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LOVE PHANTOM(5)

SIDE  不破自動車社長

キョーコちゃんが『敦賀蓮』氏は容姿に恵まれている、と言っていた。

(まさか・・・これ程とは・・・)

案内されたSTARK社の社長室。そこで待っていたのは、日本人離れした均整のとれた長身に、彫りの深い顔立ちをした青年だった。理知的で涼しげな目元がとても印象的な男。

(こんな美形、今まで出会ったことがない)

仕事柄、パーティー等で男優やアイドルに会う事があった。それに、親の欲目を差し引いてみても、自分の息子も相当綺麗な顔をしていると思っていたけれど・・・目の前の男は根本的に造作が違う、と感じる。まさに神の作品と言うべき美しさは、何かこう・・・人間離れしている。

そこでふと、キョーコちゃんが敦賀蓮の特徴として、第一に「頭の良さ」を挙げた事を思い出す。つまり・・・敦賀蓮の「頭脳」は、この賛嘆するしかない「美貌」を超えるインパクトを持つということだ。

私は、ぞくっ、と背筋が震えるのを感じた。

(敵に回したくない・・・)

世の中には、絶対に敵に回してはいけない人間がいる。この敦賀蓮という人物はそうゆう人間の一人だ、と、私は理解した。そうして、目の前の男に対し、怖れに近い感覚を覚える。しかし、、

「まさか、こんなにも早く・・・不破社長ご自身が来られるとは思いませんでした・・・」

形の良い薄い唇から響く声は優しげで、口元に柔らかい微笑を浮かべる様は、まるで春の日差しを纏っているかのようだった。

「始めまして、STARK社の敦賀蓮です」

そう言って握手を求められる。しっかりと握られた手からは、訪問への労いと、歓迎の意思しか伝わってこない。その様子に、私は彼が自分の来訪を喜んでいるかのような錯覚を覚える。

(いや・・・それは違うな。あんな内容証明を送ってよこした後でそんなはずがない)

「・・・まずは、こちらに御座り下さい」

つい、と長い腕が空間を切ってソファを差し、彼自身もそちらに向かって歩き出す。その所作がなんとも優雅で一瞬、目が奪われてしまうけれど、私は気を引き締めて、勧められたソファには座らず、先ず頭を下げた。

「今回の件、弊社が一方的に貴社の利益を侵害したと理解しています。それに対して心からのお詫びと誠意ある補償をさせて頂くために、参上しました」

「そうですか・・・」

相変わらず、穏やかな声で返事が返ってきた。


***


かれこれ30分以上、話しが続いている。

意外な事に、敦賀蓮は私を前に、不破自動車の歴代のスポーツカーの特徴とその長所をつらつらと話し出した。その様子が少年の様に楽しげで、いつの間にか、私も開発秘話などを交えながら会話を楽しんでいた。

「・・・スーぺリオは傑作だと思うんですよ?結局は、ポルシェを買ってしまいましたが、最後までどちらを買おうか、迷いましたから」

「どうして、ポルシェにしたか理由を聞いても?」

「・・・最後の決め手は、やはり「速さ」でしょうか。
ポルシェの外見は、正直カエルみたいだと思う事もあったし、ドイツと違って、日本にはアウトバーン(*1)がある訳じゃないので、拘っても仕方が無いのですが・・・走るために生まれた機械に「速くあれ」そう考える哲学に惹かれたんです」

敦賀蓮は「僕がもう少し面食いなら・・・絶対にスーぺリオを選びましたけれどね」と微笑んでいる。

「あぁ・・・でも、FF-86とポルシェだったら、FF-86ですね・・・」

「!?・・・意外な、選択ですね」

この社長室に置いてある・・・洒落た、特徴のあるファニュチャーは・・・多分「ヴァイトラ」で揃えているのだろう。ヨーロッパ最強と謳われるデザイナーズブランドに囲まれる事を好むような男が、ポルシェより、FF-86のような価格の安い大衆車を好むとは・・・信じ難かった。私の疑いの視線を感じたのか、敦賀蓮がFF-86に賞賛を送り始める。

「FF-86・・・凄く僕好みですよ?
走りに拘っているのに、エネルギー効率が良くて・・・全てを前に進むために使う・・・意思の強さの様なものが、あの流麗なスレンダーボディに宿っていると思うと、そそられますよ・・・?

男なら・・・一度は乗ってみたいと思うでしょう? アクセルを思い切り踏み込んだら、どんな風にエンジンが啼くのか・・・俺のドライビングテクニックに、どこまで応えてイッてくてるのか・・・ギリギリまで無理をさせてみたい・・・ あぁ・・・『彼女』に乗る日が待ち遠しいな・・・」

(な、んだ? 急に雰囲気が変わった・・・? )

自分の愛車を「彼女」に例えるには良くあることだ。英語では、車や舟の代名詞に「It」ではなくて「She」が良く使われるのは周知の事実。なのに、妙な間・・・そして息遣いに、欲情のようなものを感じてドギマギしてしまう。

「待ち遠しい・・・と言う事は、予約を入れて下さったんですか?」

私は自分が何のためにここに来たのか、再度自分に言い聞かせ平静を装う。

「ええ、もちろん!」

肯定の言葉に安堵する。キョーコちゃんが、敦賀蓮は不破自動車が再度スポーツカーを作る事を望んでいるから、FF-86の販売を遅らせるような対応はしないはず、と言った事が思い出される。

「それは、光栄です。ちなみに、グレードとカラーは何を選ばれたんですか?」

当たり障りのない、FF-86を予約した自分の姪と同じ質問をしてみる。

「スポーツタイプの・・・ピンクです」

「え!?」

「・・・雑談はこれ位にして、そろそろ本題に入りましょうか?不破社長・・・」

敦賀蓮の雰囲気が、また柔和な紳士と呼ぶべきものに戻り・・・私は、短く1つ息を吐いて緊張を解いた。

(それにしても、ピンク・・・?)

意外な答えだったけれど、この男なら何色でも似合う、そんな気がした。


***


STARK社が、流体解析ソフトの売買契約を不正使用があった日付まで遡って結んでくれるという。
そのために、不破自動車が応えなければならない条件は唯1つ。

----FF-86のカラー変更だった

発売予定のピンクをもっと紫や赤に近い色か、茶色に近い色に変更する事。そして、彼以外の予約の全てにその変更を了承させる事。
つまり、現在カタログにラインアップされているピンクは敦賀蓮の車だけに使うこと、という。

「分かりました。やらせて頂きましょう」

なんとも奇妙な要求だけれども、それ程、難しい事ではない。ピンクは「不人気色」で、予約車数は僅かだったはずだ。その変更だけで、不破自動車が抱えるRT-Flowの問題が解決するだけでなく、不破重工など、関連企業にもRT-Flowを売ってくれると、敦賀蓮が言う。

(何故そんなことを?)とは思うけれど、不要な質問をして、思わぬ藪蛇を誘い出す愚を犯すべきではない、と思う。

「有難うございます。これで契約成立ですね?まだ口約束の段階ですけれども・・・」

----口約束・・・

つまり、こちらがやるべき事をやらなければ、売買契約は結ばない、と言っている訳で・・・。それに、万が一にも気が変わる事もあり得る、ということを示しているのだろうか。

ああ、そういえば、敦賀蓮がぽそりと、思い出したように呟いた。

「『彼女』のカラーも、今のピンクのままで良いですよ?」

何となく、誰の、という予感はあったものの、とりあえず、聞いてみる。

「・・・『彼女』とは?」

「あなたの所の、ピンクのスーペリオを乗りこなしている女性・・・後輩、なんですよ?」

事前に、彼女から敦賀蓮について聞いていた事は、あまり話さない方が良いかな?と思う。

「それなら「最上さん」の事ですね?」

「ええ、彼女・・・きっとFF-86の予約を入れているでしょう・・・ピンクで」

「・・・おっしゃる通りです」

「可愛い後輩から、あのピンク色を取り上げる程、僕は無粋ではないですからね。あぁ・・・懐かしいな、会いたくなってしまった。彼女、元気ですか?」

「元気ですよ?・・・親しかったんですか?」

一瞬、敦賀蓮の目が、スウ、と細められた様な気がしたけれど、それ以外に特段変わった様子もなく会話が続いたので、気のせいかと思う。

「ええ、それなりに。自動車部に女性は珍しかったですからね。『ピンクのスポーツカー』ってあだ名で呼ばれて・・・僕だけじゃなく、皆に可愛がられていましたよ?」

RT-FLOWの正規ライセンスを取得するまでは、敦賀蓮の「ご機嫌」を取っておかなければならないと思う。だから、ひとつ、彼に提案をしてみた。

「今夜、私と一緒に食事でもいかがですか?その席に・・・宜しかったら、最上さんも呼びましょう・・・」

彼がキョーコちゃんに会いたいというのなら・・・



1 アウトバーン ポルシェの故郷ドイツの高速道路。速度制限無し。

次回、ついに対決!?

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プロフィール

Agren

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



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