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LOVE PHANTOM(10)

SIDE KYOKO

下北沢はとても住みやすい街。

駅前にはありとあらゆる種類の店がひしめき合う商店街ひろがっていて、買い物には不自由しない。その中には私の乙女心をくすぐる「可愛い」と「お洒落」が詰め込まれたような店も沢山あって、歩いているだけでウキウキしてしまう。街全体としては下町の風情が漂っていて治安も悪くない。

私は、この街の雰囲気も気に入っていたけれど・・・ここに住むと決めた一番の理由は通学が便利だったから。東都大は1,2年生と3,4年生が通うキャンパスが離れている。京王線も使える下北沢駅の北側は、最初に通うキャンパスは自転車で通学できて、3年生から通うキャンパスにも30分ちょっとで行けるという、絶好のロケーションだった。

(皆、考える事は一緒なのよね・・・)

私が下北沢に住んでいる理由と同じ理由で、この街には東都大生が結構住んでいる。同じく東都生の敦賀さんが、下北沢に住んでいるのは偶然でも何でもないし、同じ街で生活していれば、こんな風にスーパーで会うことだってあると思う。

「こんばんは、元気だった?」
「!? あ、こんばんは!この前はありがとうございました」
「どういたしまして。あの後、大丈夫だった?」
「ええ、一晩ぐっすり寝たら、翌朝にはスッキリです!」
「今、仕事の帰り?」
「!!・・・えぇ、まぁ」

私は彼に「社会人」と認識されていた事を思い出す。今日は図書館で調べ物してたらいつもよりも遅くなっちゃったけど、もっと早い時間に会っていたら・・・気まずかったかも・・・って思っていたら、

「その格好で会社に行ってるの?」
「!!!」

彼の問いかけに動揺してしまう。私は当然の様に学生らしいラフな格好をしていて・・・今日は、花柄のチュニック+クロップドパンツ。こんな恰好で会社に通う人なんていないーーー!!ど、どう言い訳すればいいのーーー?

「最上さんは、もしかして技術系なの?」
「はいっ!?」
「だって、エンジニアって、会社に着いたら「つなぎ」に着替えたりするから、通勤服は自由だったりするって・・・聞くけど?」

私が社会人だと微塵も疑っていない敦賀さんは、多分、彼の中で一番好意的な解釈をしてくれたんだと思う。

「まぁ、そんな部類です」
「ふぅん、またまた最上さんの意外な一面発見。こんなに女の子らしいのに、エンジニアかぁ~、でも、車好きな最上さんなら、納得だな・・・」

(ひぇぇ! またまた嘘に嘘を重ねてしまいましたっ!! 私は本当は法学部の学生ですーーー!!)

後ろめたくて・・・頭の中には、泥沼に片足がどっぷり浸かった自分のイメージが湧いてしまっている・・・あぁ、もう、どうしてこんな事に・・・。

「ところで、それは今日の夕飯?」

敦賀さんが私の買い物かごを差して言う。籠の中には、ひき肉、卵、玉ねぎ、パン粉とブロッコリー。

「何を作るのかな?想像つかないな・・・」

(この材料・・・分かりやすいと思うんだけど・・・そうか!)

「敦賀さんは料理されないんですね?」
「・・・分かる?」
「だって、料理をする人なら、これはハンバーグの材料だって気付きますよ?」

敦賀さんは「本当は自炊した方が良いと思うんだけど面倒でね・・・」と申し訳なさそうな顔をしている。でも、彼の買い物かごを見れば、牛乳3本とコーンフレーク2箱が入っていたから、

「この辺は、安くて美味しい定食屋さんが沢山ありますから、自炊しなくても困らないですよねっ!ちゃんと朝食は召しあがるんですよね?それで十分ですよ!」

男の一人暮らしだと、面倒くさがって朝食を抜く人が多いって聞きますし・・・って、フォローのつもりで言ったのに、

「あ、これは俺の夕飯?」

意外な答えが返ってきた。

「コーンフレーク80gと牛乳1lで、1日に必要なビタミンとミネラルの100%が採れるんだ。味も結構良いし便利な食べ物だよね?」
「・・・まさか・・・朝晩コーンフレークだとか言わないですよね?」
「そんなことないよ?」

それを聞いて安心した。そうよね、いくらなんでもそんな事・・・

「朝はコーヒーで、夜がコーンフレーク」
「!!!・・・今日は、たまたま・・・ですよね?」
「基本的に毎日?」
「!!?・・・いつから、そんな食生活を?」

いつだったかな・・・、と敦賀さんが指折り数えはじめた。どうも片手じゃ足りなかったらしく、手に持っていた籠を腕に掛け直して、両手で数えはじめる。

「駄目です!そんなんじゃ駄目ですーーー!トウモロコシと牛乳と合成ビタミン以外にも身体が必要とする物は色々あるんですー!!」

私は、思わず本当は年上の男の人を叱りつけていた。


***


SIDE REN

彼女もこの街の住人だから、偶然こんな風に会う事もあるんだと思う。

駅前のスーパーで買い物をしていたら、最上さんを見つけた。あの日は無事に家まで送り届けたし、下北に戻ってくる頃には彼女の顔色もすっかり良くなっていたけれど、やっぱり少し心配だったから声を掛けてみる。

それにしても、社会人にしては随分と可愛らしい格好を・・・ホント、これじゃ高校生・・・コホン・・・まぁ、似合ってはいるんだけれど学生にしか見えない。その時、俺はメーカーの技術研究所に就職した先輩が、

『会社に着いたら作業着に着替えるから、通勤服なんてなんでもOKだよ。とりあえずジーンズ以外なら』

と言っていた事を思い出す。
やっぱり、彼女はエンジニアだったみたいで。車が好きで、運転がとびきり上手で、車関係のエンジニア・・・外見の印象・・・先入観さえ捨ててしまえば、彼女は自分の拘りをもって、ちゃんと人生を歩んでいる立派な女性(レディ)なんだ、と思う。

「赤いトマトのリコピンとか、キノコのβ-グルカンとか、コーンフレークだけじゃ採れない大切な栄養素って沢山あるんですよ!」
「・・・はいはい、分かってます・・・でも、必須栄養素じゃないし・・・」
「!? 分かってる人の返事じゃありませんっ!」

どうも「食事」も彼女の拘りポイントだったらしい。
俺はスーパーを出てから・・・最上さんによって無理やり駅前の定食屋「だるま屋」に連れて来られていた。

「ここの定食は、安くて美味しくてバランスだって良いんです!いつもとは言いませんけど、たまにはこうゆう所で食べて下さいっ!」
「最上さんも、良くここに来るの?」
「私は自炊派ですから時々しか来ませんよ?」
「・・・なんだ、残念」

本当に、残念だなと思う。

(何で残念なんだろう?)

彼女は・・・車への拘りは、あのスーペリオを見れば歴然だし、運転の腕も超一流・・・なのに肩肘張ったところが無い。普通は男だって、ちょっと「乗れる」と、それを鼻にかける事が多いのに・・・好感の持てるドライバーだな、と思う。

(そうか・・・俺は「凄腕ドライバー最上さん」と友達になりたいんだ)

だから、

「今度飲みに行こうよ」

気軽に誘ってみる。社会人と学生・・・だけど、年齢は1つしか離れてないし、共通の趣味だってあるから、楽しく飲めると思う。

「お酒!?駄目です!嫌ですっ!!」
「嫌って・・・即答だなんて・・・少し、傷つくかも・・・」

これまで、女の子を誘って、こんな風に速攻で断られるって・・・あったか?
なんだかショックな上に、ツキンと胸が痛んだ気がする。

「あっ!ごめ、んなさい。私、お酒はまだ飲めな、いえ、その、下戸なんです!!それはもう超が付く位どうしようもない程!一滴でも飲むと大変な事に!!」
「そうなんだ・・・」

最上さんが、決して敦賀さん自身が嫌いと言う訳では無くて!お酒というキーワードに過剰反応しただけでっ・・・と一生懸命言い訳をしているので、なんだか、じんわり嬉しくなってしまう。気を良くした俺は思い切って、

「じゃぁ・・・ドライブなんて一緒にどうかな?俺、最上さんの運転をちゃんと見てみたい。そうだなぁ・・・行き先は例えば榛名山とか?」

本当だったら初対面に近い女性をいきなりドライブに誘うのはどうかなと思うけれど、でも、車好きの彼女なら大丈夫な気がした。

「・・・榛名山って・・・もしかして、あの傑作漫画「イニシャルDX」の峠レースの舞台になった、あの榛名山ですか!?」
「そうだよ?」
「行きますっ!行きたいですーーー!!」

「榛名山」という単語に反応し無邪気にはしゃぐ最上さん。
「本当に車が好きなんだなぁ・・・」と感じられて、俺まで嬉しくなってしまう。

(それにしても、ホント可愛いというか・・・これで、俺より年上だって言うんだから、サギだよなぁ・・・)





実はサギだったんです(笑)

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プロフィール

Agren

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



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