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LOVE PHANTOM (27)


SIDE KANAE

大学3年生の初秋。
私とキョーコは司法試験の最終試験---口述試験に臨むべく準備していた。

司法試験は短答式・論文式・口術試験と3回の試験からなる。最初の2つは受験生を篩い落とすための試験。合格率を一定にするため、上位○%に入らなければ合格できない。

でも、これから受ける口述試験は違う。合格率は9割を超え、さらに1度落ちても次の年に再受験のチャンスが与えられる。だから、といって気を抜く事はできないけれど、最初の2つの試験の時ほど必死になる必要もない・・・はずなのに。

「・・・別に昼休みまで使って勉強しなくても、通るんじゃない?」

午前の授業が終わった後、キョーコを誘い、学内のサンドイッチショップでランチをテイクアウトした。教室に戻り、それを食べた後の事。

いつものように、問題集やら参考書やらを取り出したキョーコに向かって、私は思わず本音を呟いた。

が、そのとたん。それを聞いた目の前の親友は顔を上げ、ピカリと目を光らせた。

「そうだよ、きっと大丈夫だよ!?でも、でも、私は・・・あーもー!弁護士を目指す人間としてっ!ううん、その前に人としてっ!!今回の試験問題漏洩は、もう犯罪・・・ 

徐々に声高になっていくキョーコの口から、不穏当な単語が出てきたので私は慌ててそれを遮った。

「ストーップ!!幾ら人がいないって言っても、一応、ここは教室!誰が入ってくるか分からないんだから、人聞きの悪い事は言わないで頂戴!?」

昼休みの教室は人が居ないか、居てもせいぜい数人でお互いの存在を気にもとめていない事が多い。だからと言ってややこしい話をするにはオープン過ぎる場所だ。

「だってぇ・・・」

----ズビ、ズビビビビ・・・

さっき飲み干したはずのオレンジジュースを啜りあげる音が静かな教室に響く。まるでキョーコの胸にくすぶる想いを代弁するかのようだ。

「まぁ、気持ちはわかるけど・・・」

「・・・蓮の思い通りにならない事なんて・・・この世にあるのかなぁ・・・?」

私がキョーコの親友という立場で何となく彼の実情を察していると・・・この問いかけには、何とも微妙な気持ちを喚起させる。

「そりゃあ、色々あるでしょう」

「そうかなぁ・・・?」

(アンタの事とか、アンタの事とか!、アンタの事とかよ!!)

と、心の中だけで突っ込みを入れ、

「仮に、神様、仏様だって、憐れな子羊や迷える凡夫を憐れんで涙する日々なんだから。万能そうに見える人間にだって、できなくて歯がゆい思いをする事があるに決まってるじゃない」

と、適当に相槌を打つ。馬に蹴られて痛い目をみるのは嫌だもの。

「そうかぁ・・・」

「そうよ。例え、本物みたいな司法試験予想問題を作れたとしてもね?」

「うん・・・」

「運も実力の内だから。それに、アンタが真面目なのはちゃんと私が知ってるわ。まるでズルしたみたいで後ろめたいんだろうけど・・・ちゃんと勉強を続けようとする姿勢を持ってるなら・・・きっと卒業までにはちゃんと実力が伴っているわよ?」

***

キョーコが 「司法試験を何が何でも在学中に合格する!」 と宣言するのを聞いたとき、無謀だ、と思った。だって、キョーコは私のように記憶の特技がある訳じゃない。

勤勉な彼女の事だから、普通に勉強すれば---といっても、司法試験を受験しようと考える人間は、世間一般に言えば十二分に優秀なのだから、何を以て普通というか疑問だけれど---普通に合格できるのに、と思った。

ちなみに、在学中に合格するというのは「普通」ではない。

食事と一緒で慌てて詰め込んだ知識は消化不良を起こして身にならない・・・そう、危惧していたけれど、予想を遥かに超えて彼女の勉強の進みが早かった。思っていたよりもキョーコは優秀なんだ・・・能ある鷹は爪を隠しまくりだわ・・・そう思っていたのに。

実は敦賀蓮がキョーコの家庭教師?をしているせいだ、と分った時は我が耳を疑った。

(ほんと、どんだけ?って思うわよ・・・)

キョーコの恋人は、キョーコの為の夕飯作りだけでは飽き足らず、キョーコが持っていた法律の参考書や問題集を理解し、まるで予備校講師よろしくキョーコの受験勉強を指導していたのだ。

キョーコ曰く「ちょっと、見せて?って言いながら、私の本をパラパラと捲っていただけだったのに・・・」だそうだ。

私だって本を一読すれば、内容を覚える事位はできる。
でも、それだけだ。
いくら条文や判例を覚えても、それを自由に目の前の事例の解釈に使えるようにはならない。英語の辞書を丸ごと覚えても、直訳はできるようになるかもしれないが、自然な意訳ができるかどうかはまた別問題なのと一緒、だ。

ストックした知識を『生かす』ための勉強が別途、必要になる。

なのに、あの男は自由自在に知識を・・・簡単に操ってしまう。
それだけではない。敦賀蓮の凄さを思い知ったのは、司法試験の真っ最中だった。今思い出しても鳥肌が立つ出来事だ。

(何よこれ~!?)

試験中、実際に声に出して叫ばなかった自分を褒めたい。
だって、目の前の問題が・・・殆ど全て、あの男がキョーコの為に手作りした『司法試験予想問題集』の中にあったのだ。

キョーコが見せてくれたソレ。どんなものだろう?と興味本位で眺めただけだったけど、私はしっかりと覚えていた。

偶然だよ?と懇切丁寧に説明する敦賀蓮を・・・キョーコは最初、信じられなかったらしい。というか、正直者?なキョーコには信じたくなかったのかもしれない。でも私は、これは少しだけ実現確率が高められた偶然で、何も後ろ暗い事は無いと確信していた。

何と言うか・・・思い詰めている感じがしなかったのだ。

一時期、敦賀蓮から焦燥にも似た恋心がビシバシと発散されているのを感じて、少し怖かったのを覚えている。でも、間もなく彼は落ち着きを取り戻し・・・キョーコのために何かしでかしそう、という感じが全くしなくなった。

司法試験の勉強に集中する恋人を支える、という話は、そんなに珍しくない。
浪人状態で生活力の無い彼氏のために、衣食住を支えた上、こずかいまで渡して応援した、なんて美談(?)だって聞いた事もある。

それに比べ・・・敦賀蓮の底が知れない能力をもってすれば、キョーコの夕飯の面倒をみながら司法試験の傾向と対策を練る位、朝飯前でやっていたとおもっていたのだ。

いつからか感じる様になった敦賀蓮の余裕。
キョーコは相変わらず非恋愛体質だけれども、それはそれ。二人の間には良い関係が成り立っている・・・そう誤解していた。

直接、彼の胸の内を聞かされるまでは・・・。





分かりにくくてすみません。

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プロフィール

Agren

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



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