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後悔先に立たず(番外3)

番外編はこれで終わりです。
番外3 新婦の災難


キョーコは六本木のHホテルからタクシーに乗り込み、赤坂のTBMテレビに向かっていた。

「SWING-BY」の最終回放送を直前に控え、『王子様のブランチ』という情報バラエティ番組に出演し、番宣をするために。

その番組は、放送中のTVドラマや最近流行りの本や映画、グルメの紹介をするTBMの長寿番組の一つで、人気も高い。その本番を前に、

(ま、まずいわ。かなり、まずいわ)

キョーコは狼狽していた。朝から・・・『王子様』というキーワードを聞くと、メルヘン国へ旅立ってしまう自分に気付いていたから。

(しっかりしないとキョーコ!!王子様なんてこの世にいないのよ!!)

確かにヨーロッパに王家は存続しているけれど・・・いやいや、今はそんなの関係ないから!!と、自分を叱咤するものの、頭の中には、ほわわ~ん、と先ほど別れたクオンの甘やかな神々スマイルと「キョーコ姫」と自分を呼ぶ蜂蜜ヴォイスがこだましていた。

「はぅ~ん、王子様~」

ご丁寧な事に、キョーコの妄想の中では、王様に扮したクー・ヒズリとジュリエナ王妃がクオンの側にいて皆が「「「キョーコ姫」」」と、やさしく手招きをしている。

「キョーコが今参ります~」

そうしてドレスの裾を掴むような仕草でポーズを決めて十数秒。キョーコは、タクシー運転手の脅える眼差しに気付いて、はっ、と我に返った。

(あぁ~~~!しっかりしないと!「(ピー)のブランチ」は、生放送なのよ!メルヘン国に旅立っている場合じゃないのよ~~~!!)

身悶えながら、必死に自分の気持ちを立て直す。自分の「メルヘン思考」がどうすれば抑えられるのか・・・朝からずっと気を逸らそうと努力しているのに、あまり効果が上がらない事にいっそ腹を立て始めた。

(よりにも寄って、どうして「(ピー)のブランチ」なんてタイトルなのよ!!)

どうしたらNGワードをタイトルとする番組でNGワードを意識しないで済むのか。

(そうよっ!!私がこれから出演するのは、『玉子(たまご)様のブランチ』であって、決して、(ピー)のブランチじゃ無いのよ!!)

キョーコは結局、少々無理やりな言葉の置き換えをすることで、なんとか平常心を徐々に取り戻していた。


***


「SWING-BY」の「これまでのあらすじ」を紹介するVTRの再生が終わる。

レギュラー陣が、(私も見てます)とか、(どこそこのシーンが良かった)など感想を言い、それに対して、キョーコと監督が間の手を入れ・・・王子様のブランチの話題のドラマコーナーは和やかに進行していた。そうこうする内に、数分の雑談が終わり、

「・・・最後に、SWING-BYの見どころは?」

司会者がコーナーの纏めに入る。

「ノリコがフロリダの宇宙センターに辿り着いて、それまでの人生を回想する長い独白シーンは圧巻ですね。宇宙に対する熱い想いを語り口が本当に素晴らしくて・・・夢を持った事のある人間なら必ず胸が熱くなるというか・・・共感して頂けると思います」

監督がキョーコを見ながら、その演技を褒めちぎる。

「/// 監督・・・ありがとうございます。
今回の海外ロケで初めてスペースシャトルの発射台を見たときには、私も本当に胸が高鳴って仕方が無くて・・・少しはノリコの気持ちが掴めていたと思いますので、皆さんに共感して頂ければ嬉しいです!」

「SWING-BYの最終回は来週の火曜日夜9時からです!お楽しみに!」

キョーコと監督を映しているカメラのライトが消え、司会者達にカットが切り替わった事が知らされる。

「さて、次のコーナーは・・・現在公開中の映画興業ランキングでーす!」

司会が間髪入れず、次のコーナーの紹介を始めた。目の前のディスプレイには、現在、視聴者が見ているVTRが再生され、現在のスタジオの様子は放送されていない事が分かる。

「京子ちゃん、お疲れ様。あとは話を振られたら適当に相槌を打てばいいだけだから」

監督がそっとキョーコに小声で言葉をかける。

「はい、監督もお疲れ様です」

そう挨拶を返す、キョーコの心は晴れやかだった。

(頑張ったわね、キョーコ。今日は自分で自分を褒めてあげたい!)

問題無く番宣が終了し、キョーコは心から、ほっと一息ついていた。しかし、映画コーナーを担当する「リリカ」の声で、またもやキョーコの心の平安が破られる。

「今週のPICK-UPは、本日公開予定の敦賀蓮さんが出演した映画「エクセプション」でーす!」

キョーコの心臓が一瞬とまり・・・ドクンと大きく波打った。

(おおお、落ち着いてキョーコ。ここに居る人達は、だれも敦賀さんと私の事を・・・や!今は彼の事を考えるのは危険!とにかく、無心・・・ここは、生放送中のスタジオなのよ!!)

キョーコは「NGワード」の攻略に気を取られていて、今日の映画のPICK-UPコーナーで蓮の出演作品が取り扱われる事に気が回っていなかった。いきなり一難去ってまた一難の状況にキョーコは動揺するのを止められない。それなのに、容赦なくリリカが、

「敦賀さんもこれでハリウッド三作目の出演ですよね~!私も大ファンで~!アメリカでも人気急上昇中なんです! そういえば京子ちゃんは、事務所の後輩なんですよね?」

キョーコに話を振ってくる。心臓は痛みを感じるほど早鐘を打っていたけれど、それでもなんとか、

「はっ、はい。俳優としてとても尊敬できる方で、私も目標にさせて頂いている方の一人です!」

手に汗を握りながら返事をかえした。リリカは、それ以上キョーコに話を振る事はなく、他の出演者と会話をしながら映画の紹介を続けていく・・・。

(平常心、平常心・・・)

キョーコが高ぶった神経をなんとか沈静化させようと努力していた時、

「では今回「エクセプション」の素敵な出演者に特別インタビューをしてきました!VTRどうぞ~」

目の前のVTRモニターにリリコと・・・微笑を湛えた「久遠・ヒズリ」が映し出され・・・キョーコはその瞬間、雷に打たれたような衝撃と共に

---- メルヘン国に向かって旅立ってしまった。


***


「当たり前ですよ~、クオンは私の王子様なんですから~!きゃ~///」

いきなり飛び出した、その場にそぐわないキョーコの言葉にスタジオ中の人間が彼女に怪訝な顔を向ける。

そこには・・・先程までスマートな受け答えをしていた演技派女優ではなく、目がウルウル&キラキラに輝いた、もし人間にオーラと言うものがあるならば、間違いなくピンク色であろう・・・「京子」が座っていた。

キョーコの急変ぶりに隣に座っている監督も戸惑いを隠せない。

クオンの来日は、クオン初出演&敦賀蓮のハリウッド進出三作目の映画の公開に合わせての事。キョーコも昨夜までは、それをちゃんと理解していたし、「王子様のブランチ」でクオンのVTRが流れる事も分っていた。でも、昨夜から色々な事がありすぎて・・・そして、今朝のクオンの王子様攻撃の命中、そしてNGワード攻略への熱中、すっかり、クオンVTRの事が頭から抜け落ちていた。

そうして、不意に遭遇してしまったクオンの笑顔に・・・キョーコは本番中だというのにメルヘン王国に迷い込んでしまい・・・VTRが終わって、リリカが「久遠・ヒズリ」が 『とびっきり美形の紳士』 だったと絶賛するのに対して、キョーコは、先の台詞を吐いてしまった訳で・・・。

「京子ちゃん?確かに彼は王子役とかいかにも似合いそうだけど・・・」

「お城を貸し切って結婚式を挙げようね、って。きゃ~///」

もし、ここにビーグルのレイノがいたなら、キョーコの周りに飛びまわる「ピュアキョ」の群れにうんざりしたに違いない。俺が求めていたのは、こんなモノを侍らす女ではないのだ、と。

「私はプリンセスラインのウエディングドレスを着て、クオンには白いモーニングを着て貰うの~、絶対!絶対!!素敵~、きゃ~///」

「京子ちゃん!?どうしたの!?」

キョーコは隣に座っていた監督に肩を強く叩かれ、はっ、我に返る。恐る恐るスタジオを見渡すと・・・監督だけではない、スタジオ中の誰もがキョーコを、困惑だけでない、唖然、茫然、嘲笑・・・様々な表情を浮かべて見ている。

(ままま、まずいわ。わわわ、私、メルヘン国に行ってしまっていたわ~!!)

---- クオンのVTRが始まってからの記憶がない!!!!

キョーコは周囲を見渡して、絶望的な気分を味わっていた。

「す、すみません」

必死に言葉を捩じり出す。すると、進行役のリリカがその場を収集しようと、

「えっと、京子ちゃん、彼と結婚したいなんて・・・私と一緒でかなり面食いねぇ~?」

何とかフォローを試みる。しかし、記憶の無いキョーコにはそれが、フォローではなく追及に思えてしまい、動揺は激しくなるばかり。

(----とにかく否定しないと!!)

「わ、私、け、決して、クオンと結婚なんてしてませんよ?」

「え~?さっき乙女チックに語ってたわよ~?妙に具体的で・・・」

「抽象的です!すっごくアバウトです!!」

「だって・・・」

「実は幼馴染のクオンにアメリカロケで再会して、遠距離恋愛中で・・・結婚はその内にしようねって、具体的な事は何も決めていなかったんです!!」

(((((・・・・・・・・・・・・え?・・・・・・・・・・)))))

キョーコの爆弾発言に「王子様のブランチ」の収録スタジオは静まりかえっていた。

「君は・・・敦賀君じゃなかったの?」

キョーコの隣に居た監督が、すっかりここがスタジオだと言う事を忘れて声を掛けてくる。つい数週間前のフロリダロケで、キョーコが蓮への想いを告白した映像をLEMの社長の所に持ち込んだ彼は、キョーコの想いに胸を打たれていた。だからこそ、クオンとの関係を仄めかすキョーコの言葉が信じられなくて、つい・・・確認してしまったのだ。

キョーコは、遂に自分の居場所を忘れ(つつつ、敦賀さんの名前がどうしてここに!?)と、パニックに陥ってしまった。

「つつつ、敦賀さんは、無関係です!!クオンと敦賀さんは・・・良いお友達で!!とにかく!私と敦賀さんとクオンの事は、すべて収まるべき場所に収まっているんです~~~~~!!」

---------------しばらくお待ちください--------------

「王子様のブランチ」史上初の放送中断の後、何事もなかったようにグルメコーナーがスタートする。

そこに、キョーコと監督の姿は無かったけれど。

そしてその夜・・・LMEのWebサイトには、「京子」と「久遠ヒズリ」の交際宣言が掲載されることになった。





番外編というか、間奏というか・・・続きは「やっぱり後悔先に立たず(仮)」でどうぞ。

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プロフィール

Agren

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



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