたいだし・・・)

左手で彼女のスーツケース、右手で彼女の手を引き、車に乗せて自宅まで連れて帰った。とりあえず、リビングに座らせて、コーヒーの準備をする。彼女と向い合せに座ってしばらく様子を伺うけれど、彼女はまだフリーズしたままで・・・我に返った時が見ものだな、とは思ったけど、ここまでショックを受ける・・・とはね。

「キョーコちゃん!」

俺は待ちきれなくて、彼女に自分を見て欲しくて声を掛けた。

「・・・・コーン・・・」

未だ、夢うつつ状態の彼女。

「だから、ク・オ・ン、だよ? ほら、これを見て?」

俺は、自分が10歳の頃の家族写真を見せる。

「これが俺。こっちが父親のクーヒズリ、これは母のジュリエナ」

最上さんが、しばらく写真を凝視して・・・俺の顔をみて・・・写真を凝視して・・・ぶわぁあと大粒の涙を流し始めた。

「コーン!!こんなに綺麗に、それに大きくなって!元気そうで良かったよ~~~~~~~!!」


***


俺は、泣きじゃくる最上さんを抱きしめて慰めながら、

『今までは、何をやっても父親の七光りと言われて潰れそうになったけれど、やっと自信を取り戻して再び映画に出演することになった』

と、これまでの事をかなり省略して話した。

「クオン、今、幸せ?」

まだ潤んだ瞳の最上さんに見上げられ、俺は思わず固まってしまう。

(クオン、とか、そんな顔で見つめられながら言われると理性が・・・)

「答えられないんだね・・・もし、私で良かったら、結婚するよ?あの時は、私ばっかり慰めてもらっちゃったけど、今度は私がクオンを助けてあげる!!」

最上さんに自分が敦賀蓮であること明かさないのは卑怯だと分ってる。

彼女が空っぽの自分に戻りたくないからと、恋愛を捨てるのは彼女の自由で、その手段が結婚なのも彼女の自由で、彼女が彼女を愛している男とは結婚したくないと思うのも彼女の自由。

俺がどんなに彼女の事を好きでも、それは彼女の自由意思を・・・行動を・・・変える理由に成り得ない事も分ってる。

----ならば、彼女の意思で選んで貰うしかないじゃないか!

俺は・・・他の男に君を取られるのを阻止するためなら、どんなに卑怯な手を使っても・・・後悔しない自信があるんだ。もう随分と昔から・・・君の為なら神にも背くと・・・誓ってしまった。

「・・・本当?凄く嬉しい。キョーコちゃん。どうか、キョーコ・ヒズリに、俺のお嫁さんになって下さい」




蓮さまの誕生日が終わるまであと・・・5時間。でも、アメリカは時差があるから!!!(意味不明)

追記)キョコさんがどんな気持ちで空を仰いでいるか・・・自覚しちゃえYO!

後悔先に立たず(8)

人間慌てちゃいけません少し直しました内容は変わりません。冗長な文章を削り、言葉足らずの場所を足しました。0209/19:27
本日2回目の更新です!初めての蓮誕ですから!!意地でも間に合わせます!!


SIDE KYOKO

「SWING-BY」の宇宙飛行士役にはモデルがいる。

もちろん「ノリコ」とその女性の人生とは違うものだったけれど、所々に現れるエピソードなどは実際に彼女が体験した事がそのまま使われていたりする。

その女性宇宙飛行士の方との対談が実現した。

「初めまして「京子」です」
「初めまして「ムロイナオミ」です」

(うわぁ・・・綺麗な人。しかも、これでT大卒だなんて・・・神様は不公平ね・・・)

ムロイさんは話上手で、対談はスムーズに終了した。写真でみると少し冷たい感じのする美人・・・という印象だったけれど、実際には気さくで感じが良くて、私はムロイさんの事が凄く好きになってしまった。だから、対談が終わった後、もう少しお話したくて・・・役作りの参考にさせて下さい!と、宇宙開発事業団の広報の方とムロイさんを、TV局のカフェにお誘いした。

「ムロイさんって、研究者さんなんですよね?なのに、アナウンサーさんさんみたいにお話が凄く上手でビックリしてしまいました!」

すると広報の担当者さんが、

「それも宇宙飛行士の必要条件の一つですからね?」

という。

「宇宙では、狭い空間の中に大勢の飛行士が何日も閉じ込められて・・・緊張の強いられる共同作業を続ける訳です。万が一、喧嘩なんかしたらミッションの可否に係わります。だから、宇宙飛行士には、高いコミュニケーションスキルと人好きのする性格の持ち主である事が必須なんです」

「ふわぁ~、じゃあ、ムロイさんは才色兼備な上に、性格も良いってお墨付きなんですね~!無敵ですね~!」

そこで、私はノリコの境遇について思い出す。工学部に所属するノリコの周りは男ばかり。女子の理系進学が珍しく無くなってきているものの、その殆どが医薬系。工学部のしかも航空宇宙工学専攻となると女子は~3%しか居ないと聞いていた。だからきっと、

「ムロイさん・・・凄くモテたんじゃないですか?」

思わず、聞いてしまった。

「そんな事、ないですよ?私は、昔も今も、女を捨てて勉強と研究に没頭してましたから!」

とムロイさんは言うけれど、

「またまた~、ムロイさんのモテモテ伝説は聞いてますよ!?ファンクラブまであったんですから!」

そう言って、広報の人がムロイさんが男子学生の憧れのマドンナで、モテまくっていた事を嬉々として説明してくれた。その頃は、まだ言葉が無かったけれど、今で言うところのストーカーもいたらしい。

「だからね、ムロイさんはホトホト参ってしまって、私には彼氏が居ますから!!って、お兄さんのお友達に『彼氏のフリ』をしてもらて・・・でも、結局「俺の方がナオミを幸せにできる!」って、益々そのストーカーを煽る事になってしまって大変だったんですから!」

ムロイさんが、そんな事を京子さんに言わなくても・・・自慢にならないんですから。そう言って、遠い目をして諦めたように話を始める。

「実は・・・夫には内緒ですけど・・・結婚して何が嬉しかったかって、もう惚れた腫れたの問題に悩まされる事が無かったのが一番だったんです。それまでは、仕事上の問題があって、時間が無いからパワーランチ(仕事の話をしながらのランチ)に同僚男性を誘っているのに、変に気があると勘違いされたりして、気を使って大変だったんです。
でも、結婚してからは・・・私が浮気をする不誠実な人間じゃない、って事だけは分かって貰えていたみたいで、やっと『常に恋愛対象として意識される』事から開放されたんです。その時に心の底から、色恋問題から逃げる為に、楽になるために結婚を選んで良かった!って思ったんです」

(・・・・・・・・・・・楽になるために結婚!!!)

私が指輪をするようになってから、告白をしてくる男性の数は激減した。でも、それでもゼロになった訳じゃなくて、こちらが恥ずかしくなるような熱烈で真剣な告白を・・・それなりに親しくなったと思える男性からされるようになっていた。

それが軽薄な愛の告白に紛れこんでいたら、私は流してしまえていたのかもしれない。でも、時々、不意打ちのようにやってくるソレは、ボディーブローのように、私の心に堪えていた。

(今なら、モー子さんが言ったように、モリさんは真剣に私の事を好きだったって分かる。あの時は、誠意をもってお断りしたつもりだったけど、全然、誠意なんて無かった・・・)

私も既に二十歳になって、親の許可がなくても結婚ができる年齢になった。
今まで、この破廉恥ボディ目当てだとか、何だかんだと理由を付けていたけれど、私はいつの間にか大人の女性になってしまっていて・・・この体の変化だって、もしかしたら必然だったのかもしれない。

私が恋とか愛とかしたくない!私は色気も何もない子供なんです!って、思っていても、周囲が私を恋愛対象として見る事を止めさせる事はできない。私は中途半端な小芝居を打って上手く逃げたつもりだけど・・・きっとそれだって直ぐに限界がくる。

「ムロイさんって意外と愛の無い結婚をしてるんですね~?」

広報の人がムロイさんに突っ込みをいれていた。

「彼の事はそれなりに好きですよ?
女性にとって、大好きな人と結婚してずっと一緒にいられるっていうのも、一つの幸福なんだって事は認めます。それを否定するつもりはないです。でも、私は宇宙飛行士を目指して、その夢が叶ってとても幸せなんです。もし、私が大好きでしょうがない人と結婚していたら、アメリカと日本を往復する・・・年の半分以上も愛する人と会わない宇宙飛行士候補生の生活に・・・耐えられなくて、宇宙飛行士の夢を諦めていたと思うんです」

私、器用そうに見えて、意外と不器用なんです。そう言う、ムロイさんの笑顔がとても晴々としていて、私の心に深く刻み込まれていた。


***


SIDE REN

最上さんからムロイさんの話を聞いて、問題がそれほど単純で無い事を知らされる。

「さっき、敦賀さんが間に入ってくれなかったら、私・・・ショータローに昔感じていた・・・もう2度と触れないと決めていた恋する気持ちを再び思い出してました。そしたら、きっと私は、女優業を放り出して、ショータローの帰りを待つだけのバカで空っぽな女に戻ってしまって・・・それでまた、捨てられるんです」

進歩無いですよね、と最上さんが力無く笑う。俺は・・・本当にギリギリのラインで、彼女が馬の骨に攫われるのを繋ぎ止めていたんだ・・・と再び、体から力が抜けるのを感じた。

「私は・・・空っぽだった自分を少しずつ埋めてくれた女優というお仕事を極めたいんです。それだけで幸せになれるんです。愛も恋も、お芝居の世界の中で感じられればそれで十分なんです」

「そう・・・なんだ」

「だから、現実の世界では誰かと愛の無い結婚をして、誰に対しても!もう2度と恋する気持ちなんて感じないよう、心に厳重に鍵をかけて、可能性という名前の鍵穴を潰して・・・それこそ宇宙の彼方に捨ててしまうんです!」

ラブミー部員の病は・・・こんなにも深く彼女に根付いてしまっている。
何て・・・昔も今も君は不器用なんだろうか。俺に恋してくれたら・・・俺が君を空っぽの女になんてさせないのに。君は不破尚との拙い恋しか知らないから、きっとそう思ってしまうのだろうけど・・・。

「できればムロイさんの様に、年の半分くらいは別居婚なんていうのが理想なんですけどね?あ!でも!!例え、愛の無い結婚をしても、一緒にいる間は、美味しい料理を御馳走しますし・・・それに、夜のお相手だってしますよ!最上キョーコは、今やセクシーダイナマイトですからね!きっと相手も満足してくれます!事情を話せば、きっと理解してくれる男性もいますよ!!」

お願い、冗談でも、そんな事・・・言わないで。
君が愛の無い結婚をして、その男に抱かれるなんて、俺の気が狂ってしまう。愛していない男に抱かれる覚悟があるのなら、どうか俺に・・・。

「最上さん・・・君の気持ちは分かった。それなら俺が君に・・・君の理想の結婚相手を紹介してあげる」

俺は、君を手に入れられるのならば、いや、他の男に渡さないで済むのなら、もう何だって利用するつもりなんだ。

「今回の映画の共演者でね、久遠ヒズリ・・・君が尊敬する クーヒズリの息子さん・・・きっと彼は、君にとって理想の結婚相手になるよ?」





やっと、終わりが皆さまにも見えてきましたか?
ノリコさんは、皆さんの言うとおり、あの有名アニメから取りました。ムロイさんはフィクションなので、くれぐれも実在の宇宙飛行士さんが愛のない結婚をしてるんだ~と勘違いされないでくださいませ。
プロフィール

Agren

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



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