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会いたくて(21A)

会いたくて(19)の続きの別バージョンを用意しました。Aが付いている番号順に読んでください

SIDE REN

----彼女の母親は「最上冴菜」。父親は「西京セラミクスの不破社長」。最上さんは、母親の失踪直後に・・・恐らく合意のない関係によって・・・この世に生を受けた。俺には、それ以外の可能性を考えることができなかった。

ショールを羽織って戻ってきてから、最上さんはいつも通りだった・・・少なくとも表面上は。でも、彼女は俺に明かしてくれたじゃないか。

(ずっと母に憎まれていると思ってた)

多分、彼女は自分の出生を知っている。彼女にとっての母親は『失ってしまった大切な人』。その母親が手掛けたジュエリーを不意に手に入れてしまったら・・・喜ぶ?それとも?・・・俺は(彼女は今、何を思っているのだろう?)そう考えるだけで自分の胸が痛むのを感じた。

***

レセプションの終了時間も過ぎ、残っているゲストもあと僅か。俺は彼らに挨拶をしながら、彼女の方へ向かう。

「今夜はありがとう・・・疲れただろう? ここはもう良いから、部屋に戻ろう」

返事も聞かず、彼女を会場から連れ出す。

「あ、はい・・・私・・・今日は本当に疲れました・・・。」

そう言って、疲れていることを素直に認め、力なく笑う。母親のブローチを手に入れたことは、彼女にとって喜びとは違う気持ちを喚起させたようだ。

「そうだね・・・今日は早くお休み?その格好は「肩がスースー」するんだろう?風邪をひいてしまうから、直ぐにお風呂に入って体を温めて・・・いくら自分のドレス姿が気に入ったからって、「自分撮影会」なんて始めちゃだめだよ?」

「もう!私はナルシストじゃありませんから!そんな事しませんよ!!」

すこし、最上さんに明るさが戻って安心する。

「とにかく、早くお休み?」

そう言って、俺は彼女を部屋に送り届けた。


SIDE KYOKO

父と出会う前に母が作ったブローチ。清野さんは、

(『冴菜』は20年以上前、数十点しか作品を作らなかったけれど、高い技術と繊細な感性を兼ね備えた不世出の彫金師と言われていているのよ?)

と言った。ブローチは良く見ると、細かい細工が幾重にも施されていて・・・確かに、同じような品は他に無いのだと感じる。冴菜の作品は・・・持ち主が手放さないから市場にも出ない、知る人ぞ知る名品なんだそう。

母は父のせいで、天職だったジュエリーデザインをやめ素生を隠して生業として小説を書き始めたんだ。『京子』以上に『冴菜』は人々の称賛を受けるはずだったのに・・・母は私の事を愛してくれたと手紙にしてくれたけど・・・父を許したとは一言も書いていなかった。

----私は父の娘であることが本当に悔しい。

私は、母のブローチを眺めながら思考の小部屋で膝を抱えていた。


***

----プルルルル

部屋の電話が鳴って、意識が急浮上する。

「Hello」
「あ、最上さん、まだ起きてた?」

敦賀さんからの電話だった。

「ええ。どうしたんです?」
「・・・少し話ができないかと思って。今、大丈夫?」

時計を確認すると、PM10:00だった。部屋に戻って1時間程、経ってしまったらしい。

「ええ、大丈夫です」
「そう?それじゃ・・・」

そこまで言うと、電話が切れてしまった。

(あれ?)

受話器を一旦置いて、こちらか掛けなおそうか?それとも掛かってくるのを待とうか?と思っていたら、いきなり、部屋のドアから敦賀さんが入ってきた。

「こんばんは、失礼するよ?
 最上さん、駄目じゃないか、ドレスを着っぱなしで。ちゃんと直ぐにお風呂にはいって寝るように言ったのに。あーあ、体もこんなに冷えてる」

そう言って、ギュッと抱きしめられる。最初は、私はいきなり部屋に入ってきた彼に、ただ声もなく唖然としていたが、

「な、な、なんでいきなり部屋に入って来られるんですか~!非常識です~!」

思わず、叫んでしまった。

「ちゃんと、まず電話したし?俺の持っているキーはマスターキーだから、どの部屋でも出入り自由だし・・・」

「と、とにかく、離してください~!!」

私がジタバタしていると・・・

----ぐ~きゅるるる

私の・・・おなかが・・・盛大に自己主張をした。ああ・・・なんてタイミング。


***

部屋には、ルームサービスのサンドイッチとお茶が運び込まれている。

レセプションは立食パーティーの形式で、それは豪華な御馳走が並べられていた。でも私は、レセプションの開始直後にはゲストの相手に追われていて、用意されていた食べ物に殆ど手をつけることができず、清野さんと話してからは、食欲自体が湧かなくて・・・結局、何も食べていないに等しかった。

「くすくす・・・お腹、すいているんだろう?さぁ、召し上がれ?」

敦賀さんが、やけに楽しそうに私を眺めている。さっき、お腹のスリップ音を聞かれてしまって

(君は・・・着替えもせず、お腹が空いているのに食事もせず・・・ずっと、何をしていたんだい?)

そう問われ「母のブローチを眺めていました」に代わる言い訳をグルグル探していたら、

(さぁ、まずはバスを使って?俺は、ルームサービスを頼んでおくから、さぁさぁ)

と半ば強引にバスルームに連れていく敦賀さんに「あなたが部屋にいるのにお風呂になんか入れません!」と言うべきタイミングを失って・・・そうです、はい、男の人を部屋に入れ、お風呂を頂いた状態ナノデス。

「どうしたの?食べないの?」

そう言われて、ハッとする。

「あ・・・あ、頂きますね?うん、とてもおいしいです」

(それにしても・・・話って何かしら?)

そう考えて、ある可能性に思い至り・・・私は手に持っていたサンドイッチをボトリと落としてしまった。

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プロフィール

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



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