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LOVE PHANTOM(32)

SIDE REN

----気が付いたらポルシェで第三京浜を飛ばしていた。

無意識に車を運転するなんて危険極まりない行為。
でも運転する自分に気が付いた時・・・自分なんてどうなっても良い・・・としか思えなかった。いっそ、他人に迷惑を掛けたっていい・・・キョーコの住むマンションに突っ込んでしまおうか・・・なんて事まで浮かんできていた。

(今、東京に居たら・・・本当に彼女のマンションに突っ込みかねない・・・)

残った理性をかき集めて横浜方面に向かう。車の間を縫う様に走り抜けながら、神経を運転に集中させよう・・・と思うのに、流れる風景に被るように浮かんでくるのは不破と抱き合うキョーコの姿。
しっかりと、不破の背中に回された華奢な腕。

(明らかに同意の上・・・)

二人の幻を振り払うようにアクセルを踏み込むけれど、次に頭に流れるのはキョーコの言葉。
己の記憶力に今ほど嫌気が差した事は無い。

『不破自動車の為なら、私の気持ちなんて小さな事だよ?・・・
・・・お母さんが心から望んでるって分るから。娘の私が受け入れなきゃ可哀想』

(不破自動車の為なら、キョーコの気持ちは小さな事かもしれないけど・・・母親の望みって、何?もしかして、不破と結婚するつもりなの?)

そう、彼女に聞きたくて・・・聞きたくなくて・・・答えを聞くのが怖い。

(不破自動車や母親よりも俺を選んで、なんて言わないから・・・不破キョーコにはならないで?)

そう願う事すら・・・背筋が凍る様な想いがした。





「昨日はどうも済みませんでしたーーー!」

キョーコが足元で見事な土下座を決めている。大きな瞳に溢れんばかりの涙を湛えながら訴える。

「あの、電話にもメールにも出ない位・・・凄く怒っているのかもしれないけど、謝りたくて・・・」

昨夜はあれから適当な港に愛車を停め、暫くぼんやりしてしまっていたらしい。
いつしか空が白み始め・・・とうとう朝日に照らされた所で我に返った。それから、徹夜明けで鈍く痛む頭を抱えながら自宅に戻り・・・そのままリビングのソファに倒れ込んで寝ていた所に、キョーコがやって来ていた。

----人の気配がした様な気がして目を覚ますと彼女が目の前にいて

覚悟も無しに、いきなり彼女に対峙する事になったけれど・・・半ば寝ぼけていたのが功を奏したと言うか、なし崩しに会話を始めてしまえば、いつも通りに振舞うのは苦ではなかった。

「別に、怒ってないよ・・・」
「でも・・・」
「昨日は疲れてて・・・キョーコが中々来ないな・・・なんて思っている内にここで寝てしまったんだ・・・別に怒って無視したとかじゃないから・・・」

適当に嘘をつき、微笑んで見せれば、こわばっていたキョーコの顔が、見る見るうちに明るくなる。

「そうだったの!?よかったぁ~ でも、昨日はごめんね?私、連絡もしないで・・・」
「別に、もういいよ・・・」
「あ、そうだ、蓮と一緒に食べようかと思って、お土産持ってきたの!!」

一応、ご機嫌取りのつもりなんだけど、と言いながら彼女が何やら紙袋から小ぶりのマグカップの様なものを取り出した。

「なにそれ?」
「じゃーん、プリンでーす。なんと、谷中にある超有名店謹製!凄くおいしいんだよー」

『プリン』

その単語に、胃がぎゅっと収縮する。それは、ヤツの好物じゃないか。

「どうしたの、それ?」

それでも、そんな事をまるで気にしていないかのように会話を続ける。

「昨日、ショーちゃんが買ってきてくれて・・・」
「不破君が?」

うん、と縦に首を振るキョーコに・・・不破松太郎に会っていた事を正直に告白してきた彼女に・・・今度は俺の心臓がぎゅっと縮こまる。

「・・・昨日、彼と会ったんだ?」
「うん。遅くなったけど、司法試験の合格祝いだって。それで・・・一緒にプリンを食べていたら何だか眠くなっちゃって・・・私も、気が付いたら朝まで寝ちゃってて・・・」

不破と会っていたのは真実。でも、寝ちゃってた云々は明らかに嘘・・・

(・・・嘘なのか?)

俺は、1つ浮かんだ疑問を口に出してみる。

「キョーコは・・・不破君と『寝た』の?」
「えぇ!?いくらなんでも・・・もう大学生だもの、ショーちゃんと一緒の布団で寝たりしないよ?彼はプリンを置いて直ぐに帰ったよ!」

いつも通りの天然娘的な模範解答が帰ってくるけれど・・・それは俺は動揺させるに十分だった。

(不破君は、しばらく君の部屋にいたはずだろう!?)

キョーコは隠し事ができない、嘘をついたら顔に出るタイプだと思っていた。なのに、今、俺の目の前で自然な表情で嘘をついた。

(きっと、真実を知っていなければ気が付かない・・・)

俺は、その事実に打ちのめされて、思考がまともに働かなくなる・・・そうする内に、俺の様子がおかしいと思ったのか、

「蓮・・・どうしたの?大丈夫?」

そう、キョーコが声をかけてきて、俺は動揺する自分を奮い立たせ何とか

「あ、うん。そうだ、プリン・・・食べようか?コーヒー入れるよ?」

そう言って、俺は逃げ出す様にリビングを後にした。とりあえず、少し落ち着きたい。

(俺は今まで・・・彼女の何を見ていたんだろう・・・?)

心に浮かんだ疑問は大きくなるばかりだった。






「あのね、実はお母さん、北米のプリシラ裁判の事で忙しくって、会う時間が取れないって・・・だから、名古屋に行っても、会う事はできないの・・・」

コーヒーも飲みながら、そう彼女が切り出してきた。

「そうなんだ・・・」

(それは、単に俺を紹介できなくなったからじゃなくて?)

やっぱりな、という諦めの気持ちと共に・・・これまで、キョーコの言葉を素直に受け取っていた俺は彼女の言葉を疑い始めた。

「・・・多分、半年くらい経てば・・・事情も変わると思う」
「そう・・・」

(何の事情が変わるのか・・・あぁ、プリシラの件? でも、半年後、と言いながら、その時になって実は今度は・・・とか言い出すんじゃないの?)

「だから、クリスマスに名古屋に行く用事はなくなって・・・あ、でも、一緒に何処かには出掛けよう!そうだっ、前にクリスマスは東京ネズミーシー!って約束したよね!あっ、でも蓮の行きたい場所があれば、どこでも良いよ?」
「別に・・・どこでも・・・」

と投げやりな思いで言いながら、待てよ、と思う。

「・・・本当に、どこでも良いの?」
「もちろん!」

手招きで「おいでおいで」をしながら、さぁ、行きたい所があるなら言って頂戴!と言わんばかりのジェスチャーをするキョーコは・・・やっぱり、かなり可愛い。

「なら、ロサンゼルスに行こう。本場のネズミーランドに行かない?」
「ええ!?」

驚きに目をキョロキョロさせるキョーコに向かって話を続ける。

「滞在費は俺の実家に泊まれば掛からないし・・・大丈夫、ちゃんとゲストルームがあるからね?アメリカのクリスマスは華やかで・・・きっとキョーコも好きになるよ?それに、俺の両親にキョーコを紹介したいなぁ・・・」
「あ、の・・・」

困ったような、申し訳なさそうな顔をする彼女に・・・肯定の答えしか聞きたくなくて、

「はい or Yes? 」

と、答えを迫る。

「うっ・・・どっちもどっち、じゃない・・・」
「何?俺の行きたい所は、どこにでも行ってくれるんでしょ?」
「で、でも・・・」

キョーコの「No」な態度に、心が急速に冷える。
いつも、そう。俺はいつも、期待を裏切られる。今までは、それは俺が期待過剰だから、と思って割り切っていたけれど・・・俺ってば本当に、

----『都合の良い男』・・・だよな・・・

と、今更ながらに気付いてしまった。俺はキョーコに・・・尽くすだけ尽くして・・・見返りを要求せず・・・物分かりが良く振舞って・・・それが彼氏なんだから当たり前だって、思っていた。いや、そうゆうものが愛する事だと信じていた。

『Love is patient and kind. Love is not jealous or boastful or proud or rude. It is not self-seeking...』

でも、その結果がこれだ・・・

「ははっ・・・」

思わず自嘲が零れる。俺は、最後に愛は勝つんだと・・・何の根拠もない事を、絶対であるかの様に思い込んでいたらしい。

「別に、行きたくないなら良いよ・・・」
「そんな事ないよっ!ロサンゼルス行ってみたいし、蓮の実家も見てみたいしっ、でも、ただ、いきなりで緊張するっていうか、心の準備がいるって言うか、そうだ、春休み!春休みに行こうよ!!」

それまでに英会話の勉強もするしっ、ダイエットも今まで放置し放題だった、髪とか肌の手入れもしたいの~!とキョーコが可愛らしい言い訳をするけれど・・・

(また春休みになったら、行けなくなったとか言いだして・・・本音は俺の両親にも会いたくないだけじゃないの?)

否定的な考えが堰を切ったように浮かんでくる。
司法試験が終わって・・・俺たちはやっと口づけを交わす仲になって・・・確かキョーコの気持ちが俺に追いついて来ていると思っていたのに・・・それだって、俺の「期待過剰」なんじゃないか?

----もう、キョーコの気持ちが読めない・・・彼女は嘘吐きだから

彼女の本当の気持ちを確かめたい。不破とのことを問いただしたい・・・でも、その結果が怖い。俺の思考はまた混乱を始める。

----どうしたら、彼女の気持ちを確かめられる?

そうして、俺は・・・今思えば、最悪の選択をしてしまったのだと思う。

「もう、いいよ。悪いけど、クリスマスは一人で過ごしてくれないか?」
「蓮!?いきなり、どうしたの?」

訝しげな表情のキョーコに、俺は自分の悲しみをぶつけてしまう。

「もう、君には付き合いきれない・・・」
「!?ごめんなさいっ!」
「何で謝るの?キョーコは何か悪い事をしたの?」

間髪入れずに謝罪する彼女にイライラが募る。

「えっと、その・・・昨日の事?」

昨日・・・それは禁句。抱き合う二人を思い出させる・・・。

「そう、昨日は・・・最悪だった」
「ごめんなさい」
「だから、もう・・・そう、俺達別れよう・・・」

『別れる』

絶対に、自分から言うつもりが無かったはずの言葉が出てくる。

俺の中に・・・ 「俺は別れたくないっ!」と荒れる自分が確かに居るのに。一方では「もし君が俺を捨て不破を選ぶつもりなら、俺から別れを切り出されるのは好都合だろう?」と、冷やかに告げる自分もいた。

(なんか、バラバラ・・・意味不明・・・)

「そ、んな・・・・ご、ごめんなさい。わ、私、蓮がもう怒ってないって勘違いして・・・」
「怒ってないよ・・・」

(そう、俺は怒っている訳じゃない・・・)

「いきなり・・・別れるなんて言わないで・・・?」

涙目になり、動揺して・・・ふるふると震え出すキョーコの姿を見て、俺は喜びを感じた。

「別にいきなりじゃない。俺は・・・ずっとギリギリだった・・・」

(そうか・・・俺は、君を試しているんだ)

やっと自分の行動が理解できた。

----キョーコに俺を惜しんで欲しい。別れたくないと縋って欲しい。

言葉にはできない想い。その万感の思いを込めてキョーコを見つめていると・・・どれだけ時間がたったのか・・・大きく見開き、潤んでいたキョーコの目から、一粒だけ、涙がポロリと零れた。

「今までどうもありがとう。蓮に甘えてばかりで・・・ごめんなさい」

そうして、律儀にお辞儀をするキョーコの姿を・・・背を向けて遠ざかる姿を・・・
俺は何も言えず、ただ見送ることしかできなかった。





やっと、現在へ・・・。

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プロフィール

Agren

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



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