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蓮の翼(26)

最終回だからと気合を入れてて推敲するも・・・崩れていくばかり・・・諦めました

SIDE KYOKO

私は一人残され・・・色々な事を思い出していた。

蓮王様は私の事を凄く好きなんだって・・・子供は目的じゃなくて結果なんだって。それなのに、その気持ちから逃げ出すように、裏切るように、私は王宮を出てしまった・・・。

----貴方と離れて考えたい事がある

そんな風に私の気持ちが伝わっている、そう知った時はショックで・・・。彼を傷付けた事であんなにも胸が痛むとは思っていなかった。でも、あの時の私は・・・自分でも気付いていなかった色々な想いに縛られて・・・身動きが取れなくなってて・・・やはり、一度は蓮王様と距離を置かなければならなかったのだ・・・と思う。

でも、自分の行動を正当化するつもりはない。さっきは前王様の指示で小芝居を打ったけれど、今度はちゃんと、自分の意思で謝りたいし、私も蓮王様が・・ダイスキ・・って伝えなくっちゃ。

「うわぁ。考えるだけでも恥ずかしい・・・緊張する・・・」
(演技じゃなくて、告白なんてものを、お、おとのこ人にするのは初めてかも!)

私は、一か所にじっとしてられなくて、そわそわと部屋の中を歩き回っていた。

「あの、お茶の支度はこちらにさせて頂いて宜しいでしょうか?」

声を掛けられ、はう、と我に返る。茶道具一式を抱えた女官が困惑顔で私を見ていた。恥ずかしいな・・・もう。

「あ、はい。どうぞそこに。でも、あの、私、蓮王様が戻ってくるのをお待ちしますよ?」

そう告げるものの、

「蓮王様から先にお出しするようにと・・・」

よく見ると、女官が手にしている茶壷は一人用の小振りのもので。私の分だけ先に用意してもらったことに気付いた。私は、緊張して喉も渇いたので・・・取りあえずお茶を飲んで気を鎮める事にする。

「じゃあ、先に頂きます。よろしくお願いします」


***


なんだか、頭がぼうっとしてきて、時間の感覚が良く分からなくなってきた。どれ位、蓮王様を待ったのか・・・それに、さっきから心臓の鼓動が妙に早くて・・・その音が頭にまで響いて・・・煩わしい。

(は~、すごく緊張してるんだわ・・・。そ、そうだ、こんな時こそ、お茶をもう一杯・・・)

その時になって初めて、私は自分の手が震えていることに気付いた。

(なに、これ?)

「やぁ、待たせたね?」

見上げるといつの間にか蓮王様が目の前に立っていた。ついさっきまで、まず最初に言う事を・・・ちゃんと考えて・・・覚えてたのに・・・言葉が出てこない・・・あれ?

「なんだか、具合が悪そうだけど・・・どうした?」

「・・・緊張・・・してる・・・というか・・・」

「何に・・・緊張しているの?それにしても・・・顔が赤いよ?・・・熱でもあるんじゃないのかな?」

そう言いながら、私の体温を確かめるため、首筋に蓮王様の指が触れた・・・瞬間、

「ひゃあ!」

背筋がありえない位ゾクゾクする。

「大丈夫?」

小首を傾げて心配そうに見ている蓮王様に、大丈夫ですと返したいけれど・・・かなり、無理があるかも。

「私・・・急に背筋が寒くて・・・頭もぼうっとして・・・熱が、出たかも・・・です」

「そう・・・少し震えているみたいだし、疲れが急に出たのかな?横になったら?」

「あの、でも、私、お話したいことが・・・」

「それは、寝台の上で話してくれればいい・・・本当に具合が悪そうだから・・・自分で立てる?手を貸してあげるから・・・行こう?」

横になって話を聞いてもらうなんて、失礼だわ・・・と思ったけれど、蓮王様の顔を見てから・・・私の体調はおかしくなるばかり。足元がぐにゃりと歪んだような気がして・・・手を引いてもらわないと、歩くことすら儘ならないよ。

「ごめんなさい、少しだけ横に・・・気分が・・・悪くて・・・」
(急にどうしたんだろう?私・・・)


***

SIDE REN

キョーコが目の前で、小さくなって横たわっている。目が潤んで、唇がぽってりと赤くて・・・今すぐ食べてしまいたいけれど、ぐっとこらえて、彼女の体を心配するフリを続ける。彼女を虐めて・・・本音を吐かせるのは最後の手段。

「ねぇ・・・気分はどう?」

「自分の体が、熱いのか・・・寒いのか・・・自分でも・・・分らなくて。何だか怖いんです、あの・・・お医者様を、呼んでもらえませんか?」

「・・・少し、様子を見よう?気分が悪いなら、俺が背中を擦ってあげるから・・・」

寝台の上に腰かけて、そうっと彼女の背中を撫でると、背中を丸めていた彼女が、大きく背を仰け反らせる。

「やあ!やめてっ!!」

彼女自身、大きな声を上げた事に対して、狼狽えているみたいで・・・何が起こっているのか、分かっていないんだろう・・・薬になんて頼らなくても、十分感度の良いキョーコには・・・すこし刺激が強すぎたか・・・。

「あ・・・あの、ごめんなさい。でも、お願い・・・すぐにお医者様を・・・」

「分かった。ちょっと待ってて?」

俺は女官を呼び、何があっても、父が来ても、誰も部屋に入らないよう小声で命令する。そうして彼女には「すぐに来ると思うよ?」と告げると、彼女が、ふう、と小さく溜め息を逃がした。そして、寝台に付いていた俺の手に、火照った手をそっと重ねてくれる。

「ありがとう・・・大好き・・・」

以前だったら・・・嬉しい彼女からの意思表示に、驚喜したかもしれないけれど・・・俺にとって都合のいい言葉は・・・きっと、彼女の中にある台本の「台詞」に過ぎない・・・それどころか、まだ演技を続ける余裕があるんだ・・・と、少々腹立たしく感じる。

「へぇ・・・大好きって、俺の事?」

俺の指を力無く握りしめ、キョーコはこくこくと頷いている。凶悪に可愛い・・・完璧・・・だからこそ・・・信じられない。

「じゃぁ、大好きな俺の質問に答えて?・・・どうして、啓国に行こうと思ったの?」

「?」

彼女が、苦しそうに眉根を寄せながらも、今になって何故そんな事を聞くのか?という表情をしたのが分かる。

「どうして?」

「・・・答え・・・られません」

「答えられない?ふぅん・・・予想外の質問に対してアドリブが効かない程度には・・・余裕がなくなってきてるのかな?」

「え?」

「もう・・・お芝居はおしまい。演技するのは止めて?」

「演技」という単語に反応して、彼女の表情に脅えが走ったのが見えた。

(やはり・・・そう・・・なんだ・・・)


***


彼女を雁字搦めに抱き締めて、指一本さえも動かせないようしてしまう。元々、殆ど力が入らなくなっていただろうキョーコの体は、簡単に抑え込めてしまった。そうして、彼女の「弱点」を愛撫すれば・・・

「やめて・・・やめて・・・怖い!やめてーーー!!」

喘ぐ、というより叫んでいる。お茶に混ぜられた薬のせいで・・・強すぎる快感に恐怖を感じているらしい。彼女に泣きながら訴えられると・・・俺は挫けそうになるけれど・・・でも、一つも目的を果たさずに、止めるわけにはいかない。

(何故、啓国を目指したのか。俺から離れて何を考えたかったのか。俺の事を大好きと言ったのが・・・何故、嘘なのか・・・)

「止めて欲しければ、答えて?・・・どうして、啓国に行ったの?他にも色々と聞きたい事があるんだから・・・最初の質問でそんなに意地を張り続けるものじゃない・・・正直に答えてくれたら、俺はどんな答えでも受け入れるのに。
・・・楽になろうよ?」

なるべく優しく誘惑するけれど、

「・・・」

彼女は黙ったまま。

「答えないのなら、続けるよ?」

彼女の中に、そろりと潜り込むのに、

「・・・きゃゃぁぁ!」

悲鳴を上げて・・・彼女は失神してしまう。これで何度目だろう?俺は、用意した気付けの薬を彼女の鼻先に近付け無理矢理、目をこじ開かせる。辛いだろうに・・・何も話さないなんて・・・なんて強情なんだ・・・。

ふと、そういえば自分も随分と意地を張っていたことに気付いて自嘲する。いい加減、攻め方を変えてみないといけないか・・・

「じゃぁ、質問を変えよう・・・「なぜ」答えられないんだい?」

キョーコに問うと・・・ずっと黙秘を続けていた彼女から、あっけない程、するりと答えが返ってくる。

「・・・もう、傷つけたくないから・・・」

(話し出した!)

「誰を?」

「あなたを・・・」

「答えてくれない方が、俺を傷つけてるって思わないの?」

「好きだから、好きなの・・・もう私の言葉で・・・傷つけたくないの・・・好きなの・・・好き・・・」

ずっと黙っていたキョーコが、今度は壊れたオモチャのように「好き」と繰り返し始める。あまりの事に俺は驚いて・・・頭の中で「これは演技」と繰り返してみたものの、彼女が「好き」言うたびに、勝手に俺の翼が震えてしまう。

(演技・・・なのか? これが彼女の本心だったら・・・どんなに嬉しいか・・・いや、彼女の言葉が偽りでも・・・俺が本心であって欲しいと願っているから・・・俺は・・・何も信じられない・・・)

---- 彼女が芝居の続行を望むなら、それもいいじゃなか。

そんな考えが沸き上がる。俺も、同じ舞台にあがってしまえばいい・・・そうすれば全て真実になる。俺には、彼女の言葉の真偽を確かめる事自体・・・最初から出来ない事だったんだ。俺にとって都合のよい言葉を信じる・・・その欲求に俺は勝てそうもない。

「ねぇ・・・「私の言葉を信じて」って言ってみて?キョーコがそう言ってくれたら・・・俺は君のお芝居に一生付き合ってもいい・・・」

俺は覚悟を決めたけど・・・それでも、彼女から言葉ひとつ貰いたかった。君が「うわごと」のように紡ぐ「好き」という言葉を俺に信じさせて?切望を込めて彼女の瞳を覗きこむと、ほんの少し焦点が定まって・・・視線に熱が籠ったような気がする。唇が動き出す----俺の欲しい言葉を言ってくれるんだね?

「蓮、大好き・・・だから貴方の子供を産みたいの・・・いっぱい産んであげたいの。私の愛を形にしてあげるから・・・信じて・・・」

彼女が初めて使った『愛』という単語に俺は心ごと木っ端微塵にされるような衝撃を受けた。

「信じる・・・信じるよ・・・信じてる・・・」

今度は、俺が壊れたオモチャになる番だった。


***


「はわ!?はわわ・・・なんで、裸・・・?」

俺の腕の中で眠っていたキョーコが目を覚ます。昨日の事があったから、彼女がどうゆう反応をするか・・・もしかしたら嫌悪の色が宿るかもしれないと・・・緊張していたのに・・・何だろう?この緊張感に欠けた反応は。

「わ、私、お茶を飲んで・・・それから・・・あれ?」

「・・・覚えてないの?」
(あの薬・・・強すぎて記憶障害でも起こすのか?)

「や?あの・・・ゴメンなさい」

「正直に謝ったから許す・・・色々あったけど、思い出さなくていいから・・・」

そういって、ぎゅうと彼女を抱き締める手に力を込める。彼女が全く覚えていないのは・・・少し寂しいような気がしたけれど、余裕の無い自分が「無かった事」になった方が全然いい。俺は・・・いつだって君の前では余裕綽々で・・・格好付けていたいんだから。

「あの、私、昨日、ちゃんと言えましたか?」

キョーコが、苦しいです~、とジタバタするので開放すると(大事な事なので・・・)と訊ねてくる。ふむ。そういえば・・・何か言いたいことがあるって言ってたっけ?

「いろいろ言ってたね・・・俺が嫌いだとか・・・」

すこし意地悪をして、反応を見ることにした。

「そんなこと!あり得ないです!!ホント。えと、大好き・・・ですよ?」

俺は、素直にその言葉を受け取って・・・胸の奥を一人温めていた。でも、同時に・・・そんな可愛い顔をされると・・・別の意地悪をしたくなるよ?なんて不埒な事も考えていて。

「そんな事も言ってたかな・・・他にも・・・俺の子供が欲しいって「おねだり」された、かな? だから、こんな事になっているんだけど・・・」

そういってニヤリと笑うと、彼女がボンと音を立てて真っ赤になった。(そんな破廉恥な事いいませんよ!)ってところか?

「私、一人っ子だから・・・賑やかなのが・・・憧れです・・・」

まったくもう・・・この娘は・・・何かのスイッチが入ったように俺を喜ばせる言葉を言ってくれる。それとも、スイッチが入ったのは俺なのか?

「嬉しいね。キョーコ姫が望むなら、10人でも20人でも・・・俺は御奉仕しますよ?」

---- 今度こそ、破廉恥!が出るかな?

でも、その言葉が出る前に、可愛い唇は塞いでしまおう。


FIN.





ラブラブになってエンド。今日が昨日になってしまいました。

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蓮の翼(25)

今回で終わるつもりが長くなってしまったので、切ります。次回で終了予定


SIDE KYOKO

気がつくと、私は冷えた塊を抱きかかえるよう床に倒れていた。

「あ・・・俺・・・キョーコ!?・・・ここは?」

「お帰り、尚王。ここは君の国の「高山茶房宮」だよ?ちなみに君が抱きついているキョーコは息子の妃だから。君の気持に免じてちょっとだけなら良いけど、あまりくっつき過ぎないように」

「あぁん?」

むくりと起き上がった・・・目の前の明るい髪色の少年。彼は、そう、尚王。

「覚えているかな?君は蓮の逆鱗に触れ、外宇宙に飛ばされてしまったんだ。だからキョーコと君自身の力を借りて、私が連れ戻した」

「・・・カッコ悪りぃな」

私は、外宇宙の入り口に触った時に、自分が過去にどんな罪を犯したのか、そして、それが既に赦されていた事を知った。それに、尚王が私の記憶の欠片を自分の物として大切にしてくれていた事も分かって・・・色々な嬉しい感情が胸の中で混ぜこぜになっていた。ふわふわと心が軽い!

「あの、尚王様!帰って来られて、そしてお会いできて・・・本当に嬉しいです。私の事を色々心配してくださってありがとうございました。私もちゃんと帰って来れました!!」

深く深く、感謝の気持ちを込めて頭を下げる。

「お、おう・・・結局、俺は何もできなかったけど、とにかく帰って来れて良かったな」

尚王様の翼がサワサワと揺れている。そういえばコレって・・・ふふ、実は、まるで犬の尻尾みたいよね?

---- 彼の翼に触りたいな

揺れる翼が私を手招きしているみたいなんだもの。

「キョーコ、あまり尚王を物欲しげな目で見つめるな・・・」

「な!?」
「も、も、物欲しげっ!?」

この気持ちはそうゆうのじゃなくて!確かに、我慢できない程の強い気持ち・・・なのだけど。

「あの、その、尚王様、もしお嫌でなければ・・・私に五枚目の翼に触らせて頂けませんか!?決して疚しい気持ちではなく、その、何と申し上げたらいいのか・・・」

あー!顔が赤いのが自分でも分かる!前王様が変な事を言うからっ!

「うが」

尚王様も私と同じように顔が赤い。

「・・・俺の翼はお前のモノだと思って触っていい。俺の翼はキョーコの体は自分のモノだと思っているみたいだし。俺達は、元々一つの体を分け合った双子の兄妹みたいなモノなんだから、遠慮はいらねぇ。」

彼が私と同じように思ってくれていたのが嬉しい。

「はい、じゃあ、尚王様・・・、じゃ・・・これより触らせて・・・頂きます」
「いちいち、前置きするな!あと、その敬語は止めてくれ。お前に尚王様なんて呼ばれると何だかむず痒い」

尚王の翼に触れると、とても気持ちが落ち着く・・・。心の奥からあったい物が溢れて、飢えが満たされていく。私はいつまでも、いつまでも、名残惜しく、翼を撫で続けていた。

***

「とんだブラコン&シスコンだな・・・」

前王の言葉に私達は顔を見合わせて笑ってしまう。

「えぇ!?ちょっと何それ!? ここまでしておいて、兄妹設定になっちゃうワケ!?蓮王なんかよりも、尚王の方がキョーコを幸せにしてくれそうじゃない!ちょっとキョーコ!アンタ、蓮妃なんか止めて、尚妃になっちゃいなさいよ!」

そういえばモー子さんは「誤解」してるんだっけ・・・

「アイツ・・・心狭いだろ?」

「そんな事、ないよ?きっと・・・時々ここに遊びに来たいって、私がちゃんとお願いすれば「いいよ」って言ってくれるはず・・・」

「信じられねぇ・・・」

「前蓮王様方、夕餉の支度ができました・・・え!?尚王様!?いつの間に!?」

下がってもらっていた茶房長が東屋に食事の事を知らせに来て・・・その時になって、初めて陽が殆ど沈みかけていた事に気付いた。私は随分と長い間・・・尚王の翼をうっとりとした表情で撫でていた、と、モー子さんに呆れ顔で教えてもらった。

それから皆で楽しく夕飯を食べて、尚王とモー子さんが、前王様の食べっぷりに同じ様に嫌な顔をしたのが、なんだかとても面白かった。

(本当に今日は長い一日だったけど・・・)

色々な事が本当に上手くいってよかった。後は蓮王様の事だけ・・・それだってきっと大丈夫。その夜、私は幸せな夢にゆらゆらと揺られていた。

***

翌朝、私達は四人でお茶を飲んでいた。今日も、茶碗は一つ多く。これは、これからやって来るであろう蓮王様の分。

「お!そろそろ手紙が蓮に届くころかと思ったが・・・流石に反応が早いな、来るぞ!」

前王様がチラリと北の方向に目を向ける。

「とりあえず、お茶と茶菓子は守らないといけないから、キョーコは・・・そうだな、柱の近くまで移動して貰えないかな?後は、打ち合わせ通りに」

私はこくりと頷く。

(やっぱり女優として演技の練習をしておいてよかった!蓮王様の事を知り尽くした前王様の指示だもの!上手くいかないはずがないわ!)

私がすばやく席を立ちあがって移動すると、一陣の烈風と共に・・・蓮王様が目の前に立っていた。

「キョーコ、呼ばれたから迎えに来たよ?」

下手をすると「最強大魔王=マジ怒りの蓮王様」が降臨して、大変な事が起こるかもしれない。蓮王様の気を鎮め、冷静に話し合いの席についてもらう・・・それが私の使命。

(蓮の奴は、キョーコの「迎えに来て」の一言に反応して、何も考えずにここに来るはずだから。空っぽでやってくる蓮の奴に「可愛いキョーコ」を詰め込んでやってくれ!まず「最初の台詞」だけ指示通りに言った後は、蓮の方から何か言い出すまで黙って抱きついているように。もしチャンスがあれば「蓮、大好き!」と言ってやってくれ!)

まずは・・・蓮王様の胸に飛び込むのよね?

「迎えに来てくれて嬉しい!蓮が私の勝手な行動に怒って迎えに来てくれないかと思った!ご、めんなさい・・・怒ってる?」

(ますは「最初の台詞」をちゃんと言ったわ!ここは、涙目!蓮王様が目を逸らすまで・・・ずっと涙目で見上げる!(ちょっとコワいけど))

すると、前王様が言うとおり、本当に蓮王様が目を逸らした!

(やった!)

「怒ってなんていないよ。むしろ、自分の不甲斐無さに腹を立てていただけで・・・」

「蓮、大好き・・・」

(あとは余計な事を言わずに黙ってるのよ!)

「しかし・・・まさか、本当に皆で、仲良くお茶を飲んでいるとは・・・ね。尚王も同席しているのは実に不愉快だ」

地の底を這うような低音ボイス。それでも、蓮王様の手がいきなり尚王に伸びなければこの小芝居は成功・・・のはず。

「蓮、まぁ、落ち着け。尚王は、キョーコの恩人だ。とりあえず座って俺の話を聞け。ここの茶は絶品だし、茶菓子も美味いぞ?」

「・・・」

不機嫌だけども、蓮王様が大人しく席についた!そうして、前王様が、これまでの経緯を不都合なところを上手く省きながら説明する。蓮王様は黙ったままそれに耳を傾けている。

(さすが・・・)

彼が黙ったままな以上、私も前王様の指示どおり、黙って蓮王様に巻きついていた。実はこの時、彼が私の予想とは全く別の事を考えていた事は・・・当然私には分らなかった。

***

SIDE REN

ずっと考えていた。

「俺は何を見逃しているのだろう?」

これは、もう確信。俺は何か大切な事が分かっていない。

キョーコに呼ばれて尚国まで駆けつけてみれば、

(迎えに来てくれて嬉しい!蓮が私の勝手な行動に怒って迎えに来てくれないかと思った!ご、めんなさい・・・怒ってる?)
(蓮、大好き・・・)

彼女から、俺の心を鷲掴みにする嬉しい言葉が贈られ、不安を抱えた俺に沁み込んでくる。

----完璧。そして理想的。

何をも見逃さないように注意していたからこそ、やっと気付いた。そう、彼女はいつも理想的な「蓮妃」だった。人間界で・・・プライベートでは、少し「迂闊」なところがあった「最上さん」。でも、「京子」として女優になると、その演技はいつも周囲の予想を超えた「理想の姿」を描き出す。彼女自身は信じていなかったけれど、彼女は将来を嘱望される女優だった。

----彼女は、理想的な「蓮妃」を演じている!

気付きたくは無かった衝撃の事実。でも、一旦可能性に気付いてしまえば、それ以外に考えられなかった。俺に本音を聞かせてほしい・・・いや、

----無理矢理にでも暴きたい

彼女がどこかに隠している「本心」。それを少しでも覗かせて貰えなければ俺はきっと壊れてしまう。たとえ、それが俺の望む答えでなくてもいい。だから、俺はキョーコに多少の罪悪感を感じつつも、それを実行することにした。

***

「迎えに来て頂けますか?」

その言葉通り、俺はキョーコを尚国から連れ出し、蓮国の王宮に戻ってきた。

「とりあえず、お茶でも飲もうか?さっきは、飲んだ気がしなかったから・・・」

そう言って、彼女を誘う。キョーコは尚王から「お土産」として、高山の特級茶葉を持たされていた。彼女が「いいですね」と、嬉しそうにお茶の入った缶を鞄から取り出して並べ始める。俺はその一つを取り上げて、

「ちょっとだけ待ってて?社に朝議の事で、一言だけ言ってくるから。先にお茶を飲んで待っていてくれてもいい」

そういいながら、そばに控えていた女官長にお茶を手渡した。

「キョーコのお茶に「側室」が飲む最も強い催淫剤を混ぜておいてくれ」

そう、密かに告げて。

----彼女の理性を突き崩してしまおう

そうすれば、俺に隠し事なんてできなくなる。どんな真実だって、受け止めてあげる・・・君を愛しているから。




キョコさん、逃げて(笑)
しかし、書いててはずかしーぞ。夜中じゃなきゃ書けません。こんな内容・・・

蓮の翼(24)

馬鹿話の妄想が脳内で完了し(笑)一息つきました。後悔先に立たずは、蓮の翼が終了したら続けますよ~!


SIDE KANAE

「伝説の国王」呼ばれ、蓮国に比類なき善政を敷いていた前蓮王。

蓮王の仕打ちから蓮妃を庇うのは、正義がどこにあるかを考えれば明白で。蓮王を溺愛していても、真っ当な判断を下すのは流石だと思っていた。だから、尚王探しなんて本当は名目だけで、この旅の真の目的は、キョーコをあの「似非愛妃家」から離す事だと思っていた。

(だって、妙にハイテンションだったし・・・あればキョーコを慰める為にやっていたのかと。でも実は、本当に尚王を探していたなんて・・・)

「とりあえず、入口を開くから・・・」

そう言って、胸の前で蓮王様が手を合わせ、頭上に向かって両手を広げると、そこに人の顔程の大きさの黒い球体が現れた。

「いやっ、怖いっ!」

キョーコはそれを見るなり、青ざめて、私の腕に縋り、ぶるぶると震え出す。

「すまないね。キョーコには怖いだろう・・・これは外宇宙への入り口・・・黒卵が捨てられる場所への入り口だ」

前王様いわく、尚王の居所を探している内に、彼が翼人界に到着した痕跡すら無い事に気付いたのだと。そして、人間界に戻った気配も無い。そうなると消去法で、尚王は人間界と翼人界をつなぐ「時空の狭間」に続く外宇宙、そこに居るとしか考えられないのだと。

「尚王はきっとこの中にいる。蓮がキョーコを奪われまいと無意識に発した力に飛ばされて・・・」

外宇宙では、時間も空間も歪む、と聞いた事がある。一度入ってしまうと、自力で出てくる事は不可能な暗く冷たい場所。だからこそ「黒卵の捨て場所」になる訳だけれど・・・。

「どうか、尚王を呼んでやってくれキョーコ。尚王は、ここで、君の故郷で・・・もしかしたら何処にいても・・・人間界にいる君を想っていたはずだ。彼が君を呼んでいたこの場所から、キョーコが呼べば!彼はきっと応える!!」

そう言うと、なんと前王様がキョーコの前で土下座を始めた。キョーコは私の腕から慌てて離れ、前王様に寄り添う。

「何をしていらっしゃるんですか!!頭を上げてください!立って下さい!!!」

前王様が、さらに床に頭を擦り付ける勢いで、言葉を続ける。

「尚王がこのまま帰って来れなかったら・・・尚王は『失道』する。尚国が五枚翼の王を失えば、蓮も・・・無自覚だが「尚王殺し」の重罪で『失道』してしまうっ!キョーコには怖く、辛い思いをさせるかもしれないが、どうか蓮の為、蓮国の為にも、尚王を呼び戻してくれ!君にしかできないんだ!頼む!!」

(尚王捜索が・・・蓮王の命にまで関わっていたなんて!)

私は、自分が想像を超えた重大な場面に出くわしている事に目眩がした。

***

SIDE KYOKO

目の前の黒い球体。それが堪らなく恐ろしい。

相手は1ミリだって動いていない、それなのに、今にも私を飲み込んでしまいそうで・・・。直視することすら躊躇われ、顔を背けて目を閉じる。

「キョーコ、そっとでいい・・・触れてくれないか?」

前王さまの声は耳に届くけれど、目を開けることもできない。
私が尚王を見つけられなければ「蓮妃」を放棄するよりも悲しい事が起こる。それは頭では十分、分かった。

でも・・・あの暗闇は・・・まるで、私が過去に犯した罪の様。
私が黒卵だったということは、私は人間界で何か重い罪を犯し、翼が真っ黒く染まっていたはずで。ずっと、考えないようにしてたけど・・・心のどこかで ”この世界の為に自分を捨てて生きる事で、その罪が償えるんじゃないか?” 自分が、そう考えていたに気付かされる。

(きっと、アレに触ったら、私がどれだけ罪深かったか思い知ってしまう)

最初は、本当に、純粋に、母親や人間界の事が恋しかった。帰りたかった。でも今は。私が母親や人間界を想うのは、私は、人を愛する事も、愛される事も・・・許されていない罪人で・・・蓮王様と気持ちを通じ合わせる・・・そんな事など許されていないのだ、と、自分を戒める「枷」だった事に気付く。

私は・・・本当は外宇宙で自分の罪を永遠に懺悔し続けるはずだった。その罪を知るのが怖い!

(他の事なら何でもするから許してほしい)

そうして暫く黒球から目を背けていたけれど・・・徐々に緊張が解け、今更ながらに恐れる自分に自嘲する。

(私はコレに触れる以外、望まれている事などないのに・・・)

これに触れる事から本当の懺悔と償いが始まる。そう思い必死に気持ちを奮い立たせて目を開く。目の前には、尚王が私のためにいつも用意してくれていたというお茶。

(今度は私が貴方を呼んであげる)

そうして、私がやっとの想いで黒球に手を伸ばし、触れた時、

----それが、私の罪が赦された瞬間になった

***

SIDE REN

父親から、また手紙が届いた。それには、いつも一行、

『尚王捜索は順調だ。キョーコは元気だ、心配するな。 父』

としか書いていない。「俺と少し離れて考えたい事がある」そう、父が言った事を裏付けるかのように、キョーコからの手紙は無かった。

(俺は・・・キョーコの事で、何か見逃していたんだろうか?)

そう言えば、どうして啓国を目指していたのか・・・それも謎のままだった。でも、蓮国では前向きに暮らすキョーコ。俺を拒否するような言葉や態度が示される事など無かった・・・はずだ。

(キョーコは、少なくとも王宮に来てから、理想的な蓮妃だった・・・)

俺は、不必要なほどに素晴らしい自分の記憶力を駆使して、キョーコと交わした会話、その時の表情、その全てを過去に遡りながら思い出していた。

(何を見逃してしまったのか・・・)

何度記憶を反芻しても、答えは出ない。でも答えが出なければキョーコに会いに行ってはいけないような気がして・・・俺はただ悶々と悩む事しかできなかった。そんな中、また手紙が届いた。またいつものヤツか、既に俺をイラつかせる対象になりかけていたそれを開くと、

-----

キョーコと私の大活躍で尚王が見つかった!尚国の「高山茶房宮」まで来るように。美味しい茶を飲みながら待ってるから、急いで来なくてもいいぞ? 父

PS. よくキョーコを追いかけ回すのを我慢したな!流石だ!

心配をお掛けしました。私を迎えに来て頂けますか? キョーコ

-----

俺は、最後に付け加えられた一行に目が釘付けになった。

---- キョーコが俺を呼んでいる!!!




蓮王再登場なるも、未だ、再会ならず。

蓮の翼(23)

SIDE KYOKO

「そうと決まれば、長逗留に向く宿を探さなくては、な!」

(やはり、食事の質と量が問題だ・・・)
難しい顔で前王様が呟いていたけれど、あそこは良かった!と連れられて着いた先は、

『高山茶房宮』・・・尚王の別荘だった。

***

前蓮王が尚国に対して多大な「貸し」がある事は知れ渡っていて、一枚の翼が黒味を帯びている五枚翼の人物といえば、誰もが間違えようもなく「前蓮王様」だと分かるのだそう。

茶房宮に着いた時こそ、警備の人達が

「ここは一般の民が来るところではないぞ!」

と、私達を威嚇していたけれど、前王様が翼を広げて見せると「突然の再訪」に最初は大仰天。
その後は、最上級の礼を尽くされ歓迎されることになった。蓮国や尚国の民は、『私』を巡って二国間の関係が悪化しているのを知らず、未だに友好関係が続いていると思っている・・・

(それにしても、翼ってまるで「印籠」みたい・・・)

始めてここを訪れたモー子さんと私の為、茶房長が各部屋を案内してくれる。見せられた部屋の一つには、壁一面に茶缶が並べられていた。

「こちらに、高雄近辺の茶園で取れた全ての特級茶葉が集められております。この中から、尚王様のお好みに合わせて、茶葉をブレンドさせて頂き、献上しております」

「はぁ・・・この部屋全体が・・・すごく良い香りですね」

「ありがとうございます。さて・・・もしよろしければ、茶席を設けましたので、お食事のご用意ができるまで、御ゆるりと過ごされては如何でしょうか?」

「茶菓子はあるか?」

「とりあえず、30人分程ご用意いたしました・・・」

「そうか・・・まぁ、それでいいか。奏江は要らないよな?キョーコは一人分でいいか?」

「「いいですよ」」

隣で、モー子さんが、呆れ顔をしている。茶房長は少し驚いた顔をしていたけれど、以前にも前王様は来た事があるといっていたから・・・きっと夕飯は、何とか「量」を用意するんだろうな、と思う。

***

そうして、私達は茶房宮の中の一番高い建物の最上階に作られた、屋根と四方の柱だけの・・・いわゆる東屋に通された。そこは見晴らしが良く、日が傾いて熱を失い始めた風が通り抜けていくと、とても気分が良い。

そこに、お茶と山盛りのお菓子が積まれた大皿が運び込まれてくる。

「本日は尚王様の御苑で取れたお茶をご用意させていただきました」

そのお茶は、殆ど無色透明なのに、とても強い香りがして、口に含むと、ふわっと甘い。そして最後に、ほんの少しだけの苦味。

「ふわぁぁ、凄いですね。さっきのお茶も良かったけど、これはまた別格。こんなに美味しいお茶は始めて飲みました~」

「それは、ようございました」

「ところで、ひとつ茶が多いようだが・・・私に「おかわり」は必要だが茶杯は一つで十分だぞ?」

くすくすと、前王様が悪戯っぽく笑っている。

でもそれは私も気になっていた事で。私達3人に対して、お茶の入った茶碗が4つ。最初は茶房長が同席されるのかと思ったのだけれど、そうではなくて、それはいつまでもそのままになっていた。

「いえ、あの、尚王様から、此処でお茶を出す時には、必ず一人分多く用意するよう申し付けられておりまして・・・」

「確か、前に来た時はそのような事は無かったと思うが・・・何か特別な理由でも?」

「実は・・・何故そうゆう事をされるのかと気になって伺いましたころ、『キョーコ』様用だとおっしゃって。本日は偶然にもキョーコ様がいらしておいでですが・・・」

「ちなみに、それを指示した前国王か?それとも現尚王か?」

「現国王様が、皇太子時代に始められた習慣でございます」

前王様が、お茶菓子を食べる手を止めて仰った。

----キョーコ、尚王をここに呼ぶぞ!


***

SIDE SHO

俺は「尚王」なんて継ぎたくねー。

国王なんて朝から晩まで仕事に追われて・・・結局のところ「卵と鳥」の運び屋だろ?名前の派手さの割に地味な仕事。俺はもっと派手な翼人生を送りたいつーの!

あー、誰かもう一人、五枚翼のガキを作ってくれーねーかなぁ。大体、俺だって、ホントは四枚翼だったはずなのにさぁ。俺の翼が四枚だったら、皇太子の位なんて別の奴に押し付けられるのによー。俺は皇太子って柄じゃないって。

----物心付いた時からそんな事を考えてる、俺は生意気で腐ったガキだった。

***

初めて親父に連れられて行った人間界。それはそれなりに刺激的だった。特に「時空を超える」という感覚は、かなりテンションが上がって病み付きになりそうで。

「皇太子、何か見ておきたいものはあるか?」

そう尚王に聞かれた時、ふと思い出したのは・・・俺を皇太子という立場にする、間接的な原因になった黒卵の事。

「黒卵の子ってやつを見ておきたい」

----再会は必然だった----

俺は引き寄せられるように、同じ年だという少女に近寄り、触れようと手を伸ばす。だけど、俺の手は虚しく空を切るばかりで・・・しかも、コイツの目には俺の姿すら映っていない、そうゆうものだと分かっていてもそれが酷く苦しい。

(あれぇ?なんだか、この辺に、ぼんやり翼が見えるような・・・)

その言葉に俺の翼がさわさわと反応する。さっきまで俺に気付きもしなかったのに・・・今は俺の方を見て、その大きな瞳と視線があった・・・と思ったら、その手を伸ばしてくる。

----触れる

そう思った瞬間、その手は俺の体をすり抜けて、すれ違う・・・けれど、それが俺の五枚目の翼に触れた瞬間、

「うわっ」

体中を駆け抜ける電撃の様な喜び。
(やっと見つけた、『私』の体!私を尚国に連れて帰りたい。あの夜に浮かぶ街が恋しい!あの茶畑の香る里に帰りたい!帰りたいっ!帰りたいっ!帰りたいっ・・・・)

頭の中に直接流れ込んでくる感情。俺の翼が本来の持ち主の体を見つけた喜びに狂喜し、それは、激流となって俺の全身を巡り、『やばい』と思った時には俺の気持ちと同化していた。

----コイツを尚国に連れて帰りたい

それからというもの、俺は自分でも可笑しい程、尚国に対する愛着が沸いてくる。
アイツ・・・キョーコが憧れる尚国を、美しい緑の国として俺が輝かせてやる。あいつが帰ってきた時に、その笑顔が輝くように・・・。

それなのに

「キョーコは蓮王のモノなのだから諦めろと」尚王が言う。慎重な親父は・・・俺がキョーコの姿を見れば気持ちが募るだろうと、蓮国に刃向うかもしれないと、それ以来、俺を人間界にすら連れて行かなくなった。だから、俺は「キョーコなんてもう興味ねぇ」という顔をし、密かにチャンスを伺っていた。

俺が17歳になり、王位継承が近づくと、尚王は再び俺を人間界に同伴するようになった。キョーコはいつの間にか、翼人が集まる芸能界に入っていて、俺が久しぶりにその姿を見た時には、

----蓮王の奴が「我が物顔」で張り付いていた

どうみても、嫌がるキョーコに付き纏っているようにしか見えない。俺が見ているのに気が付くと蓮王のヤツが眼光するどく睨みつけて来る。

(キョーコは絶対に渡さない。お前にも、そして誰にも。その為なら神だって背いてやる・・・)

翼人界では「神の寵児」という称号を欲しいままにしている蓮王の、狂気を孕んだような視線・・・

(コイツに捕まったら、二度とキョーコは尚国に帰れない!)

王位を引き継ぎ、基盤を固め・・・俺は僅かな望みを掻き集めて、チャンスを伺いキョーコに手を伸ばす。一度は届いた俺の両手。・・・・なのに、俺はキョーコを手離してしまった。

(元々、俺は国王様って柄じゃないし、もうどうでもいいや)

失意の内に暗闇の中を漂っていたけれど・・・俺を呼ぶような声が聞こえてくる。

----私は帰ってきたよ?だから、貴方も帰ってきて?





ぎゃほーん、長いよ!進まないよ!蓮王様どこいった!?次回は絶対に登場!!!

蓮の翼(22)

SIDE KYOKO

尚国に着いたら、早速尚王捜索を始めるのかと思っていたら、なんと「父と旅する娘二人」という設定で、かなりお気楽な・・・物見遊山状態になっている。

「ほら、キョーコにモー子、見てみろ!この「お好み月餅」ってすごいじゃないか!月餅にお好み焼きが入っているぞ!」

そう言って前王様が屋台の「お好み月餅」に手を伸ばす。

「うっ、うまいぞ。店主!今焼きあがっているの全部くれ!おまえたちも、ひひょつたべなひか・・・」

「美味しそうね!父さん!」
「あたしは体が重くなるから嫌です!いざという時に体が動かなくなりますから!」

ものすごい勢いで「お好み月餅」が前王様の口の中に吸い込まれていく・・・のを眺めながら、私も一口頂く。甘さと、甘辛さがミックスして複雑な味だけど・・・癖になるかも。

前王様曰く、

「尚王捜索?こう見えても、ちゃんとしてるぞ?でも、せっかく捜索で色々な場所に行くのだから、ご当地の旨いものを食べずにどうする!」

ということで。他にも、尚王の長期不在が尚国の民に知られると社会不安が広がるから「それらしくない」この探し方がベストなのだそう。

「こんなんで、ちゃんと見つかるのかな?」
(協力者である私にも、いつ探してるのか分からないのだけど・・・)

モー子さんに目配せすると、

「一応、前王は在位中に「伝説の国王」と言われた名君だから・・・きっと何かお考えがあるのよ。でもまぁ、見つからなくても良いんじゃないの?私は、キョーコが「似非愛妃家」の蓮王から離れられれば何でもいいと思うし」

(モー子さん、誤解なんだけど・・・)

でも訂正するのは・・・恥ずかしくて出来そうもない。いえ、翼人の感覚だと恥ずかしい事じゃないのかもしれないけれど・・・でも、蓮国に来てから、誰もが皆、私の事を「蓮王の妃」としてしか見てくれなかったから、蓮王よりも私の事を慮るモー子さんの言動が嬉しくて、もうちょっとだけ誤解したままでいて欲しいかな、と思う。

(ごめんなさい、蓮王様・・・)

***

翼人界に来た時に着いたのは尚国だったけれど、翌日には蓮国に入っていたから、私は尚国の事を殆ど知らない。だから尚国の気候風土は学んで知識として知っているだけで。でも、こうやって実際に旅をすると、尚国と蓮国の気候の違いを、肌で感じることができる。

特に、尚国中央付近の山岳地帯を越えた「尚南州」に入ると、尚国が蓮国とは比べて気温が高いのをはっきりと感じる。日中は日差しが強すぎて、街歩きをしていると暑さでクラクラしてくる程で。だから、ここに住む人達は、昼の暑さを避け、早朝から午前中と、夕方から夜にかけて活動をしているそう。

この尚南州の州都「高雄」で私を魅了したのは、夕方から開く「夜市」だった。

「夜市」には、食べ物屋の屋台がずらっと並び、まるで日本の祭りの夜「縁日」のよう。この夜市を中心として、日中は暑さのために閉まっている店舗も営業を開始する。街には、老若男女あらゆる年齢層の人達が溢れ、明るい日差しの中の静かな街と闇夜に浮かぶ活気あふれる夜市が好対照をなしていた。

「私、小さい頃に母親に縁日に連れていってもらって!それが大好きだったんです!ここは毎晩が縁日なんですね!ワクワクします」

「そうか。私も「ワクワク」するぞ。何だか、どれをとっても旨そうなものばかりだし!ほら、あの「豚排骨拉麺」がやけに良い匂いだ。早速、皆で食べるぞ!」

「はーい」

モー子さんが慌てて止めに入る。

「もー!ちょっと待って!私はそんなに肉々しいもの食べないから!こっちの「檸檬愛玉」だけで良いわ!尚国にきて「父さん」に付き合ってたら太ったんだから!もうこれ以上太ったら疾く飛べないわ~!」

そういって指差す屋台では、鍋いっぱいにプルプルの薄黄色のゼリー盛られ、売られていた。

「うわぁ、私も後でそれ食べるー!」

「私もだっ!」

「もー!なんで2人ともそんなにテンション高いのよ!それに、何で太らないのよー!!もー、信じられない!もー!!!」

私は、プリプリ怒っているモー子さんを見て、思わず吹き出してしまった。

(モー子さんの、モーは、これだったんだ!)

***

もう1つ、私が高雄で魅了されたのが「高山茶」だった。

高雄の街は丘陵地帯の麓に広がっていて、その丘陵地には茶畑が広がり、有名な茶園がいくつかあった。私達は、その中の茶房を訪れ、茶畑を見下ろしながらお茶を楽しんでいる。

「尚南の高山茶は絶品だな」

「そうですね」

前王様とモー子さんがうっとりとお茶を飲んでいる。

(確かに美味しい!尚国に来た目的を忘れそう・・・なんだかすごく癒される・・・)

「どうだ?キョーコ。ここのお茶は翼人界でも有名なんだぞ?」

「はい。なんだか凄く癒されます」

「それは良かった」

前王様が目を細めて微笑んで下さるから、すこし照れてしまう。モー子さんも、お茶を飲みながら、ふふ、と目で笑い掛けてくれる。何だか胸の奥がくすぐったくて、この二人と居ると、少し本音を話してもいいのかな?って気がして・・・尚国に来てから感じていた事を口に出してみた。

「私、実は・・・ずっと蓮国にいる自分に違和感を感じていたんです。だから、自分は本当に翼人なのかな?本当はただの人間なのに、蓮王様の勘違いで連れて来られてしまったんじゃないかな?って、疑問に思っていて。でも、尚国に来てから、もしかしたら、私は翼人なのかもしれないって感じるんです。なんと言えばいいのか・・・雰囲気が肌に馴染むんです。それに・・・」

「それに?」

「高雄に来て、夜市を歩いていると、あんな雑踏の中なのに、自分でも驚くくらい、気分が落ち着いて。子供の頃、人間界の「縁日」に心魅かれていた気持ちとシンクロするというか、懐かしいなぁ、故郷に帰ってきたなぁ、って、気持ちになるんです」

「キョーコは元々尚国生まれだからね・・・」

前王様がほんの少し、真面目な顔で話し出す。

「私達翼人はね、とても愛国心が強いんだ。こうやって旅をすることはあっても、他国に定住しようとは思わない。だから、国王の翼数が少なくなって国が荒れ、一時的に難民になるような事があっても、生きて行けさえすれば、生まれた国、生まれた土地に帰りたいと思うんだよ。もし、キョーコが高雄に来て「故郷に帰ってきた」と感じるのなら、それは、キョーコが高雄で生まれた卵だった、という事なのかもしれないね?」

それを聞いて、私は少し申し訳ない気持ちになってしまった。すると、

「そんなしょぼくれた顔をするな。キョーコが人間界や尚国を懐かしむ気持ちは「ダメ」な事じゃない。むしろ、当然だ。誰に対しても物分かり良く振舞おうとしなくていい。蓮に対してだって・・・もっと色々な気持ちを伝えて良いんだぞ?アレは度量の広い男だから心配しなくて良い」

(まだ私が蓮王様を人間界の「俳優・敦賀さん」としか認識していなかった頃は、もっと言いたい事を言えていたような気がする・・・時々、訳の分からない地雷を踏む事はあったけど、それ以外は大人な態度だったし・・・今だって、私が何も言わないから・・・彼なりに色々気を回してくれてるし)

「私・・・言っても良いんでしょうか?」

「もちろん」
「言ってやりなさいよ!」

「取りあえず、今、まだ何か言いたい事があるなら言いってみなさい?練習だと思って」

前王様が微笑む顔に、蓮王様の面影に重なって、また胸の奥がくすぐったくなってしまう。

「あの・・・尚王を探さなきゃいけないのは分かってるんですけど・・・あとちょっと、高雄に滞在しても良いですか?」

「もちろんだとも」




そろそろ終わりが・・・見えたかな?
プロフィール

Agren

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



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