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LOVE PHANTOM(11)

SIDE REN

「ドライブ日和だな」

空を見上げると、初夏らしい少し白っぽい青空が広がっている。今日は、最上さんと榛名山までドライブをする約束の日。俺が彼女の運転するスーぺリオの助手席に乗せてもらい、彼女の運転を見せて貰う事になっている。

待ち合わせは朝の9時。俺が歩いて彼女のマンションまで出向き、到着したら電話を掛けて知らせる手筈。

この時間だと、長袖シャツ1枚の格好は少し肌寒いのかもしれないけれど、何だか冷たい空気が心地よくて、俺は念のために持って出たジャケットを片手に10分程の道のりを気分良く歩いてきた。

「もしもし?今、下に着いたよ?」
「はーい!今降りて行きますね!」

一人暮らの彼女の家は、1Fが駐車場になっている4F建てのマンション。屋根付き駐車場は・・・やはり彼女の車のへの拘りの一つなんだろうか?

「おはようございますー!」
「お、はよう・・・」

俺は、彼女の・・・色鮮やかな姿に・・・一瞬、言葉が詰まってしまう。

「その格好・・・」
「えへへ・・・ちょっとやり過ぎかな?って思ったんですけど、今日は敦賀さんと峠ドライブなので、思い切って勝負服を着ちゃいました!!」

その表情もセリフも・・・メガトン級の可愛いさ・・・じゃなくてっ!

「さすが・・・最上さん・・・うん、良く似合ってるよ・・・」
「そうですか///・・・」

照れる姿も可憐なんだけど、その目にも眩しい「ピンクのつなぎ姿」・・・それは、

----レーシング・スーツ!?

(・・・確かに「勝負服」だよな・・・もう彼女に関してはどんな事でも驚かないぞ、って決めたのに・・・あぁ、履いてる靴も、レース仕様だ・・・)



なんというか・・・俺は朝から・・・彼女の予想を遥かに超えた衣装に度肝を抜かれてしまい・・・少々上の空のまま群馬県榛名山まで運ばれていた。道中では、スーペリオを筆頭に代表的なスポーツカー談議に花を咲かせていた・・・と思う。

目的地に着くと、最上さんは「きゃぁぁ、すごい~~!!」歓声を上げて車を止める。

「敦賀さん、見て下さい!漫画と同じ風景です!!ちょっと降りても良いですか?」

俺が同意すると、嬉々としてデジカメ片手に車から飛び出していった。目の前には何の変哲もない給水塔。でも、某漫画の中ではスタート地点の目印になっている「それ」の写真を夢中で撮っている。

「はぁ~、今からあのコースを走ると思うとドキドキしちゃいますね・・・」

楽しみで仕方ない・・・らしい彼女の笑顔の中で、目は潤んで、頬も上気している。それを見た俺の心臓もトクンと跳ねる。

「俺も、ドキドキしてるかな。君がどんな運転をするか・・・すごく期待してしまっているみたいだ・・・」
「そんなに期待されると、恥ずかしいですけど・・・」

そう言いながらも、彼女はドライビングシューズの紐を締めなおし、鞄からグローブを取り出してその手に嵌める。

「準備完了!」

その声を合図に、彼女の、表情が、雰囲気が、引き締まる。
そして、その後俺が見たものは・・・思わず息が詰まる程の感動の走りだった。


***


SIDE KYOKO

本当はスーツを着るのはやりすぎ、って思ってた。
でも、あの未遂事故以来、初めてちゃんとスーペリオに乗る。ほんの少し怖気づく気持ちを奮い立たせるためにも、私は「勝負服」を着て行くことにした。

(敦賀さんだって自動車部なんだから、レーシングスーツ位じゃ驚かないよね?)

榛名山に着くまではスポーツカーの事が話題の中心だったけど・・・とにかく彼は詳しかった。
単に「詳しい」で言葉で片付けて良いのか・・・彼の頭の中には、古今東西すべての車のデータが詰まっていると言っても過言じゃないと思う。スーペリオ1つとっても、排気量だけじゃなくて、形式毎に若干変わる最高出力と最大トルクの値とか全部すらすら出てくるのは、なんというか・・・数学科だから数字に強い、とかゆうレベルではなくて。

そして、敦賀さんと一緒にドライブに行って分ったのは、彼自身とんでもない運転の腕前だということ。

榛名山について、1時間ほど峠道を堪能させてもらった後、敦賀さんが、

「ちょっとだけ、俺にも運転させて貰える?」

そう言うので、運転を代わって・・・気付いた。敦賀さんが、私が走ったライン --- 一定の道路幅の中をどんな風に車を移動させてカーブを曲がるか --- を再現している事に。

「もしかして・・・」
「うん、流石・・・気付くんだね?君のラインを、ちょっとなぞってみたくて・・・先行車や対向車の事があるから・・・全く同じって訳にはいかないけど・・・」

(・・・!! もしフリーで走れたら、全く同じにいけるって聞こえるんですが!?)

「すごい・・・一度見ただけで・・・」
「まぁ、俺の特技みたいなものかな? でも、見本を「なぞる」事と、見本を「作る」事は全く違うからね。こんな風に走れる最上さんの方が、もっと凄いと思うよ?」
「そんなこと・・・」

私の走り方は「先生」に手取り足とり習ったからこそ身に付いた技術が元になっていて・・・つまり、私だってある意味見本をなぞっている訳で・・・私も「先生」の走りをなぞる練習をした事はあるけど、こんな風に正確にトレースできない・・・。

(私・・・実は凄い人と知り合いになったのかも・・・)

そんな風に漠と感じ始めていた。でも、それを決定的にしたのは、そろそろ昼食にしようと言う事で入った湖畔のお蕎麦屋さんでの事。敦賀さんが何気なく、

「最上さんは、本当は「86」でここを走りたかったんじゃないの?」

少し悪戯っぽく、私に聞いてきた。「86」っていうのは、私が好きな車漫画「イニシャルDX」の主人公が乗っている車の通称で、不破自動車の往年の名車。

「・・・そこまでコアなファンじゃないですよ?それに、あんな古い車を買ったらメンテナンスが大変です」
「そうだね。でも早くて5年、遅くても10年以内に「次世代86」が出るんじゃないかな?」

内心、驚いてしまう。
私は、ショーちゃんと不破の伯父さんが「次世代86」を10年以内に出すぞ!って言っているのを聞いていたから・・・思わず、

「どうして、そう思うんですか?」

って聞いてみたら、

「うーん、別にあてずっぽう、とか、単なる期待、とかじゃないんだよ?「特異点」を除けば・・世の中の現象は連続的に変化するから・・・投入されているリソースとか市場動向とかのデータがあれば、大抵の事は外挿で予測できるし・・・」

そう苦笑して、

「まず、不破がスポーツカーから撤退したのは・・・これまで積極的に推進してきたプロジェクトを見れば、相当不本意だったのは明らかなんだ・・ただ、地球温暖化っていうキーワードが良くも悪くも大きな意味を持つ時代だから、燃費の悪いガソリン車は作れないだろう?だかといって、今のハイブリット技術じゃ、不破が望むようなスペックのスポーツカーは作れないし・・・」

そう言いながら、不破がスポーツカーを再開するなら「86」シリーズを選ぶ理由、そして「次世代86」を実現させるのに必要な要素技術を幾つか挙げてた後、「不破なら多分、これをするだろうな・・・」とターゲットを「ブレーキ、バッテリー、パワーデバイス」に絞ってから、「1つだけ完成した時点で出すなら5年。2つなら7、8年。3つなら10年掛かると思うんだ・・・」

そう言って、さらに1つ1つの問題点を丁寧に解説してくれた。その時にも、彼の話の中には細かい物質名や関連する数値データが、沢山散りばめられていて・・・すごく説得力があって。その話を聞きながら、私は、

『東都に行けるのなら、行きなさい。あそこは天井知らずだから』

そう言った母の言葉を思い出す。
高3になって、進路を考えていたとき・・・不破の伯父さんと伯母さんは「キョーコちゃんは女の子なんだから、地元の国立大で十分じゃないの?」と言っていたけれど、母は、

『日本には東都大以上の大学が無いから・・・あそこには、東都の入試を何もしなくたってほぼ満点でパスできる学生がいるの。彼らは努力して東都の合格をもぎ取る秀才達と・・・質が違うわ」

そう言ってから、私の目を真っ直ぐ見据えて、

『「天賦の才」・・・俗に言う「天才」っていうのを観察できる良い機会だから利用しなさい。そして「凡人」の自分が目指せる限界を知って・・・それでも、そこを目指しなさい』

この母の言葉を聞いて、私が東都を目指さない理由はなかった。母は完璧主義者だったけど、決して無理難題をクリアしよう/させよう、としている訳じゃない。母自身が・・・そして私の事も「凡人」と認めた上で、私に「行けるところまで行きなさい」そう期待しているのだ。

(もしかしたら、敦賀さんは「天才」なのかもしれない・・・)

「どうしたの最上さん?俺の顔をじっと見て・・・」
「あ、ごめんなさい、話の途中で・・・ちょっと考え事を・・・」
「そうなの?何を考えてたか聞いても?」
「お待たせしました~」

ちょうど、そのタイミングでお蕎麦が運ばれてきた。私は「貴方が天才かどうか考えてました・・・」なんて言えないよね、と思い、

「お蕎麦は「茹でたて」が命ですからね!さ、美味しいうちに頂きましょう!!食生活が壊滅していた敦賀さんは知らないでしょうけど、お蕎麦には・・・」

何だか話を聞きたそうな敦賀さんに申し訳ないとは思いつつ、私は「美味しいお蕎麦の三条件」へと話題を進めた。




キョコさんに「つなぎ」を着せてみました。蓮さん驚愕w。

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プロフィール

Agren

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



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