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LOVE PHANTOM(22)

SIDE KYOKO

母は私を「邪魔者」だと思っていない。そう確信した日から私の人生は変わった。

相変わらず、母とはたまにしか会えないし、不破家に預けっぱなしにされるし、友達も出来ない。
でも私は、それらを受け入れられるようになった。それに、それまで「母に私を認めて欲しい」そう願ってばかりだったのに「私だけは母の生き方を認めたい」と思うようにもなった。

事情を知っている伯母や伯父があまり母の働き方を快く思っていない---最上冴菜は過去ではなく現在と未来を生きるべき---亡くなった夫・不破健次郎のために生きるのではなく、生きている娘・最上キョーコのために生きるべき---そう考えてくれていたけれど、そうゆう風には・・・もう思えなかった。

母の仕事の評価の高さを聞くにつけ・・・憧れたし、羨ましい気持ちすら抱く。

(一所懸命になれるものがあるって、いいな・・・)

そして「私はちゃんと母の生き方を認めている」そう伝えたくて。そのために、

----私も母と同じ企業弁護士を目指す

そう思うのは・・・自然の流れだった。





母の癌の話を聞いた直後こそ、私は混乱してたけれど、

(一所懸命の言葉通り、母は「不破自動車」に「命」を掛けたんだ・・・それが本望なんだ・・・)

そして「母に縋って引退や療養を勧めても無駄」ということも納得した。もし、私が母の為に出来る事があるならば、それは、

---- 母が生きている内に司法試験に合格する

それしかない、と思う。ちゃんと一人前になった姿を見せて安心してもらいたい。それに、母の体があと何年持つのか分からないけれど・・・できれば、同じ職場で一緒に働いてみたい・・・叶わないかもしれないけれど、努力はしたい。

『天才でなくても・・・生きながらに魂を捧げる覚悟があれば、仕事程度の事に・・・不可能なんて無いのよ』

そう言った、母の目に仕事がどう映っているのか・・・少しでも垣間見たかった。

本当に・・・私が知る限り、母は誰より強くて、賢くて、美しくて、少し不器用な人。父が、婚約者や不破姓を捨てるほど母が好きだった、それを今更ながらに深く感じる事ができる。

(誰より強い人が「疲れたから逝きたい」というのなら、私にそれを止める権利なんて無いよ・・・)




SIDE REN

キョーコが東京に帰ってくる予定日の夕方、俺はベランダから彼女の家を眺めていた。

部屋の明かりが付いたのを見て、すぐに彼女の家に向かう。

「何でもいいから、何か手料理を食べさせて!」

開口一番、インターホン越しに、そう懇願する。姑息だとは思うけれど「食事」を持ち出す事が、他の何よりも確実に部屋に入れて貰えると思ったから。

「え?蓮?急に・・・えっと、食材とか、使い切ってから帰省したから・・・あ!でも、蓮へのお土産に買った『八丁味噌カレー』のレトルトがあるけど・・・手料理じゃない、かも・・・」
「それで十分だよ」

とりあえず、部屋に上がり込む。キョーコの顔を直視するのが少し怖くて、若干視線を外しつつ、

「お帰り」

と挨拶をした。

「はい、ただいま戻りました。直ぐに用意するから、いつもの場所に座って待ってて?積もる話はその時に」

そういって、玄関まで迎えに出ていた彼女が踵を返して奥の方に戻って行く。
その背中を・・・本当は後ろから抱きすくめたかったけれど・・・そんな事をしたら色々な気持ちが溢れて、自制できなくなりそうで、わざとゆっくりと靴を脱ぎ、後に続いた。





「炒め玉ねぎが冷凍してあったので、それでスープを作りました。一応、これで手料理?」

目の前に、カレーとスープ、カトラリーが並べられる。

「ありがとう、良い匂いだ」

そう言いながら、気付いた。

----指輪!?

スープカップを置いた彼女の左手の薬指。まるで結婚指輪の様なシンプルなデザインの銀の環。キョーコがネックレスをしている事はあっても・・・指輪をしているのを見た事は一度も無い・・・

「指輪・・・」

思わず、声に出して指摘する。

「あ、これ?母からの誕生日プレゼントなの。シルバーリングを19歳の誕生日に貰うと幸せになれるんだって言われて・・・」
「そうなんだ」

スープカップに落とした視線を上げる事ができない。良かったね、と言うべきだろうと思うのに・・・違う事を口走ってしまいそうで。

「これ・・・多分、形見なの。父と・・・母の・・・母はもう長くは生きられないと思う・・・」
「!?」
「母は癌なの。一応、来月手術を受けることになっているけど・・・あの人は、命を削るような働き方をしていたから・・・体が悲鳴を上げたんだと思う・・・」

言われた内容に驚いて顔を上げると、少し寂しそうな顔をしたキョーコと目が合った。





----どうして、そんな事を受け入れるのだろう?

癌・・・日本人の死亡原因NO1の病・・・を患っても激務を続ける、という母親の働き方も十分問題だと思うけれど、それを認めるキョーコの姿勢にも疑問を持たずには居られない。

クリスマスに連絡をくれなかった事とか、本当は俺があげたかった指輪を付けていた事とか、そうゆう事は「それは取りあえず置いといて」だ。

「キョーコは、お母さんが死んでも良いと思ってるの?」
「そんな事ないよっ!でも・・・母の働き方に私は意見できない・・・」

聞けば、母親の腫瘍は手術で切除可能。術後無理をしなければ再発の可能性はそれほど高くないという。

「君のお母さんはワーカホリック、仕事依存症だ。心の病気だから・・・癌の治療と平行してカウンセリングを受けるべきだと思う・・・」
「母は仕事依存症じゃないよ・・・」
「認めたくない気持ちは分かるけれど・・・」

日本では、精神病や、○○依存症などという診断が下ると、罹った本人が心が弱いダメ人間のかのように考える風潮がある。アメリカは日本と違って心の病に対する認識が体のそれに近くて、誰でも条件さえそろえば発症すると考え、気軽にカウンセリングを受けるのに・・・。

「君の母親は法曹界の「無敵クイーン」なんだろう?常勝といえば聞こえがいいけれど、それは仕事上の失敗を極度に恐れる心の裏返しじゃないの?仕事の為には健康を害しても構わないと思ってる所とか、キョーコへの態度を聞いてるとコミュニケーション能力に問題があるとしか思えない。それ・・・2つとも仕事依存症の典型的な症状だよ」

「仕事依存症じゃ、ない・・・」

彼女の目がうるうると濡れ始めたのを見て、言いすぎだ、と感じた。
尊敬している母親の事を、精神病患者と断定するような言い方をするべきじゃなかった。

「ごめん、ただ重い病を抱える患者には心のケアが必要だから、とりあえずカウンセリングを受けるのは悪くないと・・・」
「母は誰より心が強い人だもの・・・本当に必要無いの」
「必要かどうかなんて、受けて見なければ分からないだろう?」

愛しい恋人が、俯いて、それきり黙ってしまう。彼女を悲しませるのは本意じゃないけれど、何とか母親にカウンセリングを受ける事を勧めるよう、説得しなければ・・・。

「キョーコ」

なるべく優しく名前を呼んでみる。でも、返事がなくて・・・俺はいたたまれなくなってしまって・・・そっと彼女の方に近づいて手を握る。残される君が心配なんだ。

「・・・キョーコ」

ありったけの誠意を込めて、再度、名前を呼ぶ。

「母には、ケアすべき心なんて無いんです。魂だってもう幾らも宿ってないんです・・・」

何を言いたいのか・・・分からなかった。戸惑う俺に、キョーコが話を続ける。

「私の父は、私が小さい頃に亡くなったと言った事があると思うけど・・・最上、という姓は父じゃなくて、母の姓なんです」

「・・・婿養子、って事?」

「いいえ・・・父は名前を捨てる事で・・・実家との縁を切ったんです」

それから、キョーコが淡々と両親の事とか育った土地の事とかの説明を始めた。まるで、ロマンス小説のような内容が、真実キョーコの身の上話だと受け入れるのに少しの努力を要する。

(もし、本当だとするならば・・・)

部外者によるカウンセリングなんて、受けられる筈が無かった。





キョコさんのお母さんもLOVE PHANTOMなのです。

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プロフィール

Agren

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



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