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LOVE PHANTOM(26)

SIDE SAENA

キョーコからメール届いた。

『Sub:合格報告
 お加減はいかがですか?論文式試験に合格しました!!口頭試験で気を抜かないよう頑張ります!』

(また形振り構わず勉強に「のめり込んで」合格を捥ぎ取ったに違いないわ・・・)

合格の知らせを嬉しく思うものの、僅かに苦い想いも込み上げる。

----もし、キョーコに人より優れた『才能』があるとするならば『集中力』とだと断言できる

そして、それが今回も発揮されている・・・でなければ、在学中に司法試験に合格するなど・・・ありえない。
キョーコは中学・高校と県下有数の進学校でトップクラスの成績を修めていた。それを為し得たのは・・・別に彼女が他人より頭が良かった訳ではない。単に、長い時間を勉強に捧げたからだ。

一握りの人間を除いて、学校の成績は勉強に捧げた時間に比例する。つまりキョーコはその成績に見合うほどに勉強時間が長いのだ。試験が近づくと・・・例えば通学中はもちろん、入浴中や食事中にも参考書を近くに置き、何をしながらでも常に勉強にも意識を向ける。時には寝ていても・・・日中勉強した事を復習する夢をみているらしいから、それこそ一日勉強をし続けているに違いない。

例えば人が恋に落ち『夢中』なると・・・恋人に対面すれば相手以外は目に入らず、恋人に会えない時間にも、無意識に相手の事を考えているのと似ている。

---寝ても覚めても24時間、アナタの事ばかり

そんな風にキョーコはまるで取り憑かれたように勉強に集中することができる。しかも『無我夢中』な状態を1年以上続ける事ができると、彼女は東都大入試の時に証明してみせた。

どうしてそんな集中力を身に付けた?、なんて自明な問だ。
それは・・・自惚れでも何でもなく・・・キョーコが私が喜ばせるために、身に付けた能力なのだと思う。

----私が「満足」するレベルをクリアするため

それが証拠に、彼女の異常な集中力は、勉強と車の運転と家事、にしか発揮されていない。学校の成績は言わずもがな、車は私が買い与えたものだし、家事はある時「ウチの中の事はあなたに任せるわ」と言ったら、あっという間に身に付けた。そしてそれ以外の事には・・・キョーコは間抜けなほど、不器用な対応をする事が多い。

しかも、その『集中力』は私と言う『実例』を手本にして身に付けたのだと思う。
私は、ずっと魂を捧げる覚悟で仕事をしてきた。そして、不可能と言われた事を全て可能にしてきた・・・それを彼女は小さい頃からみている。

集中力がある、と言えば聞こえが良いが、そんなイイものじゃない。自己制御とか全く働かないし、ある意味、自我の放棄に近い精神状態になるのだ。

(だからこそ、平均的頭脳のキョーコが東都大に合格できたし、司法試験もパスできた訳だけど・・・)

無茶をしてきたのだろう・・・私の為に。
ずっと頭の良い子だのだ思っていた。学習能力が高い秀才タイプなんだと思っていた。

でもこうやって、死の床について色々な事を考えるようになって気が付いた。そして、分かってしまった。

----あの子と私は違う

私は、多くの物を「放棄」して仕事に全力を注ぎ、結果を残した。
でも、キョーコは私が色々と欠けた私が母親だったせいか・・・そして不破家という特殊な家を見ていたせいなのか、その両方か・・・そもそも放棄するようなモノを殆ど持っていないのだ。自我が薄過ぎる。我欲が無さ過ぎる。

だから簡単に、私から、恐らく不破家からも『期待された事』を、まるで自分の希望なのだと言わんがばかりに夢中になってみせる。

私の為と言いながら・・・キョーコが私に対して愛情欲求を持っていて、それが彼女の能力発動の動機になっているのだとすれば良かったのに。それは、彼女自身の意志だし、彼女の望みなのだから。でも、キョーコの場合、最初で最後、私が父親の話をして以来、母親に対する渇望の様なものは感じない。馬鹿みたいに私を慕っているのは感じるけれど・・・。

『お母さんの事、尊敬してますっ!私も弁護士になって不破自動車の役に立ちたいんです!』

正直、こんな事を言われれば、これまでの私を認めて貰っているようで嬉しい。私は亡き夫に認められたい、という私自身の愛情欲求を糧にしてここまで来たし、キョーコと彼は色々な意味でそっくりなのだから。

反面、期待される事に対して限りなく従順な精神に危機感が募る。
他人の欲求に応え続ければ・・・ハードルは高くなるばかりだ。いつか応えられなくなるか、応え続けて精神か体が壊れるか・・・だからキョーコには不破自動車から離れ好きなように生きて欲しい。

もし、私が「不破自動車で働くのをやめなさい」と私が言えばキョーコは止めるだろう。
でも、そう言う事が彼女を幸せにするのか不幸にするのか、結果の予想が付かないし、キョーコの何をどうしたいのか・・・そもそも、将来に対して口出す権利があるのか・・・あの人の娘なら不破自動車に帰るのが当然なのか・・・義兄はキョーコに無理な要求をするはずがないし・・・色々な気持ちが混ぜこぜになって、考えを纏める事が出来ない・・・最近、頭の中に霞がかかったようになる事が多くなってきたのだ。だから、これだけは・・・

「・・・キョーコ、合格おめでとう」

個室だからと病室に持ちこみを許可された携帯に向かってメールを打つ。

『Sub:合格おめでとう
 母は嬉しく思います。』

そして、もう1通、文をひとつ加え、司法試験の最終合格発表の翌日に届くよう予約する。

「あなたは、いつも私の期待以上の結果を残してくれます。良くできた素晴らしい娘です」

11月中旬の合格発表の時期まで、私の意識が続くかどうか分からないから。
医者からは無理をするなと言われたけれど「中途半端をする位なら死んだ方がマシだわ」と押し切って無理を続けた体は、癌の再発という自体を招いていた。その事に後悔は無かったハズだった。

でも、イザとなると・・・こんなにもキョーコの事が心残りになる・・・


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プロフィール

Agren

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



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