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蓮の翼(22)

SIDE KYOKO

尚国に着いたら、早速尚王捜索を始めるのかと思っていたら、なんと「父と旅する娘二人」という設定で、かなりお気楽な・・・物見遊山状態になっている。

「ほら、キョーコにモー子、見てみろ!この「お好み月餅」ってすごいじゃないか!月餅にお好み焼きが入っているぞ!」

そう言って前王様が屋台の「お好み月餅」に手を伸ばす。

「うっ、うまいぞ。店主!今焼きあがっているの全部くれ!おまえたちも、ひひょつたべなひか・・・」

「美味しそうね!父さん!」
「あたしは体が重くなるから嫌です!いざという時に体が動かなくなりますから!」

ものすごい勢いで「お好み月餅」が前王様の口の中に吸い込まれていく・・・のを眺めながら、私も一口頂く。甘さと、甘辛さがミックスして複雑な味だけど・・・癖になるかも。

前王様曰く、

「尚王捜索?こう見えても、ちゃんとしてるぞ?でも、せっかく捜索で色々な場所に行くのだから、ご当地の旨いものを食べずにどうする!」

ということで。他にも、尚王の長期不在が尚国の民に知られると社会不安が広がるから「それらしくない」この探し方がベストなのだそう。

「こんなんで、ちゃんと見つかるのかな?」
(協力者である私にも、いつ探してるのか分からないのだけど・・・)

モー子さんに目配せすると、

「一応、前王は在位中に「伝説の国王」と言われた名君だから・・・きっと何かお考えがあるのよ。でもまぁ、見つからなくても良いんじゃないの?私は、キョーコが「似非愛妃家」の蓮王から離れられれば何でもいいと思うし」

(モー子さん、誤解なんだけど・・・)

でも訂正するのは・・・恥ずかしくて出来そうもない。いえ、翼人の感覚だと恥ずかしい事じゃないのかもしれないけれど・・・でも、蓮国に来てから、誰もが皆、私の事を「蓮王の妃」としてしか見てくれなかったから、蓮王よりも私の事を慮るモー子さんの言動が嬉しくて、もうちょっとだけ誤解したままでいて欲しいかな、と思う。

(ごめんなさい、蓮王様・・・)

***

翼人界に来た時に着いたのは尚国だったけれど、翌日には蓮国に入っていたから、私は尚国の事を殆ど知らない。だから尚国の気候風土は学んで知識として知っているだけで。でも、こうやって実際に旅をすると、尚国と蓮国の気候の違いを、肌で感じることができる。

特に、尚国中央付近の山岳地帯を越えた「尚南州」に入ると、尚国が蓮国とは比べて気温が高いのをはっきりと感じる。日中は日差しが強すぎて、街歩きをしていると暑さでクラクラしてくる程で。だから、ここに住む人達は、昼の暑さを避け、早朝から午前中と、夕方から夜にかけて活動をしているそう。

この尚南州の州都「高雄」で私を魅了したのは、夕方から開く「夜市」だった。

「夜市」には、食べ物屋の屋台がずらっと並び、まるで日本の祭りの夜「縁日」のよう。この夜市を中心として、日中は暑さのために閉まっている店舗も営業を開始する。街には、老若男女あらゆる年齢層の人達が溢れ、明るい日差しの中の静かな街と闇夜に浮かぶ活気あふれる夜市が好対照をなしていた。

「私、小さい頃に母親に縁日に連れていってもらって!それが大好きだったんです!ここは毎晩が縁日なんですね!ワクワクします」

「そうか。私も「ワクワク」するぞ。何だか、どれをとっても旨そうなものばかりだし!ほら、あの「豚排骨拉麺」がやけに良い匂いだ。早速、皆で食べるぞ!」

「はーい」

モー子さんが慌てて止めに入る。

「もー!ちょっと待って!私はそんなに肉々しいもの食べないから!こっちの「檸檬愛玉」だけで良いわ!尚国にきて「父さん」に付き合ってたら太ったんだから!もうこれ以上太ったら疾く飛べないわ~!」

そういって指差す屋台では、鍋いっぱいにプルプルの薄黄色のゼリー盛られ、売られていた。

「うわぁ、私も後でそれ食べるー!」

「私もだっ!」

「もー!なんで2人ともそんなにテンション高いのよ!それに、何で太らないのよー!!もー、信じられない!もー!!!」

私は、プリプリ怒っているモー子さんを見て、思わず吹き出してしまった。

(モー子さんの、モーは、これだったんだ!)

***

もう1つ、私が高雄で魅了されたのが「高山茶」だった。

高雄の街は丘陵地帯の麓に広がっていて、その丘陵地には茶畑が広がり、有名な茶園がいくつかあった。私達は、その中の茶房を訪れ、茶畑を見下ろしながらお茶を楽しんでいる。

「尚南の高山茶は絶品だな」

「そうですね」

前王様とモー子さんがうっとりとお茶を飲んでいる。

(確かに美味しい!尚国に来た目的を忘れそう・・・なんだかすごく癒される・・・)

「どうだ?キョーコ。ここのお茶は翼人界でも有名なんだぞ?」

「はい。なんだか凄く癒されます」

「それは良かった」

前王様が目を細めて微笑んで下さるから、すこし照れてしまう。モー子さんも、お茶を飲みながら、ふふ、と目で笑い掛けてくれる。何だか胸の奥がくすぐったくて、この二人と居ると、少し本音を話してもいいのかな?って気がして・・・尚国に来てから感じていた事を口に出してみた。

「私、実は・・・ずっと蓮国にいる自分に違和感を感じていたんです。だから、自分は本当に翼人なのかな?本当はただの人間なのに、蓮王様の勘違いで連れて来られてしまったんじゃないかな?って、疑問に思っていて。でも、尚国に来てから、もしかしたら、私は翼人なのかもしれないって感じるんです。なんと言えばいいのか・・・雰囲気が肌に馴染むんです。それに・・・」

「それに?」

「高雄に来て、夜市を歩いていると、あんな雑踏の中なのに、自分でも驚くくらい、気分が落ち着いて。子供の頃、人間界の「縁日」に心魅かれていた気持ちとシンクロするというか、懐かしいなぁ、故郷に帰ってきたなぁ、って、気持ちになるんです」

「キョーコは元々尚国生まれだからね・・・」

前王様がほんの少し、真面目な顔で話し出す。

「私達翼人はね、とても愛国心が強いんだ。こうやって旅をすることはあっても、他国に定住しようとは思わない。だから、国王の翼数が少なくなって国が荒れ、一時的に難民になるような事があっても、生きて行けさえすれば、生まれた国、生まれた土地に帰りたいと思うんだよ。もし、キョーコが高雄に来て「故郷に帰ってきた」と感じるのなら、それは、キョーコが高雄で生まれた卵だった、という事なのかもしれないね?」

それを聞いて、私は少し申し訳ない気持ちになってしまった。すると、

「そんなしょぼくれた顔をするな。キョーコが人間界や尚国を懐かしむ気持ちは「ダメ」な事じゃない。むしろ、当然だ。誰に対しても物分かり良く振舞おうとしなくていい。蓮に対してだって・・・もっと色々な気持ちを伝えて良いんだぞ?アレは度量の広い男だから心配しなくて良い」

(まだ私が蓮王様を人間界の「俳優・敦賀さん」としか認識していなかった頃は、もっと言いたい事を言えていたような気がする・・・時々、訳の分からない地雷を踏む事はあったけど、それ以外は大人な態度だったし・・・今だって、私が何も言わないから・・・彼なりに色々気を回してくれてるし)

「私・・・言っても良いんでしょうか?」

「もちろん」
「言ってやりなさいよ!」

「取りあえず、今、まだ何か言いたい事があるなら言いってみなさい?練習だと思って」

前王様が微笑む顔に、蓮王様の面影に重なって、また胸の奥がくすぐったくなってしまう。

「あの・・・尚王を探さなきゃいけないのは分かってるんですけど・・・あとちょっと、高雄に滞在しても良いですか?」

「もちろんだとも」




そろそろ終わりが・・・見えたかな?

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プロフィール

Agren

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



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