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LOVE PHANTOM(6)

SIDE KYOKO

地下鉄の階段を登り、目の前の横断歩道を早足で渡る。
その勢いのまま、先にあるハンガーショップの脇を抜け、少し勾配のきつい坂をぐんぐん登っていく。

(うぅ・・・ドキドキする・・・登り坂のせいだけじゃないよね・・・)

坂を登りきる手前、私は少し乱れた呼吸を整えるよう歩みを緩め、ともすれば見落としそうな細い脇道に入っていった。

----ここは東京・神楽坂

昔は花街だった名残りで、東京のど真ん中にありながら表通りを一歩入ると狭い石畳の路地が続く。そして今でも東京有数の料亭街。上質な闇を纏う街並みを、ぽつりぽつりと行灯のオレンジ色の光が照らし、風情ある料亭が客を歓迎をしているのが分る。

(京都みたいよね・・・)

母の故郷と母の面影を、共に思い出しながら歩いていく。そして、不破の伯父さんに何度か連れてきて貰った割烹料亭の前で足を止めた。

(蓮、が中にいる・・・)

彼を意識するだけで、胸が、きゅう、と縮こまる。大好きだった恋人。一緒にいるだけでドキドキして、目が合うだけで嬉しかった。

(でも、愛想を尽かされちゃった・・・当然だよね・・・そもそも最初から不釣り合いだったのよ・・・)

伯父さんは、蓮が「可愛い後輩」の私を懐かしがって、会いたがっていると言っていた。

『キョーコちゃん。RT-Flowのライセンスを無事に取得するまで、彼の機嫌を損ねる訳にはいかないんだ。ちょっと協力してくれないか?』

5年の月日は、彼の怒りを鎮めてくれたらしい。元々、穏やかで大人な人だったし・・・ううん・・・そもそも私とは暇つぶしに付き合った程度で、気にも留めて無かったのかも。

とにかく、私には不破の伯父さんの頼みを断る理由は無かった。

(さぁキョーコ、中に入るわよ!)


***


SIDE 不破自動車社長

「品の良い店ですね。流石、不破社長が使う店だけの事はある・・・肴も美味しいし、この日本酒、僕は好きですね・・・」

先程から、敦賀蓮が機嫌良く杯を重ねている。かなりのハイペースだ。

「気に入って下さって良かったです・・・お酒、強いんですね?」

私は彼と夕食を一緒に取るため、大事な客だけを連れてくるお気に入りの店に来ていた。

「それなりに・・・ところで、彼女はいつ?」

「多分、そろそろだと・・・。6時過ぎに事務所を出ると言っていましたから。確かここまで地下鉄で5,6駅なはずだから・・・」

私の言葉に目を細める敦賀蓮の表情には、懐かしい・・・待ち遠しい・・・そんな気持ちがハッキリと示されている。

(実は結構、仲が良かったみたいだな・・・)

「学生時代にウチの最上がお世話になったようですね?有り難うございます。私がお礼を言うのはおかしいかもしれませんが、我が社では社員を家族のように思っていまして・・・」

愛する弟の忘れ形見が世話になった人物であれば、一言お礼を言っておきたかった。それが、まさか・・・

「・・・私の家族、と言えばいいじゃないですか。キョーコはあなたの実の姪でしょう?」

「!?」

驚きで声が出ない。何故、それを・・・。

「実はね、俺とキョーコは昔、付き合っていたんです。だから聞いてるんですよ・・・彼女の父親が、貴方の弟だと言う事・・・」

「そ、それは・・・」
(キョーコちゃん!?伯父さんは聞いてないよっ!!)

----これが『娘が初めて彼氏を連れて来たときの父親の衝撃』!!!

敦賀蓮の態度が急に変わったことも気になったけれど、キョーコちゃんは清らかな「乙女」だと信じて疑っていなかった私は、動転してしまっていた。
キョーコちゃんがこの男と!?

(東京になんてやるんじゃなかった!!)

「付き合っていたのを知っててキョーコを呼んだんじゃなかったんだ・・・そうか・・・良かった」

何が「良かった」のか、訳が分らない。そして、何故、唐突に今になってこの話を始めたのかも分らない。

「単刀直入に言いましょう。俺は彼女とヨリを戻したい。そして不破自動車、つまり不破家とキョーコの縁を切りたい。・・・貴方とキョーコが会うのは、今夜が最後だと思って下さい」

「・・・はぁ!?」

あまりに予想外の内容・・・敦賀蓮が放った言葉が信じられなかった。

「何を、自分が言ったか分ってるのか・・・?・・・もし、酔っているとしても・・・性質が悪すぎる・・・」

「俺はこれしきの酒じゃ酔わないですよ?
 もし、どちらか1つでも叶わないなら・・・俺は即刻、不破自動車を訴えます。本気です」

焦点の合った視線が、彼が素面であると告げている。

どうゆう経緯で2人が付き合うことになって・・・別れたのかは分らない。でも、今の言葉で1つ確信できたのは、この男は「傲慢無礼」ということだ。きっと初心なキョーコちゃんをこいつが唆して・・・正義感の強い彼女の事だ、この男がろくでもない野郎だと気付いて、即刻別れたのだろう。

「若造が・・・こちらが下手に出ていれば付け上がって・・・キョーコちゃんは私の娘も同然だ。絶対に、お前の様な下衆な人間には渡さないっ!今回の件、全面的に戦わせて貰う!」

例え不利な裁判になっても・・・最悪、FF-86のボディの設計をやり直せばいい。それに外形がベストではなくても、FF-86には、不破自動車が巨費を投じて開発した回生ブレーキとバッテリー技術が詰め込まれている。それだけでも、十分に素晴らしい車なのだ。

「えらい剣幕だ・・・ははっ」

敦賀蓮は・・・優雅に日本酒の杯を口元に運んで・・・笑っている!?

「貴様、何がおかしい・・・」

凄みを効かせているつもりなのに「絶対に敵に回してはいけない」敦賀蓮への第一印象が、警笛めいたもの鳴らし始める。

「あぁ、本当に良かった・・・」

何がだ、と聞く前に私の声は遮られる。

「貴方がね、不破自動車の利益を守るために、ほいほいとキョーコを俺に差し出すようなら・・・不破自動車なんて潰してしまおうと思っていましたから。流石にそれは、キョーコの悲しみが深くなる」

激してはいけないと思いつつも、頭の芯が熱くなるのを感じた。

「そんな事、出来ると思っているのか・・・?」

不破自動車は日本最大の企業、世界最大の自動車メーカーだ。小さなソフトウェアハウスにどうこう出来るはずがない。

(こいつ、頭がおかしいのか?)

思わず、そう疑ってしまう。けれども、

「とりえず、これをどうぞ?」

そう言って、差し出されたA4サイズのレポートのタイトルをみて、ドクリ、と心臓が収縮する。そして内容を読み進める内に「この男を敵に回すな!服従しろ!」という声がクリアに聞こえた気がした。

「こ、これは・・・」

「そう、不破にとったらRT-Flowなんて小さな問題でしょう?俺が、そんな事で不破自動車の屋台骨を揺るがそうと勘違いしていると思われたなんて・・・心外だな・・・」

「・・・」

言葉が出ない。

「キョーコが来たら、俺の元に来るよう言ってください。そして2度と不破家に戻る気が起こらないよう彼女を傷つけて下さい。彼女の事は心配しなくていい・・・俺が優しく慰めますから。傷つける方法は貴方にお任せしますよ?」

眉目秀麗の発する言葉がなんと醜悪なのだろう・・・。

「ノーと言えば・・・この技術も、そして生み出された物を使うための技術も、不破の関連企業だけは使えないようにします」

渡されたレポートには「藻類バイオマスエネルギーに関する新展開」というタイトルが付いていて、関連特許と周辺技術、そして世界的権威「Nature」誌に発表された論文が添付されていた。論文には、新しく見つかった藻類が生み出す油の最終コストが原油のそれを下回ったと書いてある。

そして・・・それらを独占開発する企業、その株の90%を敦賀蓮が保有していると記載されていた。

藻類バイオマス・・・海に住む「藻」を使って油を作る・・・これが有望であると言う事は小耳に挟んでいた。不破自動車も、将来、穀類由来も含め、バイオ燃料で車を動かす事を想定し、精製方法や対応するエンジンの研究を進めていたけれど・・・。

これは車だけじゃない。不破重工の重要な産業の1つ、火力発電プラントに使う事ができれば・・・。

(世界を変える事ができる技術を・・・この男が握ってる?)

「イエスと言えば、貴方が長きに渡ってキョーコを慈しんでくれた事に感謝を込めて・・・誠意ある対応をしましょう」

まるで、悪魔の囁きだった。

「経産の役人に泣きついても無駄ですよ?この他にもカードはあるんだ・・・俺の機嫌を損ねたら、カードの1枚を中国に渡してしまう・・・そう言い含めておいたから彼らは動かない・・・」

霞が関に話を通してある!? あまりの事に愕然とする。

「どのみち、キョーコは俺の元に来ることになるんだ。不破家に後ろ髪を引かれる思いを残して・・・俺の不興を買うより、不破当主に「追い出され」何も知らずに俺に慰められる方が・・・彼女の為でしょう?」

----信じられない。信じたくない。なんて悪夢・・・であって欲しい・・・。

「RT-Flowはね・・・描画ルーチンだけJavaを使ってるんです・・・逆コンパイルしやすいように。普通はね、逆コンパイルしても変数名が分らないから変更を加えるなんて無理なんですよ?意味、わかります?」

「・・・まさか・・・わざと?」

実は、不破さんの所だけね?と、目の前で微笑む男・・・

(魔王・・・)

そう思わずにはいられなかった。きっとRT-Flowだけじゃない。色々な罠が周到に用意されている・・・カードは他にもある、と彼が言ったじゃないか・・・。

(キョーコちゃん・・・)

可愛い姪っ子の顔がよぎる。弟に良く似た愛しい笑顔。

「心配しなくても良いです。俺はもう彼女を傷つけない。傷つけるのは・・・貴方だ・・・でも、彼女を傷つけてもらう対価は必ず支払われる・・・約束します」

誠実さすら感じられる優しい口調。悪魔の囁きとはそうゆうものだと思うのに、縋りつきたくなってしまう・・・。私は黙ったまま・・・敦賀蓮の射るような視線を避けるため、俯くしかなかった。

「おっ、お待たせしました!」

その沈黙を破ったのは、何も知らない子羊。

「れ、つ、敦賀先輩!お久しぶりです!!」

私は、反射的に顔をあげて・・・自分の見た光景に唖然とする。

(え・・・!? どうゆう事だ!?)





対決したのは不破(父)と蓮さんでした。蓮様黒いですね。さて、不破(父)は何を見たのでしょうか・・・?
藻類バイオマス、原油価格を下回るまでもうちょっと。第一人者は日本人なんですけど、見事な程にスルーされているのが・・・

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プロフィール

Agren

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



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