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会いたくて(2)

SIDE REN

自分が仕事人間だと言う事は良く分かっている。でもそれが悪い事とはどうしても思えない。

小説なんて所詮フィクション、偽物、まがいもの。
そんなものを読むのは時間の無駄だから・・・と社さんの申し出を断ろうと思った。けれど、再度目に入った茜色の表紙に、また見入ってしまう。

いつもなら時間の無駄にしか感じない「小説を読む」行為を、実はそう悪いものでもないか?と感じた。そして小説を読み進めている内に、俺はあるフレーズに衝撃を受けた。

『人間は他人の心を見ることはできない。そこで、他人の行動を予想することができれば、その心を見た気になっている。しかし、実体のない心に姿を求める事、それに何の意味があるのか?』

今まで、自分に近づいてくる人間は自分の力を利用しようと思っている、と疑って掛かっていた。
下心というものを幼い頃から散々見せつけられ、それを見るたび、自分に黒いドロドロとしたものを塗りつけられるようで・・・体の芯から凍えるような気分にさせられていた。その黒いドロドロとしたものが『京子』の小説を読むことで、一気に洗い流された・・・気になった。

----実体のない「他人」の心に、なんでそんなに拘っていたのだろう?それこそ時間の無駄だ。

この本のテーマは「虚像」だった。

俺が心を奪われた本の表紙には、砂漠に沈む真っ赤な夕陽の写真が使われていた。沈む夕陽の圧倒的な存在感・・・それは人間の目の錯覚で、機械の目には小さく映るだけだそうだ。裏表紙には、ぽつんと寂しい夕陽の『写真』。表紙には人の目に映る夕陽、写真をレタッチする事で再現された太陽の虚像が、使われていた。


SIDE YASHIRO

「ありがとうございました、社さん」

本を貸した翌朝、速攻で返されてしまった。

「・・・読まないのか?」

蓮が本を受け取った時に心から微笑んでいたように見えたのは、自分の見間違いだったか?しかし、返って来た答えは、昨日の衝撃を遥かに上回った。

「いえ、昨晩しっかり読ませてもらいました。素晴らしい作品でした。なので・・・第二秘書の琴南さんに『京子』の書いた作品は全て集めて貰うようもう頼みました。『京子』との出会いを取り持ってくれた社さんには、どう感謝の気持ちを表して良いのか・・・」

まさに『破顔』と呼べるに相応しい笑顔というオプション付きで驚愕のセリフを吐いた。もしこの場に女性がいたら、絶対に倒れている、いや、俺だって倒れそうだ!なんなんだこの目眩がするほど麗しい笑顔は!?

***

蓮は1ケ月程で『京子』の作品を全部読んでしまった。小説だけじゃない、ありとあらゆる手段を使って、雑誌に寄稿されたエッセーとか、Webにのった記事とか、そうゆうものも多分すべて読んでいる。さらに何とかして『京子』に会おうとしているらしい。

実は『京子』のプロフィールは明らかにされていない。メディアに露出しないのはもちろん、性別や年齢さえも秘密。エッセーやペンネームから多分女性であると予想されていたが、男性説も根強くある。今年でデビュー20年目であること、作品はすべて大手出版社『LME』を通じて出されるいること、それ位しか分かっていなかった。

「蓮・・・『京子』には会えそうなのか?」

蓮は眼を細めて不機嫌そうに答える。

「京子には・・・会えませんよ。徹底的に情報を隠されています。京子付きの編集者が誰なのかすらもトップシークレットで。京子の編集者の可能性のある人間の動きを1ヵ月程追いましたが・・・それらしい人間に接触した形跡すらありません」

俺は驚愕する。
「ちょ、お前。それはファンの域を超えている!すでにストーカーだ。犯罪だ!」

蓮は益々不機嫌になり、

「犯罪じゃないです。たかだか1ヵ月間、行動を調査しただけですから・・・」

「・・・お前は本当に激しい気性の人間なんだな。普段は愛想笑いを浮かべて似非紳士の皮を被っているけれど。」

と言ってやれば、蓮は悪びれる事無く、

「処世術に長けた大人、と言ってください」

と答えた。俺は頭を抱えたが・・・数か月前まで仕事以外に全く興味を示さなかった事に比べたら・・・良かったのかもしれない。それに『京子』を読んでからの蓮は人間としての幅が広がったような気がする。(京子以外に関してだが。)

この執着っぷりは少々問題だが、それでも京子に会えたら、蓮はもっといい方向に落ち着くんじゃないのか?という気すらしてくる。

「蓮。・・・実は来月LME創立100周年の記念パーティーが開かれるんだけれど、行くか?社長に直談判すれば、ちょっと位、会えるかもしれないぞ。」

俺は、蓮宛てに届いた招待状を手渡した。

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プロフィール

Agren

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



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