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LOVE PHANTOM(34)

SIDE KYOKO

目を開けたら、綺麗に整えられたベットが見えた。

皺ひとつない枕。きちんと折り込まれ整えられたシーツ類は、目の前のベットがメーキングされたままの状態だと告げている。そして自分は目の前と同じ配色のカバーが掛けられたベットに横になっていて・・・そこで今まで自分が寝ていた事に気が付いた。

(ここ・・・どこ?)

寝覚めで動きが鈍い頭を叱咤し、再び部屋を見渡す。間接照明で柔らかく照らされている部屋は、生活感が無く、まるでホテルのツインルームのようだった。

(出張中だったけ?)

一生懸命、自分がホテルで寝ている理由を思い出そうとするけれど、思い出せない。頭が鈍く痛むし、何だか喉や体の節々が痛い。風邪の引き始めのような症状に、またやっちゃった?、と思う。

初めて出張してビジネスホテルに泊まった翌日、部屋の乾燥のせいで喉を痛めて風邪をひいた。
擦れ声で出席した打合せは散々で・・・それ以後は、ちゃんと乾燥対策をしていたのに・・・

「あーもー」

私は呻きながら、取りあえずサイドボードに置かれている時計を手に取とった。

「に、20時!?」

時刻を確認して唖然とする。一体どうして、こんな変な時間なのか?
慌てて飛び起きて・・・飛び起きようとして・・・足がもつれてベットとベットの間に頭から転がり落ちた。

(痛ったー)

咄嗟に体を捩ったため、顔面殴打は免れたものの、ここまで無様に転ぶとまるで何かのコントのよう。
はは・・・と乾いた笑いを零しながら、しばらく床に転がっていると、いきなり体が浮き上がった。

「大丈夫?」

気が付けば、抱き上げられていた。そうして、ゆっくりとベットの上に下される。この、身体に回される腕の感触、香り・・・そして声には覚えがある。

「向こうのベットを綺麗にしようと思って、取りあえずゲストルームに運んだんだけど・・・」

かけられた言葉を聞きつつ・・・ここはホテルじゃなくて、元彼の、蓮のマンションだということを思い出した。それから、ここで起こった事も鮮明に。彼の視線を感じるけれど、顔を上げる事も言葉を返す事も出来ない。

(わ、わ、私、な、な、何てコトを!?いくら昨日は、気が動転していたとはいえ・・・)

そこで、ドクンと不自然な程に心臓が脈を打つ。私は昨夜、気が動転していた。父とも慕っていた叔父からの信じられない言葉を聞いて。その言葉を思い出したくないのに・・・それも、思い出してしまう。

『君の母親も結構使えると思っていたけど・・・君もやるね?』

外出先では酔うまでお酒を飲まない叔父さんが、珍しく酔っていると思ったら・・・唐突にそんな事を言い出した。

『今回、キョーコちゃんは大活躍だ。RT-Flowの契約は君と敦賀社長が知り合いだったから纏まったようなものだからね、君の東都大卒の肩書はこれからも大いに役に立つだろう。君の母親の事も便利だと思っていたけれど、早々に擦り切れて使えなくなってしまったから。でもこれからは君が代わりになって・・・」

----そこから続いた、母を貶める言葉は本当に思い出したくない。

私は思考を無理やりにでも終わらせるために、ぶるぶると頭を振った。すると、

「キョーコ、目を逸らすんじゃなくて、白いペンキを塗ってごらん?」

直ぐそばに座っていた蓮が唐突にそんな事を言う。

「・・・ペンキ?」

意味が良く分からず聞き返せば、

「嫌な事を思い出しそうになったら、白いペンキで、目の前を塗りつぶすイメージを思い浮かべるんだ。さあ、目を閉じて・・・やってごらん?」

そう言いながら、蓮が素早く私の目元を手で覆ってしまって・・・私は逆らう理由も思い付かず、彼の言葉に素直に従ってみた。白いペンキ・・・

「キョーコの目の前には真っ白いペンキの入った缶がある。それは、どんなに濃い色でも塗り潰す事ができる魔法のペンキで・・・一振りで、すごく広い範囲を塗りつぶせるんだ・・・ほら、どんどん、白くなるだろう?・・・目の前が、白くなっていく・・・もう、殆ど真っ白になった・・・まるで、新品のキャンバスみたいに真っ白だ・・・」

私は、頭の中をペンキで白く塗り潰していくような想像をして、何とか言われた通りのイメージを作り出していく。

「そして・・・キョーコは目の前にできた真新しいキャンパスに、絵を描くんだ。まず最初は・・・」

その先の言葉を聞く前に、身体が仰向けに引き倒された。

(・・・!?)

驚いて目を開けば、視界いっぱいに艶然とした笑み浮かべた端正な顔。

「蓮・・・」

思わず彼の名前を呼んだのは偶然なのか、必然なのか。

「俺の事を思い描けばいいよ・・・」

それから、また何度目かになる・・・蓮と身体を重ね合わせた。徐々に不鮮明になる意識の中、

(私はもう、不破自動車とは関係なく生きて行く)

そう決意する。今まで、私は「母の跡を継ぎ、不破自動車の利益を最大化する」プログラムで動いていた自動人形のようだった。でも、これから私は自分で自分を作る。自分という新しいキャンパスに自分で絵を描くんだ・・・まずは最初に蓮を。次に・・・何を描いていこうか?

『空っぽの君を俺で埋め尽くしてあげる』

彼が言った言葉をぼんやりと思い出しながら、しばらくは蓮があれば良いか・・・白み始める意識の中、それを最後に蓮の事以外を考えられなくなっていった。





・・・黒蓮。

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プロフィール

Agren

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



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