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LOVE PHANTOM(2)

SIDE KYOKO

手元にある、例の内容証明郵便のコピーを眺めている。
私は・・・不破自動車の法務部の会議に出席し・・・今回の問題の状況説明を聞いていた。

私の母は不破自動車の社内弁護士をしていた。私もいずれはそうなりたいと思っていたけれど、今はまだ研修を終えて1年のちょっとの新米弁護士。だから普通の弁護士事務所で経験を積んでいる。それでも、将来を見越して・・・まぁ、要するにコネで・・・一応、顧問弁護士に名前を入れて貰っていて・・・何か問題があれば、こんな風に会議に参加している。

「ソフトウェアの不正使用・・・ですか?」

母の後を継いだ不破自動車の社内弁護士:トミタさんが確認をする。そして、当然の質問を投げかけた。

「何故、そのソフトを正規購入しなかったのですか?」

(そうよ・・・ショーちゃんだって、不破社長だって、FF-86の開発費は十分に使って良いって言ってたハズなのに・・・)

「・・・売って貰えなかったんです」

経理部長から返ってきたのは意外な言葉だった。トミタさんも怪訝な顔をしていたけれど・・・思い出したように呟いた。

「もしかして・・・一昨年の・・・売買契約を拒否されたアレですか?」

「そうです・・・とにかく、ウチには売らない、の1点張りだった・・・アレです」

トミタさんが溜め息を付く。

「他の・・・同等品を購入したと聞いていましたが・・・」

事情説明の為に呼ばれていた研究所長が、緊張した面持ちで説明を始めた。

「今回問題になっているソフトウェアはR-Flowとよばれる流体解析ソフトで、主に車のボディを設計するために使うものです。確かに他にも流体解析ソフトは幾つかありますし、通常は複数のソフトの計算結果を比較しながら使うものなのですが・・・計算精度や速度、使いやすさ・・・どれをとってもR-FLOWは他のソフトウェアの比ではなくて・・・流体解析を必要とする殆ど全ての会社がR-Flowの結果のみを信頼していると言っても過言ではありません。
それに・・・誤解を恐れず、率直な意見を述べますと・・・不破重工が新型新幹線の受注を取りこぼした根本原因もこのR-Flowが手元に無かった事に尽きます。このソフトは不可能を可能にするとまで言われて・・・」

「そのソフトの素晴らしさは分りました・・・」

トミタさんが研究所長の話を遮った事で、会議室に重たい静寂が訪れる。

「私の独断でR-Flowの試用版のプロテクトを破る・・・許可を出しました。責任は私が取ります!私の独断だという事でクビにして下さって結構です!申し訳ありませんでした!!私は・・・どうしてもFF-86を最高の車に仕上げたかったんです!」

研究所長が土下座を始めたので、その場の全員が慌ててしまう。トミタさんがそっと所長の体を起こして椅子に座らせる。

「所長、取りあえず落ち着いてください。問題を大きくしないよう、何らかの対策を考えるのが我々の仕事ですから。誠意をもって対応して・・・穏便に済ませられるよう努力します」

ここに居る全員が研究所長がFF-86の開発に並々ならぬ思い入れがある事を知っていた。だから所長を糾弾する気には・・・なれなかった。所長は「スーペリオ」の開発部長を務めていたし、なにより、

----彼の技術者としての経歴は、不破自動車のスポーツカー開発の歴史そのものだったから・・・


***


契約課室長と研究所長から状況を聞いて・・・法務部長と部下一人、それと、トミタさんともう一人、契約問題を専門とする弁護士の4人で話し合いが進んでいる。

例のソフトの試用版の使用許諾説明書を要約すると
『R-Flowの試用版は計算結果が保存が出来ないようよう制限されています。試用版を用いた成果物の一切の利用を禁止するので、計算結果を利用したければ正規版を購入して下さい』
と、書かれていた。

研究所長は・・・試用版では結果のビジュアル化だけを可能にしていたアプリケーションを逆コンパイルして数値データを保存できるよう変更を加えたらしい。逆コンパイルまではセーフだけれど、数値データをFF-86の設計に使ったとなると・・・問題になる。

「事態は予想以上に・・・深刻だな。
最上君・・・君は今夜、社長の家に行くんだろう?その時に概略だけでいいからこの問題を説明しておいてくれないか?私は明日、社長のアポを取ってあるから・・・詳細をそれまでに書類に纏めてその時に説明する」

トミタさんがこめかみを押さえ・・・低い声で呻いた。私は・・・嫌な役目だわ・・・と思いつつも、早く不破社長の耳に入れるべき問題だとも思い、

「分りました」

と同意する。

R-Flowの試用版の利用許諾を拘束力が低く罰則がゆるい「付随契約」だと主張するのは難しい。
しかも、今回は、試用版のプロテクトを破って、計算結果を設計に使っていて・・・こちら側の性質が明らかに悪い。

何より最悪な事は・・・FF-86がR-Flowの結果をそのまま設計に利用している事実が相手に把握されている・・・その証拠が内容証明郵便に同封されていた。どうやって相手がそれを把握したのか分からないけれど・・・。

----もしもR-Flowの開発会社が裁判を起こせば、最悪の場合FF-86の製造は延期せざる得ない

そんな状況に、法務部長も苦い顔をしながら呟いた。

「購入を希望した一昨年・・・共同開発支援という形で限りなく無償の資金提供に近い契約を提案したのを・・・断られています。相手が示談に応じるとしても、それ以上の金額になるのは避けられないでしょうね」

「そもそも・・・示談金で済む相手なのか・・・このR-Flowの開発元は非上場企業なので財務内容はハッキリとしませんが、R-Flowの他にもいくつか、世界的な解析システムを有しているそうなので・・・多分、資金には困っていないでしょう・・・」

トミタさんが深い溜息をついた。

「まずは、どうして我が社だけでなく不破重工にもR-Flowを売ってくれないのか・・・その原因が分らないと対策の立てようがない。それに、有効な対策なく下手に相手に接触すれば・・・裁判を起こされる怖さがある・・・裁判に敗れるのはもちろん・・・FF-86の販売延期すら我々には痛い状況だ・・・」

部屋の照明が一段落ちたような薄暗い雰囲気が全員を包んでしまう。

今回の「手紙」・・・ここに居る全員が「不気味」だと感じていた。

何故ならば・・・こちらに、言い逃れの出来ない「罪の証拠」を突き付けているのにもかかわらず、相手側からの要求が何も書かれていないのだ。長い沈黙の後、トミタさんが再び深い溜息を吐いた。

「この会社の幹部社員に・・・個人的なツテがあれば、それとなく理由を聞き出すとか・・・情けない事に・・・正直、その程度しか対策が思い付かない」

その言葉に応えるように、法務部の社員がR-FlowについてWebを使って検索し始めた。その様子は、目の前のスクリーンに表示されて・・・その場にいる全員の目の前に、開発元:STARK社のWebサイトのトップページが現れる。
そして、サイトマップから役員紹介のリンクを叩いて・・・

----代表取締役社長 『敦賀蓮』

私は、予想外の文字列を見つけて・・・目眩を伴う激しい衝撃を受けた。

ドクドクドク・・・

心臓が痛むほど、早鐘を打ち始める。

まさか、と、思う。でも偶然として片づけるには・・・珍しい名前。そして、彼になら・・・他に比類無きソフトの開発ができるに違いない・・・という確信。

蓮・・・学生時代に別れた・・・私の恋人だった人。




Agrenは法律が専門じゃないので、本職の人が見たら無理があるのかもしれませんが、その辺はファンタジー?として御容赦ください。これはあくまでフィクションです!
プロフィール

Agren

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



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