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LOVE PHANTOM(21)

SIDE REN

『あの、23日の夜には名古屋に帰って色々と準備をしたいんです・・・母は実家には帰っていないから、食材も全然無いと思うし・・・』

----クリスマス・イブ、少しだけでも会えない?

俺のささやかな希望は、恋人にあっさりと砕かれてしまう。
しかも、最初は3泊の予定だった彼女の帰省は、いつの間にか正月明けまで伸びていて。

(ちゃんと約束はしてなかったけど・・・本当は大晦日に俺の家にお泊りしてもらって、一緒にカウントダウンしてそのまま初詣に行こうと思ってたのに・・・)

それからの12月の後半、心が弾みっぱなしの恋人とは裏腹に、俺は憂鬱な気持ちを重ねていって・・・いつまでも些細な事を引き摺る自分に厭気がさしていた。

(些細な事じゃないんだ・・・特別なイベントの思い出を共有したかったんだ・・・)

折角用意した指輪も渡すのが怖くなってしまう。なんだかんだと理由を付けて断られてしまったら?いや、受け取って貰えても、困惑の表情をされたら?それに、貰ってくれても毎日着けてくれる?自分は、寝るときだって外さないつもりだけど・・・。

キョーコの恋心を膨らませるためのアイテムが「彼女は自分をそれ程想っていない」という現実の象徴と思えてならない。そんな事は分りきっている事で、それでも少しづつ前に進むと決めたのに・・・。俺はとうとう指輪をクローゼットの引き出し深くに仕舞い込み、新たにネックレスを一つ買った。

(ヘタレ、だな・・・)

そんな自分に、少しでも自信を取り戻すため、連日深夜まで大学に残り卒研に没頭する。
その頃には、貴島を発信源とする「R.Tsuruga研究再開」の噂は学内に広がり、指導教官を筆頭に、大学スタッフがディスカッションを申し込んでくるようになっていて。久しぶりに味わう、懐かしい雰囲気の日々・・・それだけが、暗く沈み込む俺の気分を浮上させてくれていた。



そうして、迎えたクリスマス・イブ。俺は早々に研究室を後にして自宅に戻り独りで酒を煽る。
いつものように大学に遅くまで居残って、周囲に「敦賀はクリスマスに予定がない」と知られるのが嫌だったから。

自分でも、そんな事が何故こんなにも嫌なのか分らない。でも、とにかく嫌なものは嫌で。自宅に逃げ込んでも、嫌な気分はちっとも薄れる事がなくて、勢いに任せて飲んで、酒に「逃げて」いる自分を認識し、また嫌になる。

----来年の誕生日は一緒にお酒を飲みたい。

(もしかしたら、来年だって母親の呼び出しがあるかもしれない・・・)

一年後にまた「フラれる」自分を想像して落ち込んでしまう。
心の中に据えた「恋愛やじろべえ」が、ゆらゆらと揺れている・・・

♪♪♪♪♪♪♪、♪♪♪♪~

(キョーコからだ!)

彼女専用の着信音を聞いた途端、自分でも驚くほどの早さで携帯電話を取り上げていた。

「もしもし?」
「こんばんは、いま大丈夫?」
「うん」
「えっと・・・特に用事って訳じゃないんだけど・・・いかがお過ごしですか?」
「飲んでる」
「あ、ごめんなさい。お邪魔しちゃいました・・・楽しんで?」
「楽しくないよ!!」

つい、声を荒げてしまう。

「独りで寂しく飲んでるんだ・・・恋人に置いてけぼりにされて、全然楽しくない。来年も、今年みたいに独りのクリスマスなのかもと思って、落ち込んでた・・・」

普段なら、上手く取り繕って、押さえている気持ちがアルコールの力で押し流されて出てくる。電話の先で、キョーコが息を飲むのが聞こえた。暫くすると、あ、とか、え、とか、戸惑う短音が聞こえてきて、

「あの・・・もし。来年も母に呼ばれたら・・・蓮が嫌じゃなければ・・・一緒に名古屋に来ない?」

まさかの「お誘い」

「一緒に・・・行って良いの?」
「私、こ、恋人が出来たら、母に紹介したいな、と思ってたから・・・」
「・・・ほんと?」

『恋人が出来たら母に紹介したい』
その言葉で、理性とか自制とか、ちょっと前には放り出していたものが、一気に手元に戻ってきた。

「ごめんなさい、蓮が寂しい思いをしてるって気付かなくて・・・」
「いや、電話貰えたから、もう全然寂しくない。キョーコは俺と付き合ってて、寂しいと感じたりしない?」
「大丈夫ですよ?」
「そう、良かった」

何気なさを装って、彼女の気持ちのチェックする余裕を取り戻す。
それから、明日はどんなメニューを作るつもりだとか、今までなら苦々しい気持ちで聞いていたそれを、本当に心から楽しく聞く事ができて。彼女が俺を気遣って電話を掛けてきてくれた事が嬉しくて、益々「楽しい気分」に拍車がかかる。

「明日も電話くれる?いつでもいい、声を聞かせてくれると嬉しい」
「私の方こそ。なんか明日の事を考えると妙に緊張しちゃって。蓮の声を聞いたら落ち着いたから・・・明日の夜、電話するね?」

----彼女の気持ちは俺に向いているし、確実に育ってる

ここ半月続いたの鬱々とした気分がが嘘のように晴れやかになる。曖昧な、でもきっと未来に訪れるであろう幸せの予感。それに、電話から聞こえてくるキョーコの声は、すぐ耳元で彼女が話している様な気にさせてくれ・・・東京と名古屋・・・距離は離れているはずなのに、彼女の存在を近くに感じる事ができた。

「んっ・・・」
「のわわっ!?返事が無いと思ったら、いきなり何て声出すの!?」

思わずこぼした声に、何とも・・・な返事。

「なんか急に酔いが回って・・・」
「あまり、飲み過ぎないでね!強いのは分ってるけど・・・」
「うん。明日は飲まないで電話、待ってる・・・」




窓の外が白み始めるのを、ベッドに腰掛けて眺めていた。
昨夜一度も鳴らなかった携帯を握りしめながら。

最初は「積もる話があるのだろうな」と思っていた。
午前0時を少し回った頃に「昨日はどうだった?まだ暫く起きてるから連絡頂戴?」と留守電を入れた。午前2時を回った時には、

(きっと書いたメールを送信し損ねたとか、そんなオチなんだ・・・)

自分にそう言い訳をして、お休みのメールを入れて、一度ベットに潜り込んだけれど・・・全く寝付く事ができず、諦めて雑誌を読み始め、とうとう朝を迎えてしまった。

(7時を過ぎたらメールを入れるかな・・・)

一昨日の電話で、俺はかなり恋心のバランス感覚を取り戻していたけれど、約束が果たされないのは気になるし、キョーコを幸せにしたであろう昨日の夜の事を・・・誰よりも先に聞かせて欲しい。

取りあえず、ベットから降り、ベランダの外に出てみる。
この辺りで一番高いマンションの最上階にある俺の部屋からは、徒歩10分の所にあるキョーコのマンションを確認する事ができる。

(あそこには、居ないんだよな・・・)

そう思うと、無性に寂しくなる。まだ日の出直後の街は薄暗く、真冬の朝の空気が冷たい。

「キョーコ・・・君は今、何を想ってる?」

思わず声に出した俺の問いかけに応えるように携帯電話が鳴った。

♪♪♪♪♪♪♪、♪♪♪♪~

待ち焦がれていたメール着信。直ぐに確認すると、そこには

『電話しなくてごめんなさい。東京に戻ったら連絡します』

それだけ書かれたメールが届いていた。

----東京に戻ったら連絡する

つまりそれは・・・キョーコは1週間近く連絡を取るつもりがない・・・そう理解したとき、

「くそっ」

俺はベランダの手すりを力いっぱい拳で叩いていた。

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プロフィール

Agren

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



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