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会いたくて(オマケ3)

SIDE OKANO(&MATSUDA)

こんにちは客室乗務員をしておりますオカノと申します。
乗務歴約20年の(自分で言うのもなんですが)ベテランです。本日は、ヒズリグループの会長が所有するプライベートジェットのお世話をするため、成田-新東京国際空港に来ております。

乗客はヒズリホテルズの敦賀蓮様。会長のご長男様です。ホテルのプレオープンを取り仕切られるため、トルコのデニズリまで行かれるとの事。他に秘書の方が1名と同乗されると聞いております。

「こんにちは、今回もよろしくお願いしますね」

そう、ご挨拶される敦賀社長の隣に秘書の方が控えていらっしゃいました。

「始めまして。最上キョーコと申します。どうぞよろしくお願いします」

とても可愛らしい感じの方です。最上様は普通の飛行機とは全く違う内装に驚かれたようで、最初は内部を探検されておられましたが、暫くして機内の中の写真を取り始めました。

(本格的だわ)

女性が持つには珍しい大型の一眼レフカメラを使いこなされています。最初は手持ちで写真を取られていましたが、そのうちカバンから小型の三脚を取りだされて撮影を再開されました。秘書の方とは聞いていましたが・・・広報を兼務されている方なのかもしれません。

敦賀社長は撮影の邪魔にならないよう、壁際に佇んでおられましたが・・・私はその表情を見て固まってしまいました。

(蕩けそうな程、優しい笑顔)

そして、彼女に向けられる愛おしげな視線。今までも何度かお世話をさせて頂いた事はあるのですが、このような表情は見たことがありません。私はふと、隣で同じような事を思っているだろうマツダさんに、こそっと声をかけました。

「アレ・・・どう思う?」
「どう思うも何も・・・そのままですよね?あー、私、この仕事楽しみにしてたのにっ!」

妙齢のマツダさんはガックリと肩を落としています。そう、敦賀社長が乗るジェットのお世話・・・私たちの間では、羨望の眼差しで見られるお仕事なのです。世界規模の多国籍企業グループ創業家の御曹司。しかも、芸能人も裸足で逃げ出す美男子。さらに、経営の才能もあって性格は極めて穏やか。皆が密かに(いえ、あからさまに)彼にお近づきになりたいと思っているのです。私だって、あと10歳若ければ・・・うふふふ。

(はっ、ちょっと妄想が過ぎました)


***

お二人は、楽しげにお話をされながら、機内でゆっくりと過ごされているようでした。途中、お飲み物や、夕食の御世話をさせて頂きましたが・・・

「恋人同士のスペシャルナイトって感じ出てる?」

と熱い視線を送りながら囁く敦賀社長の言葉に・・・私は、はちみつ味の砂で口の中がザラつきましたが・・・肝心の最上様は、さらっと、もう社長が可哀相な位にさらっと!

「私と敦賀さんじゃ不釣り合い過ぎで雰囲気でないですよ?」

と返されていました。

----片想いですか!!敦賀社長!?

私は心の中で(あくまで心の中ですよ?)

(こんな純情そうなお嬢さん、社長のスーパーテクニックをもってすればイチコロですわ!)

そうお声をお掛けしました。そうこうする内に、お二人は仮眠をとるというお話になりました。何だか話し合われた結果、結局、二人で寝室に入られた時には、(やった!)と、思わず拳を握りしめてしまいましたが・・・いつまでたっても、寝室のドアが開いたままです。

(わざと開けたまま・・・なのよね?)

私は(ファイト、敦賀社長っ!)と、心の中でエールを送りました。


***

1週間後、私は、ジェットに搭乗されるお二人の姿を見て、思わず

(!!!VICTORY!!!)

と叫んでしまいました。(あくまで、心の中だけですよ?ちゃんと下唇は噛んでますからね?)

な・ぜ・な・ら・ば!

敦賀社長が最上様の腰に、手を回して歩いていらっしゃるからです!
それはもう、大事な物を抱えるように最上様に寄り添っていらっしゃいます。そして、行きの飛行機では、テーブルを挟んで向かい合わせに座っていらっしゃいましたお二人ですが、帰りでは隣同士に座られています。敦賀社長の恋が進展したに違いありません!!

(流石、敦賀社長だわ!)

思わず、対応するこちらの笑顔にも磨きが掛かろうというものです。

(・・・あら?)

しかし、なんだか最上様の方は元気がありません。もしかして、初めての海外出張?でお疲れなのかしら?と思い、暖かいレモネードが御用意できるとお勧めしようかと思っておりました所、なんと、敦賀社長が最上様を優しく抱き寄せるではありませんか。

(きゃーっ、見ちゃいけないわ、ここにいちゃいけないわ、馬に蹴られるわ!)

私は思わず、乗務員ブースにひっこみましたが・・・しばらくして言い争う声が聞こえてきました。段々とお二人の声が大きくなってきて・・・

「そんな言葉、君から聞きたくないっ!」
「じゃぁ、私は2度と敦賀さんと口をききません!」

そう、ハッキリと聞こえました。
えええっ!?ケンカしておられるぅ~。ど、どうしましょう!いえ、たかが乗務員にどうすることなどできませんから!!

しばらくして・・・そおっと、キャビンを覗いてみると・・・先程まで、仲良く隣同士に座っておられたのに、今は最上様が、社長から一番遠い奥の席に座って、なにか雑誌のようなものを視線を落として読んでいらっしゃいます。一方の社長は、まっすぐ最上様を見ておられています。こちらから表情まで伺う事はできませんが、怒りのオーラが立ち昇っている様な気がしてなりません。

「あの二人、何か喧嘩してしまったようですね」
「あそこに入っていく勇気は・・・ないわね」

私達は、呼ばれるまでそっとしておくことにしました。暫く、マツダさんとトルコ料理のあれが美味しいなど、他愛の無い会話をしていましたら・・・急に、

「マツダさん!オカノさん!どちらでも良いから来てください!!!」

とキャビンから最上様の声が掛かりました。その切迫した声色に慌ててキャビン内に足を踏み入れると、

「最上さんの声に応えるな!社長命令だ!」

怒りに満ちた、まるで視線だけで人が殺せそうな険しい表情の敦賀社長が制止の怒声を上げられました。社長はそのまま、嫌がっている最上様を引きずるようにして寝室へと向かっていきます。温厚で知られる敦賀社長にあるまじき振舞いです。私は、嫌な予感がしたのですが、どちらに従うべき立場に自分が置かれているのかは明白で、乗務員室ブースへと引き返したのですが・・・

----時々、最上様の助けを求めるような悲鳴がこちらまで聞こえてくるのです

「オ、オカノさん、どうしましょう・・・」

マツダさんが真っ青な顔をしています。

「どうしましょう・・・って、最上様お呼びですか?って、寝室に入る?」

私がそう問いかけると、マツダさんが凄い勢いで頭を左右に振ります。私達は無言のまま、ただ時間が過ぎるのをまっていました。


***

1時間程経った頃でしょうか・・・。

「すいません、温かい飲み物と何か軽く食べるものをお願いします?2人分。」

突然、敦賀社長が乗務員ブースに顔を出されました。

「ひっ」

私は思わず、その場で飛び上がってしまいましたが・・・。恐る恐る、敦賀社長を見上げると・・・先程とは打って変わって穏やかな表情をされています。

「あと、すみません。最上さんが気分が悪かったので・・・ベットに寝かせていたのですが吐いてしまって。掃除して頂けますか?」

申し訳なさそうに言われました。私は違和感を感じたものの、

「分かりました。少々お待ちください」

そう答えて、マツダさんに掃除を頼み、自分はアフタヌーンティーの準備を始めました。


***

「オカノさん、あの二人、まだ抱き合ってるんだけど・・・」

キャビンを覗いたマツダさんが、あきれた、というポーズをしています。でもどこか羨ましそうです。
先程から・・・30分位でしょうか?体の大きな敦賀社長が最上様を腕の中に閉じ込めるように抱きしめておられます。私はティーセットを片づけに行くタイミングを計っていましたが・・・しばらくチャンスはなさそうです。

(仲直りされたようね・・・)

先程喧嘩されていた後の、背筋が凍るような思いをした事に比べたら、空になったカップを下げなきゃいけないとか、こちらが少し気恥ずかし様な気持ちになるとか、そんなことは些細な、本当に些細な事です。

「私たちもお茶でも飲みましょう」

そういって、お茶を飲んで休憩をさせて頂いておりました。すると、再びキャビンから

「申し訳ございません~!」

最上様の大きなお声が聞こえてきました。私は思わず、お茶を吹き出しそうになりました。危ない危ない・・・・。
平時の会話に交じるはずの無い言葉に、私とマツダさんは思わず顔を見合わせて、二人でそうっと、キャビンを覗いてみると、最上様が土下座をされています。

(今度は何!?)

私とマツダさんは、アイコンタクトで、沢山の会話をしましたが、やはり、何もできることなど無いのです。私はお茶をもう一杯用意し、マツダさんと会話を続けました。


そうする内に、そろそろ夕食をサーブする時間になりました。
しかし、お二人の姿はキャビンにありません。居られるとすれば寝室なのですが、寝ていらっしゃるお客様を起こしてまで夕飯を提供することはしません。とりあえずお声掛けをするために、寝室のドアの前まで行ったのですが・・・私はそこで、すぐに踵を返しました。

(・・・もう、いやぁ・・・)

中から最上様の切ない叫び声が微かに聞こえてきます。

(社長のスーパーテクニック炸裂中!?
 ・・・・私は何も聞かなかった、私は何も聞かなかった、ええ、私は何も聞いてません!)


***

----コンコン

「敦賀様、最上様、あと1時間程で成田に到着いたします。お食事のご用意もありますので、キャビンまでお越しください」

私は寝室のドア越しにお声掛けをしました。返事がなかったので、もう一度繰り返しましたところ、

「分かった、今行く」

敦賀様の声が聞こえたため、私は食事のセッティングを始めました。しかし、暫くしてキャビンに現れたのは敦賀様おひとり。

「最上さんは体調が悪いみたいだからね、ギリギリまで寝かせてあげて?」

それはそれは麗しく微笑んでおられます。私は色々な意味で目眩を覚えながらも、何とかいつも通りの対応をさせていただきましたが・・・マツダさんはその場で腰を抜かしそうになり、私がなんとか乗務員ブースに連れ戻しました。若い女性に、この敦賀様の笑顔はもはや凶器です。

「彼女の様子を見てくるから、着陸体勢に入る直前に声を掛けて?」

敦賀様はコーヒーとトーストだけ召し上がると、また寝室に戻られてしまいました。


----コンコン

「そろそろ着陸態勢に入ります、キャビンにお戻り下さい」

お返事がありません。3回程、お声をお掛けしましたが同様です。

(着陸時だけは着席して頂かないと・・・でも・・・)

私の脳内では・・・数時間前に消去したはずの最上様の声がリカバリーされ、まるでそれが呪文のように、私を寝室のドアの前で動けなくさせていました。

「オカノさん?」

マツダさんに声をかけられ我に帰りました。本当にもう時間が無いと思ったのでしょう。何も知らない(?)マツダさんは、

「失礼します、敦賀様、最上様、キャビンにお戻り下さい」

そういって、寝室のドアを開けました。

そこで目にした光景は・・・絶対に申し上げる事はできません。
知りたいですか?でも、迂闊にも話したことがどこからか漏れ伝わったら・・・私はまだ客室乗務員を続けたいのです。

とにかく、私はフリーズするマツダさんに代わって寝室のドアを一度閉めました。間もなく、最上様は敦賀様に抱きかかえられて寝室から運び出され着席されましたが・・・それはもう、椅子に座っているだけでも辛そうで・・・同じ女として羨ましい同情を禁じ得ませんでした。それとは対照的に、敦賀社長がとても晴れやかなお顔をされている、その光景が私の心に刻み込まれました。


***

----コンコン

「当機は間もなく、マイアミ国際空港に到着いたします」

そう、お声掛けすると寝室からお二人が出ていらっしゃいました。

----デジャブ?

私は目の前の光景に、一瞬クラリとしましたが・・・私は確かに以前にも・・・この光景を目撃いたしました。晴れやかなお顔で着席される敦賀社長の隣で、ぐったりとされている最上様。いえ、つい先日、敦賀キョーコ様となられた方。

最上様(あえてこう言わせて頂きますが)は、プロカメラマンに転向されたようで、半年程前に写真集を出版されました。私も思わず一冊購入いたしましたが、今まで見た事のない画に思わず鳥肌が立ってしまいました。写真集はそのジャンルでは異例の売上を記録され、実は『京子』の前作と最新作の表紙も最上様の作品だったという事も公表されたため、最上様はちょっとした有名人になってしまわれました。

(なんだか、有名になる前から知っていると親近感が湧くわ・・・)

その後、敦賀社長との結婚のニュースに、世間では億万長者を射止めたシンデレラガールとして話題になりましたが、

「良かったですわね!敦賀社長!」

と、私は思わず声に出してしまったものです。

さてさて、話が逸れましたが。
今回、お二人は、クリスマス~年明けにかけて、カリブ海をクルーズを楽しまれるとのこと。冬はカリブのベストシーズンですし・・・きっと素敵な夜を年末年始を過ごされるのでしょう。

お気を付けて行ってらっしゃいませ!!
また、このような形でお二人にお会いできて、私共はとても嬉しく思っております!



長いっ!!細かいことは気にしないでください。

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プロフィール

Agren

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



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