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会いたくて(9)

SIDE KYOKO

「最上君、改まって相談とは?」

私は宝田社長のオフィスに来ていた。何枚かの写真を社長に見せながら説明する。

「こちらは敦賀さんの写真、こちらは敦賀さんの秘書の琴南さんの写真です。確かに敦賀さんは美しい人なんでしょうけれども・・・私にはどうしても琴南さんの写真の方に「美」を感じてしまうのです。」

「ふーん・・・分かった。さすが観察眼の鋭い君だ!」

「え?分ったんですか?」

「最上君!この世で最も美しいものは何だ!」

社長が大げさにポージングする。私はまたか・・・と内心ため息をついたが、大人しく拝聴することにした。

「それは、愛だ!琴南くんには愛がある。しかし敦賀君には無い。それがこの写真に現れているのだ!」

社長はなんでも愛に結び付けたがるから・・・。

「試しに琴南さんに「私の事好き?」と聞いてみたらいい。きっと色っぽく返事が返ってくるだろうよ、だが、敦賀君に聞いても、多分この写真のような似非笑顔で「もちろん好きですよ」とでも涼しげに答えるだろうさ。彼らの元に戻ったらまずそう聞いてみろ。」

宝田社長曰く、愛を知っている人間は、好意を示す言葉に「艶」が宿るそうで、それが美しさに不可欠なんだそう。

「はぁ、そんなものですかねぇ?でも、琴南さん彼氏なんていないって・・・。逆に敦賀さんは、恋愛百戦錬磨だって聞いていますよ?」

と、私は疑問を述べた。

「ぶぁか。愛には色々なカタチがあるんだよ。友情だって立派な『愛』だ。琴南さんは、特に君に対して多大なる愛を抱いているから、それが写真に写り込んでいるんだ。お前も無意識にそれを感じているからこそ、琴南さんの写真の方に美しさを感じるんだろうさ。逆に敦賀君は、今まで浅い付き合いしかしてこないから駄目なんだ」

実は、この撮影が終わっても奏江さんとずっと友達付き合いができたらと思っていた。もしかして私達、両思い?メルヘンキョーコと呼ばれて、バカにされていたと思ったけれど、確かに言葉の端々に愛は感じていたわ!

「・・・このままじゃ、次回作が『美しい女』になっちゃいますね。それでいいですか?」

「駄目だ」

「・・・ナンデデスカ?」

「駄目といったら駄目だ」

(・・・・別にいいじゃない・・・)

「まぁいい。とりあえず、まだ敦賀君の写真を撮ると約束した時間は残っている。その間に、彼の愛を引き出すよう努力してみろ。そうすれば、きっと琴南君よりも美しい写真が撮れるようになるさ。それは今後の芸の肥やしになるはずだ。」

「分りました。取りあえず敦賀さんにもっと『京子』を好きになってもらえば良いんですね?」

「まぁ、そんなところだ。あわよくば君と愛を育んでもいいんだぞ?」

「あはは、ありえないですから。」

キョーコが肩をすぼめてサラッと流したのをみて、宝田は眉間にしわを寄せ小さく呟いた。

「最上君にかかったら、流石の敦賀君でも役者不足、か。」


***


3日ぶりに敦賀さんのオフィス戻ってきた。

まずは宝田社長から言われた事を確認しなきゃいけない。だから奏江さんと敦賀さんをランチに誘ってみた。そこに、折角だから俺も一緒でいい?と社さんも付いてきた。

久しぶりの再会に和気あいあい・・・とは当然ならなかった。

SIDE YASHIRO

この3日間、社長室にはブリザードが吹き荒れていた。端的に言えば、蓮からのイヤミ攻撃が琴南さんを襲ったのである。「琴南さんおはよう、今日も美人だね」という朝の挨拶に始まり、書類を渡せば渡したで、「琴南さんの手は白魚のように綺麗だね」とか、とにかく機会がある毎に蓮が琴南さんに向かって、「美人」とか「綺麗」とか連発するのだ。

俺は「それはセクハラだぞ」と何度も言いそうになったけれども・・・何故そうなったか理由が分るだけに、何も言えず。祈るような気持ちでキョーコちゃんの帰還を望んでいた。

気まずい雰囲気の中、キョーコちゃんが唐突に尋ねる。

「ねぇ、奏江さん。私の事、好き?」

「ちょ/// いきなり何を言っているの?」

琴南さんは、突然のキョーコちゃんの問いにうろたえてしまっている。実はキツイ性格が災いして・・・才色兼備であるため彼女を崇める信奉者こそいても、友人らしい友人がいない事を俺は知っていた。だから、琴南さんはキョーコちゃんの撮影会が終わっても、ずっとキョーコちゃんと友達として付き合いたいと願っていることも。

「ねぇ、真面目に答えて?私の事、好き?それとも・・・この撮影会が終わって私が居なくなったら清々する?」

キョーコちゃんに見つめられ、琴南さんはかつて無い程に動揺している。

「鬱陶しいとか思ってないわよ! す、す、す・・・」

「すすす?」

「・・・好きよ。」

瞳を伏せて、ふいとキョーコちゃんとは反対側に視線をそらしている。こんな琴南さん見たことがない。するとキョーコちゃんが、シャッターをバシャバシャと切る。

「ちょ/// 何?なんで写真なんて撮っているのよ?」

「え~、綺麗なものを撮るのは、もはや条件反射?」

「きれいって・・・」

蓮は、目前のやり取りを唖然として見ている。俺だってそうだ。沈着冷静な琴南奏江が真っ赤になって、まるで少女のように、少女と戯れている。ふとキョーコちゃんが蓮に視線を向ける。

「敦賀さんは、私の事好きですか?」

「もちろん好きだよ(にっこり)」

「はぁ~、さすが宝田社長・・・」

「「「???」」」

「宝田社長に言われたんです。敦賀さんには愛が足りないって。だから写真が美しくならないんだって。」

「「「!?!?!?」」」

「きっと、私が「好き?」と聞いても、作り物みたいに綺麗な笑顔で答えるだけだって。」

「社長曰く、この世で一番美しいものは愛なんだそうです。別に男女の愛だけじゃなく・・友愛、親子愛、兄妹愛、師弟愛・・・愛の形には沢山あって。その・・・これまで敦賀さんが薄っぺらい愛しか感じたことが無いから、写真が美しくならないんだって・・・。」

蓮の表情がひきつったのが分った。俺は心の中で

(そうだよ、そうなんだよ~。こいつは、自分の敵じゃない人間には等しく優しいんだけれど、来るもの拒まず去る者追わずな薄情なヤツなんだよ~)

と同意した。

「敦賀さんの中で一番の愛の対象は『京子』なんですよね?
敦賀さんの写真が『美しい男』として使えるようになるためには、もう少し『京子』に対する愛を深めて貰わないと・・・いけないんですが。どうです?覚悟あります?」

蓮は他人に対する執着が薄い。友人と呼べるような人間も居ないし、両親ともあまり上手くいっていないらしい。多分、蓮自身にも、愛の欠落者であろう自覚が・・・あるはずだ。そんな中で唯一執着するのが小説家『京子』。

「・・・どうして覚悟なんて聞く?」

この場の空気の温度が下がったような気がした。

「いくら想っても『京子』に敦賀さんの手は届かないからです。苦しい・・・かもですよ?」

しばらく蓮は考えている風だったが、

「いいだろう。世間でいうところの『片想い』確定の恋に落ちろ、という訳だね?俺は・・・人として大切な感情が掛けているという自覚はある。それを人並みにしてくれると言うのだから、悪い取り引きじゃ無いよ。」

「そうですか。それでは早速・・・」

そう言って、キョーコちゃんはカバンから封筒と小さな小瓶を取り出した。それを蓮が受け取る。そこには3枚の写真が入っていた。1枚目は本に囲まれたデスク、そして、いくつかの植木鉢、香水瓶の写真。

「なんだい?これは?」

「『京子』のプライベート空間の写真です。それぞれ、『京子』の書斎、『京子』が大事に育てている植物の写真、そして『京子』お気に入りのオリジナル香水のボトルです。」

「「「!!!~~~~。」」」

蓮は、3枚の写真を凝視している。

「最上さん・・・『京子』に会った事、あるの?」

「ごめんなさい、今まで会った事無いって嘘をついていて・・・実は・・・会ったことあるんです。でも、絶対に私の素行調査なんてしないでくださいね?『京子』先生は正体を明かすのを死ぬほど嫌がっているので、そんな事をしたら・・・はショックで文壇を降りてしまうかもしれません。」

そんなに嫌なんだ・・・。

「でも『京子』先生も今回の事は感謝していて。作家生活の区切りになる作品にしたいから、できる限りの協力は惜しまないって。
あ、写真の説明させて頂きますね?『京子』は、本がお好きで・・・当たり前ですけれど。この右側のここの部分の棚が特にお気に入りの本のスペースなんです。そして、お花が好きなので、ベランダで沢山の花を育てらっしゃいます。あと、この香水をご自分で調香されていて・・・特別に分けて頂いたのですけれども!『京子』も時々付けていらっしゃいますよ?」

と、写真に写っているボトルを差し出した。

「本物?」蓮が恐る恐る尋ねる。

「もちろんです!どうです?ちょっと嗅いでみます?」

キョーコちゃんが、テーブルに備え付けていたナプキンを一枚取り出し、香水をシュっと一吹きさせる。フローラル系のそれでいて甘すぎない香りが広がった。上品だけれども、情熱を含んだ香り。目眩がするほど美しい香りは、これが『京子』が調香したに違いないと確信させる。

蓮の表情がみるみるうちに緩んだ。

----バシャバシャ、とシャッターが切られる。

「わっ!いいですね!この表情。滑り出しは上々ですよ!」

「『京子』先生、って女性なんだね?しかも、結構・・・お若い?」

確かに、この香水は明らかに女性用。しかも、比較的若い女性用に思えた。

「えぇ、実はそうなんです。内緒ですよ?」

『京子』の香りにすっかり舞い上がってしまっている蓮は、先程の紙ナプキンを胸に抱きしめ、目を細めて恍惚とした表情をしている。確か香りって、五感の中で最も原始的で本能を刺激するんだよな? 

「はぁ~これは、壮絶に色っぽいですね。少々目の毒ですが」

といいつつ、その表情を更に写真に収めた。

「そして、これ『京子』のメールアドレスです。使えるのは『美しい男』が脱稿するまでの期間限定ですが。」

えええーーー???『京子』のメールアドレス!?俺だって喉から手が出るほど欲しい!ちらりと蓮を見ると、蓮の顔から一切の表情が消えていた。そりゃそうだ

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プロフィール

Agren

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



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