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misleading-後

Misleading-誤解を招くあれとそれ-後篇

「最上さん起きて!着いたよ!!」

声を掛けても目覚める気配が無い彼女。仕方なく体をゆすってペチペチと頬を軽く叩くと薄く瞼が開いた。

「敦賀さん・・・?」
「マンションに着いたよ!」
「はぃ?ああ、ちゃんと、お部屋まで送りますよ~、ワタクシ仕事きっちりがモットーです」

(・・・まったく・・・)

あの後、タクシーに乗り込んで、さて、どうゆう風に俺のマンションに向かうよう誤解させつつ彼女の自宅にタクシーを向かわせようか?と考えていた・・・その僅かな時間に、彼女は眠りこけていた。なんて、危うい酔っぱらいだ!と俺が憤慨するのは無理もないと思う。

「さぁ、降りて下さい~」

よろよろとタクシーを降りる彼女の姿に溜息が出る。
タクシーの運転手には少し待って貰うことにして、彼女が一人暮らしをしている部屋まで誘導する。

「あれ?ここ、私の部屋・・・ま、いいか・・・」

彼女が、ドアノブに手を掛ける。カチャカチャとドアノブに言わせているけれど・・・

(・・・良くないと思うよ?)

それに鍵開けて無いでしょ?、と言おうとした瞬間、

「開かない・・・ドアが開かないよぅ・・・」

悲しそうな最上さんの声が聞こえてきた。もう、何と言って良いのか分らない気持ちになる。

(もう、この娘はっ!この醜態を携帯で撮影して後日彼女に見せるしかない!!)

携帯を操作し、カメラを最上さんに向ける。
すると、彼女の体がずるずるとドアに寄りかかるようにしながら沈んでいく様子がディスプレイに映った。慌てて被写体に目を向ければ、ドアの前に座り込んで頭を垂れている。

「こら!こんな所に座りこまない!こらっ、寝ない!!」

しかし、今度は少し強めにゆすろうが叩こうが、瞼が開かない。

(まったく、まったく!!なんて危険な酔い方するんだ!!)

「他の男の前でこんな風に酔っぱらったら、許さないからね?」

彼女の意識が無いのをいいことに、言いたい事を言わせてもらう。他にも言いたい事がいろいろあるけれど、説教はまた後日にたっぷりすることとして、俺は彼女の鞄の中の何処かにある部屋の鍵を探す事にした。カードキーになっている俺の部屋とは違い、鍵穴がついたドアノブ。

----チャリ

鞄の中、指先がはじいた物から金属音がする。きっとキーホルダーを探しあてたのだろうと思い、それをそのまま引っ張り出してみると、

(手錠!?)

出て来たのは、およそ女の子の鞄に入っていない様なもの。
なんでこんなもの・・・と一瞬驚いたものの直ぐに合点がいった。確か『螺旋の森』出演記念に貰っていたっけ・・・俺はソレを鞄に戻して再び鍵を探し始め、やっとの事でポーチの中から見つけだした。



「お邪魔します・・・」

完全に寝込んでいる最上さんを脇に抱えて部屋に入り、手近な壁に見付けた電気のスイッチらしきものを押すと、オレンジ色の明かりが灯る。

(これが最上さんの部屋・・・)

部屋は玄関から直ぐにキッチンがあって奥の方にはベットらしきものが見えた。トクンと音を立てて心臓が跳ねるのを感じる。

(外にタクシーを待たせているし、この部屋に招かれて入ったわけではないし・・・)

俺は少し慌てて彼女をベットに押し込んで、足早に部屋を去ろうとして・・・ふと思う。

(朝起きたら何も覚えて無かったりして・・・)

既に、色々覚えていないのだから、きっと覚えて無い。

(最上さんには、こんな酔い方を2度として欲しくない、絶対に!)

そのためには、彼女は自分が陥った状態が如何に危ういか、思い知らないといけない。
少し怖い思いをしなければ・・・実際に、泣かせる様な事をする訳にはいかないけれど・・・しばらく考えて・・・さっき見付けた手錠の存在を思い出した。

(そうだ!)

朝起きて、自分が手錠で繋がれていたら?しかも、明らかに自分以外の誰かにされているのに、でも誰がやったか分らない、という状況だったとしたら?

きっと彼女は仰天し、2度とアルコールで失敗しないよう、細心の注意を払う様になるに違いない。

名案を思いついた俺は、きっとすごく意地悪く笑っていたと思う。取りあえず、鞄の中から手錠を取り出した。両手をはめてしまうと朝起きた時に鍵が開けられないから・・・取りあえず片手だけに手錠を着けて、反対側は何か・・・彼女が驚くようなモノに固定しないと・・・そう思いながら、さっきは気恥しくてよく見ていなかった部屋の中を、何か適当な物がないかと探しはじめる。

すると壁には・・・

----不破尚のポスター

(何で?何でこんなものを部屋に?)

その疑問に対する答えが出ないまま・・・ガツンと頭を殴られた様な衝撃がきて・・・俺は思わずその場にしゃがみ込んでしまった。

(もしかして・・・今だに?)

『キョーコは俺のモンなんだよ』

どれだけの時間がたったのか・・・不破尚のポスターが最上さんの部屋にあるという事実に衝撃を受け・・・心身共に動けなくなっていた俺に向かって、ポスターの中から不破が、そう言い放った気がした。まるで鼻で俺を笑っている様な、いつか見たような不破の不敵な笑みに、頭の中が沸き始める。

(結局、心を寄せるのはコイツなのか・・・)

表面上は、嫌う素振りを見せても結局「ショーちゃん」は彼女にとっての永遠の唯一。

16歳でデビューし順調に歌手としてのキャリアを積み重ねているアイツ。日本の若手アーティストNO1の称号だけでなく、世界デビューも既に果たし・・・その上、ずっと小さい頃から最上さんが傍らに置いて、その僥倖に気付かず彼女を捨てたのに・・・なおも彼女の心を捉えて離さない。そんな勝手は許せない。

----アイツだけじゃない・・・俺以外のものになる彼女、なんて許せない。

誰かに掻っ攫われる位なら、誰が手にしようとしてもその手から零れ落ちるよう・・・彼女を粉々に壊してしまいたい。久しぶりに感じる凶暴な気持ち。

(とりあえずこの目障りなパネルから粉砕するか?)

俺は拳を不破のポスターに向かって叩き付ける・・・直前で止めた。砕きたいのは、砕けたのは、物理的な『モノ』じゃない。形の無い、心の方だから。

「ファーストキスでは後れを取ったけど・・・そこで、君は指をくわえて見てるといい。最上さんが俺のモノになるのを、ね?」

本当はヤツが俺に仕打ちしたように、不破の目の前で最上さんを奪いたい。でもそれは非現実的だ。その代わりと言ってはなんだが、これで代用しよう。

早速・・・と思う気持ちを最後の理性でぐっと押さえ、俺は部屋を出て待たせてあったタクシーへと戻り、

「お待たせしました。実は彼女、気分が悪いと吐いてしまって。暫く付き添うので・・・帰って頂けますか?」

おつりは要りません、そう言って俺は運転手に一万円札を渡す。
何だか今から正気の沙汰と思えない事をしようとして言うのに、こんな風に常識的な対処している自分が妙に可笑しい。

そうして部屋に戻ってドアが閉まる音を聞いた同時に・・・『ガコン』と何かの蓋が開くような気がした。そこから何が出て来たなんて・・・今はどうでもいい。



酩酊状態に陥っていた彼女は自分の置かれている状況を理解していなかったと思う。途中から、反応がちゃんと返って来るようになったから、覚醒したらしいけれど・・・然したる抵抗もせず、俺の為すがままだった。

虚しさが無いとは言わない。けれど、そんなのは些細な事だと思える様な幸せな時間。
今まで俺は綺麗事で自分を誤魔化していたと痛感する。例え、相手の心が伴わなくても、恋しい女性を抱ける事がこんなにも喜悦に満ちているなんて・・・

しかも思った通り彼女は『初めて』だった。生まれてこれ以上、嬉しい事は無い。新雪でまっさらなゲレンデの上に、シュプールを描く快感に夢中になった。

「こんな風に無防備な君だって悪いんだから・・・ね?」

俺だけが悪い訳じゃない。君が自分自身で蒔いた種だろう?と自分勝手な事を思いながら・・・彼女が「仰天するもの」として、俺自身を彼女の片手に嵌めていた手錠に繋いだ。



***



「ギャーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!」

いきなり頭の中心を叩き割らんばかりの声に反射的に飛び起きる。一体、何事!?

「申し訳ございません~」

目の前に広がった光景に唖然とするしかない。
昨夜、俺が彼女から剥いで放り投げた洋服を辛うじて体に巻き付けただけの半裸の最上さんが、ベットの下に転げ落ちたのか、不自然な格好で頭を下げている。

(これは・・・もしかしなくても、土下座?)

「敦賀さんを襲ってしまった事、謝って許して貰える事じゃないのは分ってます!でも謝罪させてください!!」

なんで、君が謝るの?と、覚醒したばかりの頭で考える。これは、予想通り・・・

「最上さん・・・もしかして覚えて無い?」

彼女が、ぶるり、と細い体を揺らすことで・・・それは図星だと告げられる。
そうであれば、少々こちらに都合の良いように話を作ってもバレない・・・落ちる所までいってしまった俺はこの時点で何の迷いも無く開き直る事を決めた。

さてどうしよう?考え始めた俺の思考をさえぎるように、最上さんが泣きながまくしたて始めた。

「昨日は私も酷く酔っ払っていたみたいでっ、前後不覚の敦賀さんを自分の部屋に引っ張り込んで、いくら好きだからってっ、うっ、無理やりなんてっ、今まで可愛がってもらっていたのにっ、信頼を裏切ってっ、ううっ、ごめんなさいっ~~~」

涙ながらに謝罪をする最上さんに違和感を覚える。もしかしなくても、『君を襲った俺』という事実を、彼女は『俺を襲った君』と誤解している?普通、こうゆう場合、男の方が悪いのが定石だろう・・・?

「最上さん・・・自分が悪いと・・・思ってる?」

「はい、私が100%悪いです!!」

涙ながらに返される返事は・・・それは俺に都合が良過ぎるだろう?という内容ばかり。冷静になるために、とりあえず深呼吸をして、もう一度、彼女の言動を整理する。

『酔って昨日の事を覚えていないであろう彼女が、この現状を・・・自分から無理に誘って抱かれた、と理解している。しかも、俺の事を好きだったから、そんな事をしでかしてしまったと・・・』

体が脱力するのを止められない。なんてことだ・・・いつから君も俺の事を?

(こんな幸せな結末を迎えて良いものなのか?)

彼女の誤解を解いてこれは俺からのアプローチだったんだよと・・・君の初めてを貰った責任を取るといって丸め込んでしまおうか?いや待て、最上さんの事だ。俺が全然望んでない遠慮をし、犬に噛まれたと思って忘れるから気にするなとか何とか言いそうな・・・

(確実にモノにするにはどうしたらいい?)

俺は捕食者的思考をフル回転させて考える。
最上さんは相手のために自分を犠牲にする事を厭わない。そして他人に甘えるのを良しとしない。自分が我慢すれば全てが丸く収まるのなら喜んでそうするだろう。だから、俺に責任を取らせるような事は望まない。

----彼女が何らかの責任を取る方向へ追い詰めるべきだ

そうして最初に思いついた『俺に純潔を奪われた彼女』を『彼女に純潔を奪われた俺』にすり替える作戦を思い付いたのは自然な事で。俺は、彼女を俺の望む結論へと誘導し・・・



「分りました・・・責任を取って・・・謹んで、敦賀さんをお婿様に頂戴いたします」

パンパカパカパカパーン♪

頭の中に何やら華やかな音楽が鳴り響いた気がした。
望んだ以上の台詞、プロポーズの言葉を引きずり出した結果に大満足だ。後はこの誤解が解ける前にしかけた罠の入り口をしっかり塞いでしまえばいい。

(俺たちは両思いだし、良いよな?)

少し最上さんが可哀想かなとは思うけれど、罠にはめた獲物は逃がさない主義。そもそも、彼女に記憶が無いのが分かった時点で、この勝負?は貰ったようなもの。

その後も、何だかゴチャゴチャと俺の婚約者(仮)はケチを付けていたけれど、俺は実力行使でそれを黙らせる事に成功した。


fin.



この小話に関しては+αを後ほど・・・
あー、久しぶりなんで、なんだか拙さが増したような。いきなり連載に戻らなくて良かった。

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プロフィール

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



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