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LOVE PHANTOM(28)

SIDE REN

物心付く頃には、読む本と言えば数学か物理の本だった。
そんな俺でもとりあえず読んだ本がある。

『聖書』

「証明」が出来ない事を真理だと説く。理屈を超えて信じなさい、と語りかける。
数学や物理的な「真理」の概念に慣れていた俺にとって、その本の論法には違和感を感じるばかりだった。けれど、そもそも「信じる」という心の状態、いや、心の動くさま自体が、法則を導く事ができる物体の運動などと根本的に違うのだ・・・そこで、俺の興味は途切れる。

それからずっと、その内容を思い出す事は無かったけれど・・・。

『Love is patient and kind. Love is not jealous or boastful or proud or rude. It is not self-seeking. It is not irritable, and it keeps no record of being wronged. It does not rejoice about injustice but rejoices whenever the truth wins out. Love never gives up, never loses faith, is always hopeful, and endures through every circumstance』

俺は、聖書の一節を小さく呟いた。そうして、その意味するゆっくりと確認する。

----人を愛するって、どうゆう事だろう?

その疑問に対し、俺は世界で最も有名な本のこのフレーズを思い出したのだ。
人の心に関する事に絶対の定義がないのは分ってる。でも、多くの人が長い間信じている・・・一番、確からしい答えに・・・俺は縋りたかったのかもしれない。


***


----大学院2年目の11月初旬

俺は、大学で卒論生の中間研究報告会を聞いていた。
研究室に所属する学生が学内で発表する場合、メンバーは全員聴講する決まりになっているのだ。発表練習に散々付き会ったのだから今さら聞く必要もないのに・・・とは思うけれど、研究室の慣例なのだから仕方が無い。

(コレさえなければ、今日は3時には研究室を出るつもりだったのに・・・)

卒論の中間報告なんて、どうでもいい。
少しだけ荒んだ気持ちでいると、机の上に置いてあった携帯のLEDライトが点滅を始める。このパターンはキョーコからのメール。

「Sub:合格したよ!」

ついに最終口頭試験に合格を知らせる連絡が入ってきた。俺は後輩の発表まで少し時間があるのを確認し、そっと教室を出て彼女に電話を掛ける。

「合格おめでとう!」

すぐに繋がった電話に向かって、開口一番お祝いを言う。

「あ・・・蓮、ありがとう。本当に・・・こんなに早く合格できたのは蓮のお陰だよ。もう、何から何まで良くして貰って・・・本当に・・・もう、どうしよう、嬉しい・・・」

すん、と受話器から鼻を鳴らす音が聞こえる。きっと、感極まって涙腺が緩んできたに違いない。あぁ、今すぐにでも、君の側に行って抱きしめてあげたいのに。

「ねぇ、泣かないで?後で、俺の腕の中でなら好きなだけ泣いていいから、今は泣かないで?」
「な、な、な、な、何言ってるの!?」
「だから、泣くのなら「すとーぉぉぉぷ!!」

相変わらず、天然たらしなんだから・・・とつぶやくのが聞こえる。いや、全然、たらし込めてないんだけど。何故かいつもそんな風に言われ、苦笑するしかない。

「ねぇ、キョーコ。今日は夕飯、外に食べに行かない?」
「いいけど・・・」
「実はね、もう、予約してあるんだ。18時に渋谷のハチ公前でいい?」
「そうなの?うん。わかった」
「じゃぁ、後で。楽しみにしててね?」
「うん」

ぱくん、と携帯を折って終話する。そうして、また教室に戻って、中間発表会の続きを聞き始める。

(やっと、終わった)

キョーコが司法試験を受けると言い始めて、約2年。短いようで長く、長いようで短かった彼女の受験勉強生活が終わった。卒業後に1年間の研修を受ければ彼女は正式に弁護士になる。

相変わらず・・・子供のお遊戯会みたいな発表に興味が持てなくて、俺は愛しい人の事を考え始めた。

----キョーコは初めて自分から付き合いたいと思った「彼女」

女性を好きになる--恋をする--という経験が初めての俺は、キョーコの些細な一言で喜んだり傷付いたりしながら、どんどん彼女に魅かれていった。けれど、キョーコの方は俺との恋にあまり積極的ではなくて。でも、最初から気持ちに温度差がある事は分かっていた事だったし、

『最上キョーコの「彼氏」』

男として一番近くにいられる立場を、誰にも譲る気にはなれなかった。
母親や弁護士試験の事やらで彼女の頭は一杯一杯、俺の事を考える余裕が無い・・・それでも良いと納得していた。何故なら、いつか・・・と言っても近い将来、キョーコが弁護士試験に合格さえしてしまえば、きっと彼女の気持ちに余裕ができる。そうしたら、また、2人の恋愛温度差を縮めればいいのだから。なのに、

----不破松太郎の言葉が俺の心をかき乱す

アメリカでは従妹同士は結婚できないから州が多い。だから、「ショーちゃん」は身内であって男ではない、と油断していた。

(キョーコが結婚して不破家に入る?)

冗談じゃない。馬鹿な事を思い付いた不破の父親に敵愾心が湧いてくる。小さかったキョーコが孤独な思いをしたのは、自分達のせいだと言うのに、今さら自己満足もいいところだ。キョーコの母親だって、何を考えているのか分らない。

(どうしたら・・・キョーコに不破家や母親を捨てさせ、自分を選ばせる事ができる?)

色々な策が浮かんでは消え・・・最も確実な方法を思いついて・・・我に返る。

(駄目だ。キョーコが泣くじゃないか)

キョーコを不破の婚約者になり得ないようにしてしまって、自分無しでは生きられないようにしてしまえばいい・・・と本能が命じるまま、俺は仄暗い策を練ってしまっていたのだ。

(正々堂々と、正攻法で行こう)

不破は「キョーコに選択権がある」と確かに言った。だからキョーコが俺の事をちゃんと好きになってくれれば、俺とキョーコが愛し合っていれば、なんの問題も無いんだ。

(不破との婚約話が出た時に少しでも躊躇ってくれれば・・・俺は大義名分を掲げて、真正面から婚約話をブチ壊しに行けばいい・・・)

それから、俺は考え始める。

----人を愛するって、どうゆう事だろう?

そこで、一つの”idea”を見つけた。

「Love is patient and kind. Love is not jealous or boastful or proud or rude. It is not self-seeking・・・Love never gives up, never loses faith, is always hopeful・・・」

人を愛するって、そうゆう事なんだ。

本当に・・・不破の事などに惑わされるのでは愛なんて言えない。彼女の望みを叶える事を自分の喜びとし、常に誠実さを持ってキョーコに接し、決して諦めず、いつもこの胸に希望を。そうゆう俺でなければならないのだ、と、確信する。そして、

俺がキョーコに本当の愛を捧げていれば、きっと彼女にそれは届くはず・・・。

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プロフィール

Agren

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



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