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LOVE PHANTOM(35)

SIDE KYOKO

「道に迷わなかった?」

私はわざわざマンションに訪ねてくれた奏江をリビングに案内しつつ声を掛ける。彼女は卒業後、研修を受けて弁護士資格を取ったものの、国家公務員も試験を受けて経産省のお役人様になっていた。

『お金を扱うの好きだし』

そう就職先を告げたのは照れ隠し。優秀な親友が弁護士に比べて激務の割に薄給の職を選んだ理由は分っている。チャップリンの名言『人生に必要なのは、勇気と想像力。そして、少々のお金』ではないけれど、国の経済を上手く回す事は、多くの人を幸せにできると彼女が考えているのを・・・私は分かっている。

本人にそう言うと嫌がるけれど彼女は正義感が強く、人の役に立つ事が好きなのだ。

「駅前のタワーマンションって言ったらこれしかないもの、迷いようが無いわ」
「確かに、目立つものね。あ、適当に座って?」

ソファを指し、自分は用意してあったお茶菓子を取りにキッチンへ向かう。

「それにしても凄い所に住んでるのね?都内の一等地で、ワンフロアを占有する最上階の部屋って何億するのかしら?一人・・・今は二人暮らしだとしても贅沢だわ」

部屋ぐるりと見渡す親友が感心したように溜息を吐く。

「あー、蓮はアメリカ育ちだから部屋が狭いのは苦手なんだって」

泰江の隣に腰をおろし、コーヒーとケーキを並べた。

「だからって、皆が広い家を買える訳じゃないわよ?」

そう言われ・・・確かにこの立地でこの広さの部屋を買ったら億の単位になるのだと今更ながらに実感した。蓮は学生時代から一人暮らしするには広い部屋に住んでいたし、部屋の広さは彼の唯一とも言える衣食住のこだわりだったから、あまり深く考えなかったけれど。

(蓮が経営している会社は順調みたいだから分不相応な住まいじゃないんだろうけど・・・)

キングサイズのベットが余裕で置ける寝室にゲスト用の寝室、トレーニングルームに書斎、そしてホームパーティーを開いちゃいって下さいっ!って言わんばかりの広いリビング。でも、いつも余裕綽々という雰囲気の彼が何かを無理をして買うなんて想像できない・・・

「それにしても、いきなりで驚いたわよ?」

泰江がすっと、私に金縁で彩られたハガキを差し出した。それは、

----私と蓮の結婚式の招待状に同封された出欠ハガキ。

奏江らしい綺麗な字で、「喜んで出席させて頂きます」と書き添えてある。

「この前、食事した時には何も言ってなかったのに・・・連絡が取れないと思ったら、いつの間にこんな事になってるし!今日は洗いざらい、全部吐いてもらうからね!!」

私はハガキを受け取りながら、

「うん、私も急展開に驚いてるっていうか・・・」

と、どう説明すればいいのか考え始めた。

----どうして、こうなったのだろう・・・?

最初は、蓮に「暫くここに居たら?」と言われたのだ。

私は、少しの間だけ蓮のテリトリーに居させて貰おうと思ってその話を受けたら・・・蓮が「引越しラクチンパック」なる物を手配し、なんと翌々日には私の荷物が全て蓮の家に運び込まれて開梱されていた。

どれくらいの期間か分からなかったけれど、蓮の部屋で寝泊まりするのは、気持ちが落ち着くまでの一時的なものだと思っていたのに・・・

----それからなし崩しに約1ヶ月。

『不破自動車』

もう「地雷」ワードを思い浮かべても、私の心は凪いだままで居られるようになった。それらは、白い鉄壁の向こう側・・・決別した過去の世界。

私の新しい世界は、蓮を中心に展開し始めた。だから、というか、彼に愛想を尽かされる前にちゃんとしようと思って、そろそろ自分の部屋に戻ると言ったら、部屋に大寒波が訪れたのだ。暖簾に腕押し、取り付く島もない、というのはまさにあの時の蓮。

でも私は気がついてしまったのだ。無理のある言い訳で有給をもぎ取って仕事を休み、自分は何をしているのだろうか?と。客観的に事実だけを見れば、元彼とヨリを戻し、毎夜愛欲に溺れて昼過ぎまで惰眠をむさぼる・・・言い逃れできない、爛れた日々を送っている事を・・・私だけが。

蓮は毎朝仕事に出かけている。私も、真っ当な日常を取り戻さなければならない、そのために、

「未婚の男女が一緒に住むっていうのはっ、ど、同棲は破廉恥で不品行な事なんです!!」

叫ぶように訴えた。

「言ったね・・・じゃあ、キョーコの中では婚前交渉・・・未婚の男女の性行為は破廉恥な事にならないの?」

予想外の反応に、え?、と口をあけるしかなかった。

「ねぇ、どうなの?」
「え・・・っと、その、破廉恥・・・です」

話の方向性が見えず、でも、不穏な先行きを感じて狼狽していたら、蓮の大きな両手でがしっと顔を掴まれた。

「それに、この間、破廉恥であるところの婚前交渉している時に、すごく破廉恥な事・・・この口で言ったの、覚えてる?」

そういって、つつつ、と唇を親指で撫でてくる。

「キョーコは『早く、蓮の<<ギャーーーー(注:キョーコの叫び声)>>ちょうだい』って、言ったよね?」

怪しく微笑む蓮が・・・怖くて、目が合わせられない。視線を合わせようとしてくる彼から・・・顔を押さえ込まれているので、瞳だけはウロウロと上下左右に逃げまくったけれど・・・そんな事をする暇があるのなら、耳をふさげばよかった・・・

「言ったよね?思い出せないなら、もう一度、前後の会話も含めて一字一句繰り返そうか?俺の記憶力知ってるよね?」
「そ、それはっ、蓮が言わないと・・・そ、そのままだって・・・私は言いたくなかったのにーー!!」

(うわぁーん、誰でも良いから、た す け てーーー!!!)

私は心の中で叫んだ。

「へぇぇ・・・今の発言で品行方正なキョーコさんは、破廉恥で不品行な婚前交渉を自ら欲していた事を認めましたね?」
「い、今のは悪質な誘導尋問ですっ!」

もう、混乱して何が何だか分からない。

「認めてあげる、では別の質問を」

蓮の次の言葉を聞かされる・・・この時の私は・・・今まさに包丁が当てられた鯛on theまな板だった。

「被告は同棲して婚前交渉をするのと、別居して婚前交渉をするのと、どちらがより破廉恥だと思いますか?」

私、いつの間に被告になったんだろう?一体、蓮は、裁判長然として何をそんなに怒っているんだろう?そんな事を思いながら、私は視線を足元に落とし、

「すいません、質問の意味は分かりますが、答えは分かりません・・・」

正直に答えた。どちらも五十歩百歩・・・というか、こちら、と答えられる問題なのだろうか?

「正解は、別居して婚前交渉する方です」

なのに自信をもって「正解」言いきる蓮。自然と、

「何故ですか?」

と問いかける。

「同棲では生活を共にするので、相手の良いところも悪いところも見て・・・将来の結婚生活をイメージする事ができます。一方、別居状態はお互いに表面を取り繕う事ができます。うわべの付き合いをしながら性交渉を持つと言うのは、単に、性の相性を試すとか、快楽を目的としているわけです。どちらがより乱れているか・・・明らかですよね?」

畳み掛けるように言われて理屈が通っているんだか通っていないんだか分からない。いや、微妙に・・・とは思うけれど、とりあえず蓮に勝てる気がしないので、

「分かりました」

と、私は返事をした。

「だからね?分かるでしょ?」

(・・・何がですか?)

と、今度は口に出さずに心の中だけで問いかけた。分りました、と答えた手前というのもあったし、いい加減、この訳の分らないプチ針のムシロ状態を脱したかった。

「性交渉は結婚したら当たり前。同棲は結婚を視野に入れた大事な見極め期間。ほら、破廉恥な要素がどこにも無い」
「えぇ!?」

(い、今、話が、論理が飛躍しなかった!?どこ、とは直ぐには言えないけれど・・・)

一生懸命、反論を組み立てるけれど、その前に、

「キョーコはとても、貞淑で純潔を大事にする人だ。そして、俺も遊びや気まぐれで女性と付き合ったりはしない」

蓮が、私におでこに軽く触れるだけのキスが落としてくる。

「最初、さしたる抵抗も無く俺を受け入れてくれた事、一緒に住む事にYesといってくれた事、キョーコは遊びや気まぐれではしないでしょ?ちゃんと、将来も視野に入れた相手とじゃないと出来ないでしょ?」

「それは・・・」

私は不破の伯父さん事がショックで誰かに縋りたくて・・・たまたまそこに居合わせたのが蓮だっただけで。毎晩のように彼としている事だって何となくそうゆう流れが出来ていると言うか、むしろ、あの超色っぽい流し目で「おいで」と言われると・・・いつの間にか手を取っているのだ。

「キョーコは、俺と一緒に居たい、って・・・思わない?」

その言葉に、不意にずっと昔・・・蓮と手を繋いで・・・ずっとこの手を繋いで居られますように・・・って、願った事を思い出した。

----私は蓮にフラれてから他の男の人に心が動いた事は一度だって無かった。

あれから私は勉強や仕事に没頭して・・・地味で色気の無い格好をして自分の中から女を消していた。でも、蓮とまた会えると分って・・・私は彼の気を引きたくて、彼が贈ってくれた彼好みの服を引っ張り出してきて、丹念に化粧をして唇にグロスを乗せたのは・・・濡れたような唇を彼に見せたかったんじゃないの?

----自分は女だと彼にアピールして・・・どうしたかったの?

自覚した途端、顔が急激に熱を持ちはじめる。 何だか、同棲云々以前のレベルで自分が救いようの無い破廉恥な女であるような気がする。それに、この熱が、私の顔に添えられた彼の手を伝わっていると思うと・・・くらくらする。自分が情けなくて、疚しくて、この場所から一刻も早く逃げ出したくなった。

でも次の瞬間、蓮の手に力が籠り、私は顔を上げさせられ・・・まともに蓮と視線を合わせてしまった。

----DNAレベルで神の恩寵が組み込まれた、素晴らしすぎる容姿と才能に恵まれた彼。

その彼が真っ直ぐに私を見つめていた。そう、彼が相手なら・・・お天道様に顔向けできない事は何もない様な気がしてくる。だからするりと、

「ずっと、一緒に居たいよ?」

と自分の気持ちが出て来た。すると、私は蓮の懐に仕舞い込まれるように抱きしめられて・・・

「キョーコ、結婚しよう。ずっと一緒にいよう?」

そうして・・・私からの別居の申し出は・・・いつの間にか婚約生活の始まりへと変貌を遂げていたのだった。


***


「キョーコ!!」
「あ・・・」

奏江の声に我に返った。

「なんか百面相しながら急に青くなったり赤くなったり・・・相変わらず、不気味だわ」
「不気味って!?私のガラスのハートは真っ二つだわ」
「ガラスねぇ・・・無色透明なのは認めてあげるけど、アンタのハートの素材は強化プラスチックよね」
「そんな中途半端な譲歩・・・」

いつもの調子で軽口が続く。

「で、いつ敦賀さんに再会したのよ?」
「えっと・・・二か月前、位?」
「はぁ!?それで、もう、この招待状!?まさかとは思うけど・・・・・・デキ婚?」
「ちがうよ!ちゃんと避妊してるって・・・」

そこで、はたと気が付いた・・・時には遅かった。

「ふーん、する事はしてるんだ。あんたも大人になったのねぇ・・・敦賀さんが初めての相手かぁ・・・どうだった?」

どうして、皆、こうゆう事を白日の下で話題にできるのか分りません!!

「黙秘します!!」







へ理屈・蓮様。
奏江さん、招待状を受け取って直に自宅まで飛んできました。

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プロフィール

Agren

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



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