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LOVE PHANTOM(4)

SIDE REN

俺は新宿のインテリアショップに来ている。

自宅ではプログラミングをしない主義だったけれど、そうも言っていられない状況になっていて・・・自宅用のPCデスクと椅子が必要になった。

(やっぱり「ヴァイトラ」のデザインは良いな・・・)

会社で使っているのと同じブランドの机とイスを注文し、店を出る。

俺は応用数理を専門としていた。
熱の流れ、水の流れ、力の釣り合い----様々な物理現象は「微分方程式」で予測する事ができる。しかし、人間が計算用紙を何百枚と使っても、答えを求められる問題は殆どなくて。答えを得るためには、某大な繰り返し計算をコンピュータの力を借りて行わなければならない。

俺は「速度と精度」を両立させながら、微分方程式をコンピュータで解く事に興味を持っていた。そして、キョーコと別れてから・・・彼女の事を忘れるために、その研究に没頭していった。

すると、東都大のTLO(技術移転機関:大学の優れた研究成果を産業界に紹介する機関)が俺の研究に目を付け「成果を商用ソフトにしませんか?」と話を持ちかけて来た。最初、俺のアイディアを既存ソフトの開発会社へ有償譲渡する、という形で話は進められていたが、俺は提示額の低さと・・・何より、

(本当に、俺のアルゴリズムを理解できるのか?)

と疑いたくなるような相手の飲み込みの悪さに辟易し、声を掛けてきた東都大TLOの社さんの協力を得て、自らベンチャー企業を立ち上げた。会社経営は順風満帆。俺は次々に浮かぶアイディアを形にするのに夢中だったのに・・・最近、どうも調子が出ない。

コンピュータープログラムの基本は「分岐」と「繰返し」。そして「天才」と言われる俺は・・・集中力が高まると・・・方程式を効率よく解くための「分岐」と「繰返し」が複雑に絡み合った「立体プログラムイメージ」が勝手に浮かび上がる。そして、一度プログラムイメージが出来上がると、いつでも好きな時にそれを呼び出して、テキスト化することができたのだ。

----今までは。

最近は・・・せっかくのイメージが勝手に上書きされて無くなってしまう事があって、仕事の効率がガクンと落ちてしまっていた。それでも社さんに、

『・・・化け物め』

と言わせる程、常軌を逸した才能らしい。
俺は、出来た事が出来なくなったのが歯がゆくて、とりあえず、自宅に寛いでいる時でも、プログラムイメージが湧いたら直ぐにプログラミング作業に取り掛かる事にしたのだ。

(こんな事・・・初めてだ・・・)

インテリアショップを後にし、地下鉄の駅に向かって歩きながら考える。

(どうすればいいんだ・・・?)

最近、俺の頭の中からプログラムイメージが消えてしまう理由・・・それは明らかで・・・気がつくと「元恋人」の立体イメージを作り上げているのだ。

(思い出は美化される、ってやつか・・・ホント、こんな事、初めてだ・・・)

今まで、別れた彼女の事はもちろん、進行形で付き合っている彼女がいたとしても、こんな事なかった。なのに「最上キョーコ」に関しては、別れて随分経ったというのに、その姿を思い出してしまう。

(しかも頻度が増えているし・・・イメージも鮮明さを増してないか?)

高精度の3Dイメージを何度も構築すれば、記憶領域が容量オーバーする事もあるよな・・・と思う。彼女のイメージが・・・亡霊のように俺に付き纏って離れてくれない。

(原因は分かっていても対策が分からない。ふと、気が付くとやってる、んだ・・・)

もうすぐクリスマスで・・・街は浮足立って踊りだしそうな雰囲気なのに・・・俺は、はぁ、と溜息をもらしながら、とぼとぼ、と足取りも重く街を歩き続ける。

すると・・・見覚えあるピンク色が目の前の道路を通り過ぎていった。

(・・・・・スーペリオ!?・・・)

忘れようがない・・・彼女の愛車、ピンクのスーぺリオ。俺は、信号待ちで止まってるそれに、ふらり、と後ろから近づいていく。

(名古屋ナンバー18-XX・・・彼女のだ・・・)

最近、俺の頭の中の大事なプログラムイメージを勝手に上書きしてしまう「元恋人」の立体イメージ。その「オリジナル」がすぐそこに居るかもしれない、と思うと、俺は何か見えない力に押し戻されているように、それ以上動けなくなってしまう。

(偶然・・・彼女に街で出会う確率はどれ位だろう?)

俺は訳もなく試算を始める。俺たちは東京23区内のどこかに居ると仮定する。23区は・・・約800万人の人間が約600Km2の面積の中に住んでいて・・・そして、俺は100m離れた場所にいても彼女が見付ける事ができるとすると・・・

(偶然出会う確率はざっくり100万分の1)

現実には、2人が同時に存在し得る場所は「公共の場」に限られているけれど、1日24時間の内、公共の場にいる時間帯が重なるのは・・・1時間あるだろうか。それぞれの項は相殺できるとして・・・

(駄目だ、駄目だ、止めた!)

確率論は、彼女に出会う「運命の日」が今日なのか100万日後なのか教えてくれない。例えどんなに確率が低くても、彼女に関する事は絶妙なタイミングで起こってしまう。非科学的だとは思うけれど、そうとしか・・・思えなかった。

信号が変わりゆっくりとスーぺリオが動き出す。

(・・・あっ・・・)

俺は、思わず駆け出して追いかけた。スーぺリオは直ぐ先の交差点を曲がり・・・その瞬間、車の運転手・・・少し髪が伸びたキョーコが見えた。

(人を愛するって・・・こうゆう事だったんだ・・・)

俺は突然、気付いてしまった。それと同時に、最上キョーコは確かに存在している、という事実に奇妙な喜びを感じる。そう、最上キョーコは確かにこの世に存在する。空虚な幻でも、ましてや亡霊なんかじゃない。ちゃんと呼吸をし、温かな体を持ち・・・存在している。

『もう君には付き合いきれないっ・・・』

あの時、俺は「彼女が欲しい」という単純な気持ちを押し殺して、紳士面をして、勝手に彼女に裏切られた気になっていた。

(もっと、シンプルに欲をさらけ出せば良かったんだ)

もう形振りに構うのはやめる。だから手始めに、俺は小さな罠を張った。相手が掛かる確率は低いけれど、

----きっと、彼女と俺に関する事は、どんなに小さな確率でも・・・絶妙なタイミングで起こる。

そうして、俺の予感は現実の物となった。

「蓮・・・不破自動車の社長が会いたいって・・・どうする?」

自分のデスクに腰掛けて・・・一昨年の偶然・・・いや・・・運命の日、の事を思い出していた俺に、社さんが声を掛けてきた。

「『お待ちしていました』と伝えてください・・・」

俺は、自分でも驚くほど穏やかな気持ちで、来訪を歓迎する意思を伝えた。




何だか、紙一重な蓮さんです。薄暗い・・・

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プロフィール

Agren

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



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