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LOVE PHANTOM(1)

落ち着いたトーンのパラレルのお話です。「後悔先に立たず」のような本誌設定の明るい話が読みたい方の御期待には添えませんが、最終的にはハッピーエンドにはなりますので、その点は御安心下さい。今回も視点固定タイプのままです。



SIDE SHOTARO

車を「便利な道具」として認識する人間が増えた。

それにつれ「走り」を楽しむ為の車、いわゆるスポーツカーの売り上げは減少、業界最大手の不破自動車も2002年まで販売していた「スーペリオ」を最後にスポーツカーの開発を中止していた。

それから月日が流れ・・・不破自動車は満を持してスポーツカーの開発を再開、ついに完成した次世代スポーツカー:FF-86の販売は半年後に迫っていた。製造ラインも完成し、購入予約数も予想以上に伸びている。

「楽しみだね、ショーちゃん」

FF-86の模型を眺めていた俺に、幼馴染にして不破自動車の顧問弁護士、最上キョーコが声を掛けてくる。コイツの母親---不破自動車の社内弁護士だった---が昼夜を問わず働く人間だったため、キョーコは生まれた時から俺の家に預けられ、俺達は兄妹みたいに育てられた。

実は・・・キョーコの父親は、俺の親父の亡くなった弟だったから、こいつは俺の従妹になる。でも、それは極限られた人間だけが知る秘密で・・・表向きは、俺の母親がキョーコの母親の親友だったから子供を預かっていた、という事になっている。

「まぁな・・・予約、結構入ってんだぜ?」

FF-86の好調な滑り出しの予感に誇らしい気持ちになる。
俺はずっと、スポーツカー開発の必要性を訴えていた。近年、若者が車を買わなくなった事が業界で問題視されていたけれど・・・それは、

----欲しい、と思える車が、買える、と思える値段で、売られていないからだ

と思っていた。例えば、ライバル会社のGT-Lはとても魅力的だ。けれども、オプション無しのエントリークラスで800万円以上もするような車では・・・まず若者には買えない。だからこそ、200万円台から買えて燃費も良い、それでいて「走り」と「外観」に妥協が無い車を作りたい。その想いからFF-86が生まれた。それに何より、

----業界のトップである不破自動車がスポーツカーを造らない、そんなのは『格好悪すぎる』だろう?

そうして、間もなく俺が不破自動車に入って、最初に関わったプロジェクトが世に是非を問われる。
例え短期的には採算が取れなくても・・・若者が運転を楽しいと感じる車を造ることは・・・将来的にペイするだろう。俺だけじゃなく、不破自動車幹部もFF-86に関しては過度の期待をせず長い目で見よう、そう思っていた。それでも、予約が殺到している状況に喜びと期待が湧き上がる。

「ふふ、実は・・・私も予約を入れたんだ」

「は?予約を入れた!?」

FF-86を予約したという言葉に・・・俺は驚いて、聞き返してしまう。
キョーコには免許を取って以来、大事に乗っている「スーペリオ」がある。元々が堅牢な作りな上、最近コーテングをし直したアレは相変わらず新車と変わらない走りとルックスを維持していた。

「うん」

「スーペリオを乗り換えるのか?」

「まさか!あれはセカンドカーとして、ずっと大事に乗るよ?スーペリオとFF-86は全然違うから代わりにならないし!!」

確かに、不破自動車のフラグシップ・スポーツカーだったスーペリオは、例えるならグラマラスな愛人のような車。外見はセクシーで乗り心地は最高。どんな速度からでもアクセルをひとたび踏込めば即応でしびれるような加速を返してくる・・・燃費は最悪だけど、一度「ハマる」と手放せない。

一方、今度のFF-86は才色兼備の本妻タイプ。スタイルはスレンダーだけれども申し分なく美しく、スーペリオのような派手さはないけれど、スポーツカーとして十分な加速性能を誇る。
それに加えて、不破自動車が巨費を投じて開発してきた高容量低価格のコバルトレス・リチウムイオンバッテリーと、急激な減速に対しても効率よくエネルギーを回収する新システムも搭載していて・・・条件が整えば燃費はリッター20Kmを超えることができる。

俺は不意に「才色兼備」・・・その言葉から、FF-86は、まるでキョーコのようだ、と思った。それなのに、

「車好きが高じて・・・2台持ちかよ。もっと若いオンナらしく色気のある事に金を使えばいいのに・・・ったくお前は、しょーがねーなー」

つい憎まれ口のような台詞を吐いてしまう。
素材は良いのに・・・キョーコは司法試験の勉強を本格的に始めた頃から、身なりに構わなくなってしまって。今日だって、化粧っ気はないわ、いつものねずみ色のパンツスーツだわ。まぁ、それでも十分、綺麗なんだけど。

「余計なお世話です~。あっ!もうこんな時間!!そろそろ法務部に行かなくちゃ!じゃぁ、夕食でね!!」

「おう、お袋も親父も、お前に会うのを楽しみにしてるぞ!」

キョーコは俺のオフィスをバタバタと出て行った。普段は東京の法律事務所で働いているキョーコは、社内で何か問題が起こると名古屋に帰ってくる。

今回は、不破自動車の法務部に届いた一通の内容証明の郵便が問題になっているらしい。何でも、FF-86の開発の時に・・・ソフトウェアの不正使用をやらかして・・・それを指摘する内容の文章が届いたそうだ。

「ったく、開発費をケチる必要は無いと言ったのに・・・違法コピーのソフトでも使ったか?」

この時、俺は、この不正使用の問題を軽く考えていて。
実はFF-86が販売延期に追い込まれるような大問題だとは・・・想像すらしていなかった。




という感じで。松太郎:不破自動車の御曹司、キョコさん:松とイトコ設定で弁護士&車好き。蓮さんの設定は次回登場。

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プロフィール

Agren

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



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