スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

LOVE PHANTOM(33)

SIDE SHOTARO

俺は休日出勤を余儀なくされていた。

親父がFF-86のカラー変更を指示したのだ。
「ピンクの予約数が伸びないから、もっと好まれそうな色に変更しろ」と言う事だったけれど・・・

(何なんだよ、急に・・・この前はピンク推進派だったくせに)

既に予約を入れた顧客に対する対応、WEBサイトやカタログの更新、代替色の決定等々、やる事は山積みだ。もっと女性受けを狙うカラーを、という事であれば、新色追加という形を取れば良いのに、それでは駄目なのだという。理不尽な要求だと不満が募るが、もう決定事項だと言われたら従うしかなかった。

(いい加減、今日は帰るか・・・)

気が付けば窓からさす光が赤みを帯びていた。朝からずっと働き詰めだった俺は流石に疲れていたし、休日にできる事は限られている。荷物をまとめ、帰宅しようと社内を歩いていると・・・法務部長に出会った。

「お疲れ様です、お互い、休日出勤ですね・・・」
「不破君もお疲れ様・・・カラー変更の件だね?」

彼と並んで歩き始める。俺は、部長の顔を見て・・・今週、キョーコが名古屋に戻ってきていた理由を思い出していた。

「ええ・・・部長は例のソフトウェア不正使用の件ですか?」

「そうです。でも、不破社長が向うの社長と話を付けてくれて・・・不正使用のあった日に遡って契約を結べる事になったんです。明日、契約課のヨシダさんと一緒に東京で社長に合流して、先方と契約内容を詰める事になってます」

「丸く収まりそうで良かったですね?」

「本当に。一時は、最悪FT-86の販売延期かと肝を冷やしましたが・・・」

(販売延期とか・・・そんな大問題だったんだ・・・でも、流石親父だな)

交渉術に長けた親父が出て行ったとなれば、大概の事は解決する。それに、親父は対応が素早い。俺が常々に見習いたいと思っている点だ。

「そうそう、向うの社長が、最上さんの大学時代の先輩だったみたいで・・・そうだ、不破君も知ってるんじゃないですか?」

部長が思い出したように聞いてくる。同じ東都大だからって・・・学部が違えば、殆ど知り合う機会は無い。だから、

「自分は経済学部でしたから・・・法学部に知り合いは、あんまり居なくて・・・」

そう答えると、

「いや、先方の社長は・・・確か理学部で・・・敦賀さん、という方なんですが・・・」

「敦賀!?・・・敦賀蓮!?」

俺は、思わずフルネームを叫んでしまう。

「あ、御存知でしたか?」

「知ってるも何もっ・・・」

久しぶりに聞いた名前に、憎々しい想いが込み上げてくる。だってアイツは、

----冴菜さんが亡くなって・・・キョーコが精神的に弱っていた時期に、キョーコを捨てた男

俺の大事な従妹は、敦賀蓮と別れた後、しばらく酷く落ち込んでいた。それを立ち直らせるため、どれだけ俺が骨を折ったことか。あの男は、キョーコを甘やかすだけ甘やかして・・・キョーコが一番、誰かに支えて貰いたかった時に、突然、キョーコを突き放したのだ。

(アイツならキョーコを幸せにできるかもって、思い始めていたのに・・・)

俺の苦い回想は、部長によって中断させられる。

「敦賀氏は才能のある方みたいですね?不破中研の所長が、彼の作ったソフトを不正を犯してでも使いたいと思う程ですから・・・」

(確かに、頭は良かったらしいけどなっ)

「先方は、今まで不破の関連会社との取引に一切応じなくて、何が問題なのかと首を捻っていたのですが・・・」

(間違いなく、敦賀蓮の個人的な・・・逆恨み?)

「あぁ、でも今後は付き合いをしてくれるそうで・・・あと、同窓のよしみで最上さんが先方の顧問弁護士を受ける事になったみたいですよ?」

「なんだって!?」

俺は咄嗟に、トミタさんの行く手を遮ぎって、問いかけた、

「キョーコ、敦賀蓮に会ったんですか?」

「わっ、不破君!?わ、私は良く分からないですけれど・・・社長から、向こうの会社が弁護士を必要としていて・・・それに最上さんが対応することになったから、落ち着くまで彼女を呼び出すなとだけ言われて・・・」

(親父はキョーコが、敦賀蓮と付き合っていた事を知らないっ!!)

「お先に失礼しますっ!」

俺は、その場から駆け出して・・・駐車場へ急いだ。走っている間、キョーコか、親父か・・・どちらに先に電話を掛けるべきか迷いながら。





(・・・・トゥルル・・・トゥルル・・・トゥルル・・・トゥルル・・・・)

呼び出し音が、もう10回以上も繰り返されている。

ついさっき、親父に電話したけれど、「キョーコちゃんには連絡するな、名古屋に帰ってから事情を説明する」と言って、無理やり切られた。でも、そんな言い方をされたら、益々、不満と不信と・・・不安が募る。納得できるはずが無い。

(二度とキョーコとアイツを会わせたくはなかったのに・・・)

「・・・もしもし」
「もしもし、キョ・・・!?」

やっと繋がった電話から聞こえてきたのは低い・・・電話越しなのに艶のある声。こんな声を出すのは、ヤツしか居ない。

「って、敦賀蓮!?なんて、お前がキョーコの携帯に出るんだよっ!!」

キョーコと敦賀蓮が一緒にいるであろう場面にいきなり遭遇して、俺は焦った・・・嫌な予感がする。

「君こそ・・・何故、キョーコの電話に掛けてくるかな?キョーコに2度と連絡するなって言われてないのかな?」
「親父が何て言おうと関係ねーよ・・・って、テメーのせいか!?」
「・・・御曹司とは思えない言葉の汚さだね。元々は、君のせいだから・・・」
「何がだよ!?とにかく俺は、キョーコに電話を掛けたんだよ。代われよ!」
「代わってあげてもいいんだけど・・・」

勿体ぶった言い方に腹が立つ。

「とっとと、キョーコを出せよ」
「彼女、さっき寝たばかりだから・・・」
「はぁ!?起こせよ!」

まったく、キョーコは阿呆だ。こんな男の前で寝こけている場合ではないのに、何をやってるんだ!?

「不破君は、随分酷いこと言うね・・・さっき気絶するみたいに眠ったから・・・無理だよ」
「なっ!?」

一瞬、最悪最低の想像が頭をよぎる。まさか、そんな事にはなっているはずは・・・

「お前・・・キョーコに何も・・・してねぇだろうな・・・返答次第じゃ・・・」
「心外だな・・・何かしたに決まってるじゃないか?」

くすくす、と電話口から笑い声が聞こえて来て、俺の頭の中が沸騰した。

「って、テメー、キョーコに何をした!?」
「いろいろと・・・一通りの事は全部かな?いや、感激したよ。キョーコが未だに処女だったなんて・・・」

『キョーコが処女だったなんて』

その言葉が、頭の中でぐるぐると渦を巻く。携帯をもつ手が震え・・・足から力が抜けて、俺は思わずそこにしゃがみこんだ。

「君も相当、間抜けだったんだね・・・不破君・・・さよなら」

そうして、電話が切られた。

(一体、どうして?何が起こったんだ!?)

俺は、不破自動車の駐車場に停めた車の中で・・・夜が更けるまで、茫然としていた。





へるぷみー。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Agren

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



スキビ☆ランキング

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。