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後悔先に立たず(番外3)

番外編はこれで終わりです。
番外3 新婦の災難


キョーコは六本木のHホテルからタクシーに乗り込み、赤坂のTBMテレビに向かっていた。

「SWING-BY」の最終回放送を直前に控え、『王子様のブランチ』という情報バラエティ番組に出演し、番宣をするために。

その番組は、放送中のTVドラマや最近流行りの本や映画、グルメの紹介をするTBMの長寿番組の一つで、人気も高い。その本番を前に、

(ま、まずいわ。かなり、まずいわ)

キョーコは狼狽していた。朝から・・・『王子様』というキーワードを聞くと、メルヘン国へ旅立ってしまう自分に気付いていたから。

(しっかりしないとキョーコ!!王子様なんてこの世にいないのよ!!)

確かにヨーロッパに王家は存続しているけれど・・・いやいや、今はそんなの関係ないから!!と、自分を叱咤するものの、頭の中には、ほわわ~ん、と先ほど別れたクオンの甘やかな神々スマイルと「キョーコ姫」と自分を呼ぶ蜂蜜ヴォイスがこだましていた。

「はぅ~ん、王子様~」

ご丁寧な事に、キョーコの妄想の中では、王様に扮したクー・ヒズリとジュリエナ王妃がクオンの側にいて皆が「「「キョーコ姫」」」と、やさしく手招きをしている。

「キョーコが今参ります~」

そうしてドレスの裾を掴むような仕草でポーズを決めて十数秒。キョーコは、タクシー運転手の脅える眼差しに気付いて、はっ、と我に返った。

(あぁ~~~!しっかりしないと!「(ピー)のブランチ」は、生放送なのよ!メルヘン国に旅立っている場合じゃないのよ~~~!!)

身悶えながら、必死に自分の気持ちを立て直す。自分の「メルヘン思考」がどうすれば抑えられるのか・・・朝からずっと気を逸らそうと努力しているのに、あまり効果が上がらない事にいっそ腹を立て始めた。

(よりにも寄って、どうして「(ピー)のブランチ」なんてタイトルなのよ!!)

どうしたらNGワードをタイトルとする番組でNGワードを意識しないで済むのか。

(そうよっ!!私がこれから出演するのは、『玉子(たまご)様のブランチ』であって、決して、(ピー)のブランチじゃ無いのよ!!)

キョーコは結局、少々無理やりな言葉の置き換えをすることで、なんとか平常心を徐々に取り戻していた。


***


「SWING-BY」の「これまでのあらすじ」を紹介するVTRの再生が終わる。

レギュラー陣が、(私も見てます)とか、(どこそこのシーンが良かった)など感想を言い、それに対して、キョーコと監督が間の手を入れ・・・王子様のブランチの話題のドラマコーナーは和やかに進行していた。そうこうする内に、数分の雑談が終わり、

「・・・最後に、SWING-BYの見どころは?」

司会者がコーナーの纏めに入る。

「ノリコがフロリダの宇宙センターに辿り着いて、それまでの人生を回想する長い独白シーンは圧巻ですね。宇宙に対する熱い想いを語り口が本当に素晴らしくて・・・夢を持った事のある人間なら必ず胸が熱くなるというか・・・共感して頂けると思います」

監督がキョーコを見ながら、その演技を褒めちぎる。

「/// 監督・・・ありがとうございます。
今回の海外ロケで初めてスペースシャトルの発射台を見たときには、私も本当に胸が高鳴って仕方が無くて・・・少しはノリコの気持ちが掴めていたと思いますので、皆さんに共感して頂ければ嬉しいです!」

「SWING-BYの最終回は来週の火曜日夜9時からです!お楽しみに!」

キョーコと監督を映しているカメラのライトが消え、司会者達にカットが切り替わった事が知らされる。

「さて、次のコーナーは・・・現在公開中の映画興業ランキングでーす!」

司会が間髪入れず、次のコーナーの紹介を始めた。目の前のディスプレイには、現在、視聴者が見ているVTRが再生され、現在のスタジオの様子は放送されていない事が分かる。

「京子ちゃん、お疲れ様。あとは話を振られたら適当に相槌を打てばいいだけだから」

監督がそっとキョーコに小声で言葉をかける。

「はい、監督もお疲れ様です」

そう挨拶を返す、キョーコの心は晴れやかだった。

(頑張ったわね、キョーコ。今日は自分で自分を褒めてあげたい!)

問題無く番宣が終了し、キョーコは心から、ほっと一息ついていた。しかし、映画コーナーを担当する「リリカ」の声で、またもやキョーコの心の平安が破られる。

「今週のPICK-UPは、本日公開予定の敦賀蓮さんが出演した映画「エクセプション」でーす!」

キョーコの心臓が一瞬とまり・・・ドクンと大きく波打った。

(おおお、落ち着いてキョーコ。ここに居る人達は、だれも敦賀さんと私の事を・・・や!今は彼の事を考えるのは危険!とにかく、無心・・・ここは、生放送中のスタジオなのよ!!)

キョーコは「NGワード」の攻略に気を取られていて、今日の映画のPICK-UPコーナーで蓮の出演作品が取り扱われる事に気が回っていなかった。いきなり一難去ってまた一難の状況にキョーコは動揺するのを止められない。それなのに、容赦なくリリカが、

「敦賀さんもこれでハリウッド三作目の出演ですよね~!私も大ファンで~!アメリカでも人気急上昇中なんです! そういえば京子ちゃんは、事務所の後輩なんですよね?」

キョーコに話を振ってくる。心臓は痛みを感じるほど早鐘を打っていたけれど、それでもなんとか、

「はっ、はい。俳優としてとても尊敬できる方で、私も目標にさせて頂いている方の一人です!」

手に汗を握りながら返事をかえした。リリカは、それ以上キョーコに話を振る事はなく、他の出演者と会話をしながら映画の紹介を続けていく・・・。

(平常心、平常心・・・)

キョーコが高ぶった神経をなんとか沈静化させようと努力していた時、

「では今回「エクセプション」の素敵な出演者に特別インタビューをしてきました!VTRどうぞ~」

目の前のVTRモニターにリリコと・・・微笑を湛えた「久遠・ヒズリ」が映し出され・・・キョーコはその瞬間、雷に打たれたような衝撃と共に

---- メルヘン国に向かって旅立ってしまった。


***


「当たり前ですよ~、クオンは私の王子様なんですから~!きゃ~///」

いきなり飛び出した、その場にそぐわないキョーコの言葉にスタジオ中の人間が彼女に怪訝な顔を向ける。

そこには・・・先程までスマートな受け答えをしていた演技派女優ではなく、目がウルウル&キラキラに輝いた、もし人間にオーラと言うものがあるならば、間違いなくピンク色であろう・・・「京子」が座っていた。

キョーコの急変ぶりに隣に座っている監督も戸惑いを隠せない。

クオンの来日は、クオン初出演&敦賀蓮のハリウッド進出三作目の映画の公開に合わせての事。キョーコも昨夜までは、それをちゃんと理解していたし、「王子様のブランチ」でクオンのVTRが流れる事も分っていた。でも、昨夜から色々な事がありすぎて・・・そして、今朝のクオンの王子様攻撃の命中、そしてNGワード攻略への熱中、すっかり、クオンVTRの事が頭から抜け落ちていた。

そうして、不意に遭遇してしまったクオンの笑顔に・・・キョーコは本番中だというのにメルヘン王国に迷い込んでしまい・・・VTRが終わって、リリカが「久遠・ヒズリ」が 『とびっきり美形の紳士』 だったと絶賛するのに対して、キョーコは、先の台詞を吐いてしまった訳で・・・。

「京子ちゃん?確かに彼は王子役とかいかにも似合いそうだけど・・・」

「お城を貸し切って結婚式を挙げようね、って。きゃ~///」

もし、ここにビーグルのレイノがいたなら、キョーコの周りに飛びまわる「ピュアキョ」の群れにうんざりしたに違いない。俺が求めていたのは、こんなモノを侍らす女ではないのだ、と。

「私はプリンセスラインのウエディングドレスを着て、クオンには白いモーニングを着て貰うの~、絶対!絶対!!素敵~、きゃ~///」

「京子ちゃん!?どうしたの!?」

キョーコは隣に座っていた監督に肩を強く叩かれ、はっ、我に返る。恐る恐るスタジオを見渡すと・・・監督だけではない、スタジオ中の誰もがキョーコを、困惑だけでない、唖然、茫然、嘲笑・・・様々な表情を浮かべて見ている。

(ままま、まずいわ。わわわ、私、メルヘン国に行ってしまっていたわ~!!)

---- クオンのVTRが始まってからの記憶がない!!!!

キョーコは周囲を見渡して、絶望的な気分を味わっていた。

「す、すみません」

必死に言葉を捩じり出す。すると、進行役のリリカがその場を収集しようと、

「えっと、京子ちゃん、彼と結婚したいなんて・・・私と一緒でかなり面食いねぇ~?」

何とかフォローを試みる。しかし、記憶の無いキョーコにはそれが、フォローではなく追及に思えてしまい、動揺は激しくなるばかり。

(----とにかく否定しないと!!)

「わ、私、け、決して、クオンと結婚なんてしてませんよ?」

「え~?さっき乙女チックに語ってたわよ~?妙に具体的で・・・」

「抽象的です!すっごくアバウトです!!」

「だって・・・」

「実は幼馴染のクオンにアメリカロケで再会して、遠距離恋愛中で・・・結婚はその内にしようねって、具体的な事は何も決めていなかったんです!!」

(((((・・・・・・・・・・・・え?・・・・・・・・・・)))))

キョーコの爆弾発言に「王子様のブランチ」の収録スタジオは静まりかえっていた。

「君は・・・敦賀君じゃなかったの?」

キョーコの隣に居た監督が、すっかりここがスタジオだと言う事を忘れて声を掛けてくる。つい数週間前のフロリダロケで、キョーコが蓮への想いを告白した映像をLEMの社長の所に持ち込んだ彼は、キョーコの想いに胸を打たれていた。だからこそ、クオンとの関係を仄めかすキョーコの言葉が信じられなくて、つい・・・確認してしまったのだ。

キョーコは、遂に自分の居場所を忘れ(つつつ、敦賀さんの名前がどうしてここに!?)と、パニックに陥ってしまった。

「つつつ、敦賀さんは、無関係です!!クオンと敦賀さんは・・・良いお友達で!!とにかく!私と敦賀さんとクオンの事は、すべて収まるべき場所に収まっているんです~~~~~!!」

---------------しばらくお待ちください--------------

「王子様のブランチ」史上初の放送中断の後、何事もなかったようにグルメコーナーがスタートする。

そこに、キョーコと監督の姿は無かったけれど。

そしてその夜・・・LMEのWebサイトには、「京子」と「久遠ヒズリ」の交際宣言が掲載されることになった。





番外編というか、間奏というか・・・続きは「やっぱり後悔先に立たず(仮)」でどうぞ。
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後悔先に立たず(番外2)

まぁ、何というか・・・あまりにもお約束すぎて申し訳ない気持ちに。

番外2-新郎&新婦の誤解?


「ねぇキョーコ・・・そろそろ起きて?」

蓮の優しい声を聞く直前、キョーコは自分の素肌をするすると移動するシーツによって起こされていた。

彼女は寝起きの頭で (妙にくすぐったいコレは何だろう・・・?) とぼんやりと考えていたが、直ぐにそれが、今、彼女を包んでいるシーツが素肌の上を滑っていたからだ、と気付く。

それと同時に、キョーコは瞼を閉じたままで・・・ぐるぐると目を回し始めていた。

(ももも、もしかして、わわわ、わたし、ははは、裸!?)

彼女にとって、今この状況は、その逞しい想像力を以ってしても予想外どころの騒ぎではない。

クオンの部屋に泊まった最初の2晩、キョーコは何の疑問も持たずクオンと同じ主寝室を使っていた。大好きな妖精・・・改め幼馴染コーンとはいくら時間があっても話すことが尽きない。なのに、来日中のスケジュールが詰まっているクオンとそれなりの売れっ子女優になったキョーコが一緒に過ごせる時間は仕事が終わってから夜の寝るまでの短い時間しかなくて。

クオンは女性に興味がない、と信じ切っていたキョーコは親友の琴波奏江とこの部屋に泊まったら取るであろう行動を取っていた。

クオンと結婚してもそれは変わらない・・・はずだったのに。
3日目の夜、全く別の意味で「クオンヒズリ=敦賀蓮」のベットに入る事になろうとは!!

(ままま、まずは心を落ち着けて)

そう自分に言い聞かせ、キョーコが一生懸命、精神統一に努めていたとき、

「7時を過ぎているから・・・朝ごはんを食べるならそろそろ起きないと・・・」

蓮は、そう言いながら少しキョーコの髪をクルクルと弄んでから頭をなで始めた。
その仕草に、キョーコは昨夜の事を思い出してしまって、耳の奥でバチッと脳内回路がショートしてしまう音を聞いた気がした。

(ははは、初めてなのに・・・ななな、なのに、あんな・・・)

蓮が触れた所はどこでも・・・小石を投げ込まれた水面のように・・・波が生まれ、体の中を、外を、共振させながら・・・遂には高波になってキョーコを攫って行ってしまった。

(わわわ、私の体は見かけが破廉恥なだけじゃなかったのねーーーー!!)

すっかり、目が覚めているのに・・・昨日、自分が痴態を晒したかもしれないという恥ずかしさと恐ろしさで、どんな顔を蓮に向かってすれば良いのかわからない。キョーコは目を開けることはもちろん、まるで死体が転がっているかのようにべットの上でフリーズしてしまっていた。



蓮は声を掛けても、ピクリとも反応を示さないキョーコに (昨夜の事を思えば彼女が死んだように眠っているのは当然で、無理やり起こすのは忍びない・・・) と思いつつ、でも、朝食を抜く位はまだしも、仕事に遅刻をしたら、キョーコが傷つくと思うと、起こさない訳にはいかない、と思った。

「もう朝だよ?起きませんか?」

そういって蓮はキョーコの肩を優しく揺さぶり始めた。その振動に・・・すっかり石化していたキョーコが僅かながら思考回路を回復させ考え始める。

(おおお、起きる・・・そうよ、起きなくちゃ!!それで・・・起きるってどうするんだっけ?)

キョーコは普段、自分がどうやって起きているのか、まずそれを復習することから始めていた。今、自分はいつもの様に自分の部屋に寝ていて・・・そう、いつもと変わらない朝にいつも通り起きればいいのよ!と一生懸命、自分に暗示を掛け始める。

(まずは、目覚まし時計が鳴って・・・5分後にまた鳴りだすからそれを合図に・・・)

そこで、最初から躓いてしまった事に気付いて、再び混乱状態に陥った。

(!!!目覚ましが無いと起きられない!!!)

そうキョーコが思い至ったそのままに、彼女は、

「目覚ましが無いと起きられません~~~」

まるで独り言のように、弱々しく訴えた。



(・・・目覚まし?)

そう言ったまま、相変わらず目は閉じたまま微動だにしないキョーコに、蓮は(寝言?)と思ったけれど、良く見ると閉じた瞼の下で、キョーコの瞳がキョロキョロと動いている。

(・・・もう、起きてる?)

では、何故いまさら、目覚ましがどうのだと、キョーコは訴えるのだろう?蓮は考えて・・・そこで、ふと、キョーコが妖精とかを信じる夢見る少女であったことを思い出す。

(そうゆう事だったら・・・)

蓮はキョーコの肩を軽く押してその体の向きを仰向けに変える。それから、彼女の顔を両手でしっかりと固定して、口付けを贈り始めた。そのいきなりの行動に、すでにパニックに落ちいって混乱していたキョーコは「パニック状態」の底が抜ける、そんな奇妙な感覚を味あわされることになる。

「目を覚まして・・・キョーコ姫?」

暫くして、やっと解放されたキョーコに向かって蓮が囁いた時に、キョーコの目は大きく見開かれていた。

「おお!私の口付けで、姫様が『目覚めて』下さった!なんと愛らしいその瞳!!」

蓮は、実際に自分がキスして目を覚ましたキョーコと目があって・・・少々照れてしまって・・・それを隠すために、芝居染みた口調で、そう言ってしまった。

「何するんですかーーーー!」

もし目の前の彼が敦賀蓮の髪色と瞳だったら、キョーコは、からかわれた!遊ばれた!!と憤慨しながら、そう叫んだかもしれない。しかし・・・実際はしなかった。

目の前にいるのはクオン・・・金髪碧眼の・・・童話の中の王子様そのままの姿。しかも、只でさえ内から滲み出る幸福感を振り撒いているのに、朝日を浴びて、眩しい姿のキラキラ度が200%くらいアップしている。その姿で、神々スマイルを超至近距離で炸裂させていて・・・どっかーんと、キョーコの中で、何かが吹っ飛んでしまった。

(おおお、王子様だぁ~~~!!)

そのままメルヘンの国にかつて無いほどの長旅に出てしまう。そして、現代日本とメルヘン国の境界辺りを彷徨いながら仕事入りし、そこで、再び

----後悔先に立たず

そんな教訓をキョーコは噛み締めることになる事態に陥っていた。






殆ど続編のような勢いですね。


後悔先に立たず(番外1)

どーしてこんなにテニオハに間違いが多いのか(修正しました20:50)
まだ、例のブツはアマ○ンから届きませんが・・・取りあえず公開できる範囲で朝チュン話を・・・。今までAgrenは視点を固定して、自分を一人称で書いていましたが、視点は固定風味(?)ですが、第三者視点の習作をどぞ。
番外1-新郎の独白


(んっ・・・眩しい・・・)

朝日がダイレクトに差し込む窓を見て、蓮は目を細めた。カーテンを開けっぱなしで寝てしまった・・・部屋の床とベットの一部に、くっきりと光の窓が映っている。カーテンを閉めてから寝る、そんな些細な余裕も・・・昨夜の二人にはなかった。

(取りあえず、レースのカーテンを・・・)

自分の背中側にあるサイドボードにカーテンの開閉ボタンがあったはず。
胸に囲っている新妻は窓を背に寝ているから眩しくはない・・・だけど、目が覚めた時にカーテンが開いているのを見たらきっと恥ずかしがる・・・蓮は自分のためではなく、キョーコのためにカーテンを閉めなければ、と思った。

ホテルの最上階にあるスイートルームを外から覗うことは出来ない。でも、外界に面した寝室の壁が全て窓でできている・・・この部屋の「開放感」は抜群だったから。

キョーコを起こさないよう、そっと彼女の頭の下の腕を抜き、束の間の代役として枕をあてがった。そうして、振動が伝わらないよう蓮はゆっくりと体を反転させ、お目当てのスイッチを押せば、ブーンと僅かなモーター音が響いて部屋に差し込む光が、ふわりと柔らいだ。

(7時か・・・)

「朝食は一日の基本です!」と主張するキョーコに従うなら、そろそろ起きなければならない。
でも、あと少しだけ・・・と、もう一度、キョーコの方に向きを直すと、横向きで眠る・・・彼女をすっぽり覆っていたシーツがするりと落ちて、肩から胸元があらわになった。

(・・・本当に・・・綺麗だよなぁ・・・)

元々、キョーコは肌の美しさに定評があった。親友の叱咤で美容に気を付けるようになってからは、その輝きは更に増していて。日本人としてはかなり色白な肌にはシミ一つなく、キメが整っている。

(・・・まるでバター・・・みたいな触り心地、だったんだ・・・)

昨夜・・・触れ始めた時にはサラサラとしていて、なめらかに手を滑らせる事ができた彼女の肌。でも、暫くすると・・・蓮が触れた所がうっすら溶けて手に馴染む、そんな感触に変わっていった。

蓮の手は、するするとシーツをキョーコのウエストあたりまで下ろしていく。そうして、肩から、背中、わき腹へ、もう一度、彼女の肌の感触を確認するために手を滑らせてみる。今はまた、シルクの滑らかさを取り戻していたけれど、蕩けるような肌触りもしっかりと蓮の頭の中で蘇っていた。

『このままだと、俺の熱で彼女が溶けて無くなってしまうかもしれない』

人間が溶ける・・・冷静になった今なら・・・なんてあり得ない事を考えたんだ、と蓮は思う。

それでも・・・文字通り千の夜を超えてやっとキョーコに許された彼はいつもの冷静さを欠いて・・・昨夜、体の中で渦巻く熱流に彼自身が溶けてしまう感覚に襲われた時・・・このままだと、俺よりも柔らかいモノで出来ているキョーコは溶けて跡形もなくなってしまう・・・そんな事を本気で恐れていた。

だから蓮は、キョーコを溶かしてしまわないよう、それでいて自分自身も溶けてしまわないよう、慎重に彼の熱を彼女に移していった。それは期せずして、この上なく繊細な愛撫としてキョーコの上に降り注ぎ、彼女の感覚が一気に花開いた事を、彼が知るのはもう少し先。

(それにしても・・・)

半年前、トリンプルのCMが公開されるまで・・・蓮を含めて世間はキョーコを典型的な少女体形だと理解していた。全体的に薄い印象の体に長く伸びやか手足。でも本当は・・・こんなに優雅な曲線を結んで作った女性らしい体。どこをとっても彼女の稜線は完璧としか言いようがない。

蓮は、別に体形なんてどうだって・・・と思いながらもキョーコの美しい躰につくづくと見惚れてしまう。ずっと前から彼女以外に目移りした事なんてなかったけれど、これじゃぁ・・・益々・・・。

結局、蓮はキョーコの腰の辺りでわだかまっていたシーツを足元まで引き下ろして、まるで奇跡のようだ・・・と妻の体をうっとりと眺めていた。もし、キョーコが目を覚まして蓮を見たら・・・夜の帝王!と叫ぶであろう・・・熱のこもった視線で。

「ぅん~」

キョーコの体が僅かに震え、蓮は我に返った。シーツを剥ぎ取られ一糸纏わぬ姿で横たわるキョーコの肌が朝寒を感じ取ったのだろう。無意識の内に背中を丸めて小さくなった。

(・・・彼女は俺が朝から自分の裸を眺めていると知ったらどう思うだろうか・・・)

キョーコが慌てて取り乱すさまを想像し・・・蓮はクスクスと笑いながら、そっとシーツをキョーコに掛け直した。


「ねぇキョーコ・・・そろそろ起きて?」







続きます。こうゆう話を朝チュンという・・・Agren今回初めて学びました。朝チュン・・・朝起きてすぐにするチュウの事だと誤解していました・・・。

追記 恥ずかしい、かなり恥ずかしい。こんなんでホントに裏が書けるのか・・・orz。

あとがき-後悔先に立たず

後悔先に立たず、やっと終わりました。

始めた当初は蓮さんの誕生日を意識していませんでしたが、日程的にそんな感じになって、一時期は蓮誕に間に合わす!!と、かなり話を端折って頑張りましたが、結局、誕生日には間に合わず・・・でも、

蓮さんの誕生月に「バージンのままのキョコさんとの結婚初夜」をプレゼント!!


なのです。
自分で言ってて、なんだかAgrenの脳みそ・・・どっか溶けてないか?と思うところですが。

今のところだと番外編は2本位・・・書くことになるでしょうか。

さて、今回の話、元々の構想は、

①キョコさんがナイスバディになってしまってモテモテ。
②蓮さんが、誰にもキョコさんを渡したくなくて、意を決して告白。でもキョコさんは、敦賀さんも体目当てなの?と思って拒否。
③そんなこんなでハリウッドスターのクオンヒズリ来日for京都ロケ。
④キョコさんもハリウッド映画に参加して、クオン=コーンだと分って仲良しに
⑤そのまま京都ロケ中に勢いで結婚(クオンはキョーコに興味が無さそうな態度)結婚後にクオンに迫られてキョコさんが(うっかり結婚なんてするんじゃなかったー!私は実は敦賀さんが好きー!超後悔ー!!と叫ぶ)

という感じ。そう・・・5話で終わるはずの話だったのです。

ちなみに、最初の舞台を京都にしたのは、コーンと思い出の場所で再会させたかったのもあるのですが、

キョコさんに「うっかり」結婚させるのが目的でした。

今回、下調べするうちに、アメリカ人と日本人の国際結婚は、アメリカでするよりも、日本でした方が遙かに簡単だということが分りまして。なので、結婚する場所は日本で決定。本籍地であれば、戸籍謄本を取らなくても、結婚できるので、クオン側がちょいと準備するだけで違法行為一切ナシで、あとは、キョコさんが婚姻届にサインするだけ、という状態に持ち込めるはずなんです。

キョコさんの本籍がある役所を通りがかった所で・・・ちょっと用事があるんだwと、クオンがキョコさんを連れ込んで、取りあえず、ここにサインして楽になろうよ?なんて、提出可能直前の婚姻届が出てくる・・・最上姓の三文判もなぜかクオンが持っていて(笑)・・・な事を考えていたりして。
(もちろん、日本での結婚はアメリカでも効力があります)

でもまぁ、キョコさんがなぜ結婚したくなったのか?と理由を考えているうちに、少し話がずれたというか。それにキョコさんだって、男性に追いかけまわされたら、何らかの対策をするだろうし。

宇宙飛行士のムロイさんの「結婚したら楽になった」はAgrenの知合い(女性)の実話です。その方は、結婚して名前が変わると困ることがあって事実婚をしていたのですが、旧姓使用が認められて晴れて入籍してみたら・・・結婚の意外なメリットを発見した!!、と語ってくれました。




あと、クオンの髪と瞳の色に関してなのですが。
レイノが言っていたので、クオンが金髪なのは間違いないと思うのですが、瞳はBJの「底光りする緑色の虹彩」という記述があるだけで。

こちらも少し調べてみると、髪&眼&皮膚の色(色素量)は連動していて、金髪(色素量が少ない)なら、瞳は青(同じく色素量が少ない)に普通はなるそうです。

緑の目はメラニンが適度に必要らしく、そうなると髪は金髪にはならず・・・ただ、北欧とかに天然の金髪緑眼(緑色でも色素量が少ない)の人が居るみたいですが・・・それは珍しいそうで。でもまぁ、若い白人(一部の日本人?)女性にとってブロンドは憧れなので、(人工)金髪+多様な瞳の色が街には存在しますよね・・・。

取りあえず今回、碧眼・・・碧眼は必ずしも青色の目を差すわけではないので、そう誤魔化しましたが。ねぇねぇ、どうなの!?と、疑問に思いながら書きました。

それに、ホントに金髪なら、理屈から言えば、肌の色もかなり白いはずで・・・カラーリングとカラコンだけで日本人になるには無理があるんじゃないの?とか。やっぱりクオンの目は緑かヘーゼルで(色素量が多い)、髪はブラウンに近いのかなぁ・・・とか。(子供時代だけ金髪で、大人になってブラウンになるはよくあるみたいだし)

でもまぁ、少女マンガだから、なんでもありかな?

後悔先に立たず(13)

やっとひと段落・・・いつも以上に長いですよ~。

SIDE REN

成田から彼女に家に直行し、どれ程長い間、強く、彼女の事を想っていたか伝えた。
彼女を抱きしめる腕の力よりなお強く、自分の胸が締めるけられるのを感じながら。

でも、最上さんからは・・・

「敦賀さんの事、演技者としては尊敬してるけれど、男としては見ていません!」

今まで・・・そうとしか思えない態度で俺に接してきた彼女。それを、そのままに言葉にされ、俺の胸は深く抉られる。

----理性は焼き切れる寸前

どうせフラれるなら、”ヤツ”のように憎まれて彼女の心の中に残りたい・・・そうゆう考えが頭をチラチラ過ぎる。でも・・・俺をこの行動に駆り立てた社長の言葉「愛は卑怯であってはならない」それが最後の防波堤になり、なんとか「クオンとの結婚は思い留まって「敦賀蓮」との未来を考えて欲しい」と言葉で懇願し続けた。以前(恋を捨てるのは女優を極めるため)と言っていた彼女。だから、

「俺が君を空っぽの人間になんかさせない!女優として高みを目指したいのなら敦賀蓮のあらゆる技術を君に伝える!!」

彼女にとって一番魅力的であろう誘惑を繰り返してはみたものの・・・それでも・・・彼女の首が縦に振られることはなかった。


***


(敦賀蓮がフラれた以上、クオンとして結婚するなんてできない・・・)

もし、いつか俺が「久遠ヒズリ」だと彼女が知ることになったら・・・彼女は俺に「卑怯者」の烙印を押して、存在を心の中から抹殺してしまう・・・そんなの耐えられない。だから社長に「近い将来『敦賀蓮=久遠ヒズリ』であると公表しようや」と言われていたけれど、敦賀蓮は日本の芸能界を引退し・・・その存在を終わらせてしまえないだろうか・・・と、相談するつもりで訪ねた。

----彼女に男として意識されていない「敦賀蓮」

そう思うと、長い間演じてきたはずの「彼」を終える事に、自分でも驚くほど寂しさも覚えなかった。

それなのに。社長から見せられた映像には・・・俺を生涯一人の男と決めたような発言をする最上さんが映っていて。直ぐにその場に現れた最上さんを目にして・・・気が付くと、最上さんと言い争いをしていた。クオン!クオン!と連呼する最上さんに無性に腹が立つ。

(クオンは俺だ!BJの時には容易くそれを見破った君が何故、今回は気付かない!!)

イライラがが募って自分でも理不尽だと思いつつも、気持ちがヒートアップする。それを一気に氷点下に押し下げたのは社長の言葉。

『最上君がクオンと結婚したいというんだ。結婚すればいいじゃないか・・・俺が許す』

(「愛は卑怯であってはならない」って言った本人が、今度は何を・・・・・・!!!)

最上さんが逃げ出して・・・一人、怒りに身を震わせていた俺に、

「あの最上君があそこまで言ったって事は、敦賀蓮への気持ちは中途半端じゃないんだろう。クオンへの気持ちはそれ以上だと彼女が言うんだ。そこに愛があれば何でもアリだ!!」

「・・・」

社長に会いに来た時には「久遠ヒズリとして、最上さんと結婚するなんて卑怯だ」と思っていた気持が徐々に揺らぎ始める。

(クオンが本当の俺だし・・・彼女がクオンを敦賀蓮以上の気持ちで想ってくれているのなら・・・)

まず、最上さんと結婚して、万が一にも他の男の所に行かないように釘を差してから・・・実は敦賀蓮だと伝えれば、最初こそ驚いて怒るかもしれないけれど・・・結局は喜んで受け入れてくれるんじゃないか?、という甘い期待が沸いてくる。

そうして、考えが纏まらないまま・・・結局、俺が久遠ヒズリとして来日する日を迎えてしまった。


***


SIDE KYOKO

私は、ショータローに捨てられて自分が空っぽだった事に気付いた。

でも、私は・・・お芝居を通じて、自分自身の手で新しい最上キョーコを作っていける。恋は、そんな自分を再び空っぽにする天の災い・・・ショータローに告白されて心が揺らいだ時にも・・・そう思っていた。でも、

(----敦賀さんに告白されて気付かされてしまった・・・)

いつの間にか、私は敦賀さんに恋をしていて・・・彼が誰よりも大切な人になっていて・・・片思い確定の恋に絶望して・・・その恋心を何度も封印し、無かった事にしていた事を。

「坊」の時に聞いてしまった、

『大切な人は作れない・・・どこに居ても』

その言葉のまま・・・好きな人が居るはずなのに・・・ずっと独りの敦賀さん。そんな彼に少しでも寄り添う為に、

(----私も独りでいて・・・敦賀さんの気持ちを理解したい。敦賀さんが「大切な人」を作る日が来ても、同じ演技をする者として側に居られれば幸せ)

だから、もう誰にも恋をしないと思っていた事を。

それでも、母親に疎まれ、ショータローに捨てられた私は、人の好意に弱くて・・・いつか独りの寂しさに流されて・・・側にいる誰かの手を取るかもしれない・・・そんな自分が嫌だった。だから、宇宙飛行士のムロイさんの話を聞いてから、もう二度と誰にも私の心に触れないように、結婚をしてしまおうと思ったのに。

(敦賀さんっ!何で、もっと早く言ってくれなかったんですか!!どうして、私をコーンに引き合わせてしまったんですか!!!)

大きな木だって、最初は小さな種子から育つ。

(・・・この世にあるものは・・・何でも始まりが必要で・・・)

敦賀さんだって、嘉月の恋の演技をするために、彼自身が恋を経験して・・・その経験を「種」に嘉月の恋を育て上げた。

私にとって「コーン」との想い出は、私が人間らしい温かい気持ちを生み出すための大切な大切な「種」。もしコーンを傷つけたら・・・私は、暖かいモノに通じる全ての演技を失ってしまうかしれない。敦賀さんがいくら演技指導してくれても、種がなければ何も育たないよ・・・。

(----それに・・・それだけじゃ済まないかもしれない・・・)

敦賀さんへの・・・この恋する気持だって・・・コーンの思い出が無かったら、どんな風に変化するか・・・自信が持てない。

コーンとの結婚の約束は破れない。
例え、それが私を乞うてくれた敦賀さんを拒絶することになったとしても・・・。私は敦賀さんが帰った後の部屋で一人咽び泣いていた。


***


とうとうクオンが来日した。

事前に彼から届いていた短いメール:

「○日から3泊の予定で六本木のHホテルのスイートに泊ります。俺の方は結婚に必要な書類を持参します。ゲストルームもあるので、もし君にまだ俺との結婚の意思があるのなら泊まりに来て下さい」

私の覚悟はとうに決まっている。だから、私も書類を揃え、こうしてクオンに会いに来ている。久しぶりに会うクオンは相変わらず、光の妖精・・・の王様みたで。

「久しぶり、会いに来てくれて嬉しい」

そう言って、ぎゅっとハグされて頬にキスを贈られる。一瞬だけ、敦賀さんの顔が頭をよぎり・・・こんな時に・・・とうろたえてしまっていたら、クオンは私が単に照れているのだと勘違いして、

「アメリカでは、これは挨拶だから・・・ね?」

と、くすくすと笑っている。

(キョーコ!しっかりするのよ!!)

それからクオンは、また、私が右手に付けている指輪を抜き取って左手の薬指にはめ直し、

「ホテルで、俺と一緒にいる間は左手に付けていて?もう一度、今度は・・・俺を目の前にして・・・結婚の事、ちゃんと考えて?俺が日本に滞在する最後の晩に、またキョーコの気持ちを聞くから・・・」

そういって、左手をそっと握られる。

「うん・・・私、真面目に考える」

そう答えながら、私はクオンの優しさを噛み締めていた。


***


そうして・・・3日目の夜。

「最上キョーコさん、俺と結婚して貰えますか?」

仕事を終えてHホテルのクオンの部屋に戻ると・・・大きな薔薇の花束を抱えたクオンが・・・待ってましたと私の前に膝まづいて、まるでプロポーズみたいな台詞を言った。

(さすが、アメリカ人!いえ、クオン!金髪碧眼の外人が、こんな気障なセリフを日本語で言っても違和感が無いわっ!!)

私は、思わず感動してしまったけれど、クオンの瞳が不安そうに揺れたのを見て・・・

「もちろんです!私っ!この結婚でクオンを幸せにしたいです!!」

と、答える。そう、クオンには幸せになって欲しい!だから、クオンを安心させたくて続ける。

「でも、もしクオンに好きな男性ができたたら・・・お付き合いするのは自由ですよ?」

「・・・え?」

クオンの驚いた顔。

「私、クオンが浮気した位で離婚だなんて言い出さないから!!そもそも、浮気じゃないし・・・クオンにとって、この結婚が邪魔になったら、すぐに無かった事にするから・・・心配しないで?」

なるべく、慎重に、クオンに気持ちが伝わるように言葉を選ぶ。

「アメリカでは、同性同士で結婚できるみたいだし・・・もし、クオンが本当の恋人と結婚したくなったら、私はいつでも離婚に応じるから・・・。クオンは誰より優しくて素敵な人だから・・・男の人の方が好きだからって・・・最初は、驚かれるかもしれないけど・・・きっと最後には皆、認めてくれると思う・・・」

「・・・」

クオンが無言で下を向いて・・・肩が小刻みに震えている。私は、クオンの幸せを一番に考えいることを伝えたくて、私の前に膝ま付いたままの久遠の頭をそっと抱きしめた。

「クオンの幸せが何より大切」

だから何も心配しないで?

「キョーコちゃん・・・ありがとう。じゃぁ・・・今夜、結婚しようか?」

クオンの声が、やけに低く部屋に響いていた。


***


ホテルからタクシーで10分程の場所にある、港区役所の夜間窓口に婚姻届を出してきた。

(窓口の人が、クオンの姿を見て驚いていたわ・・・)

当直の人がクオンを見た時のあの顔!夜だと言うのに、金の髪は淡く光っているみたいにキラキラしてしていて・・・まるで芸術作品がそのまま動き出したような美形の登場に、中年男性が(ごめんなさい!)頬を染めて見惚れていたわね・・・

「・・・これで、君は僕のもの」
「わっ」

思い出し笑いを堪えていた私に、急に後ろからクオンが圧し掛かってきて驚いてしまう。

(大型犬がじゃれついてきているみたい・・・)

婚姻届を出すまで、私も・・・多分クオンも・・・ちょっと緊張していて、私たちの間には微妙に張りつめた雰囲気が漂っていた。でも、いざ正式に届を出してしまった後には、雰囲気が和らいだ気がする。こんな風に気を許したような甘えた態度をとるなんて。

クオンの長い手が私の肩に掛かって、おへその上あたりで手を組んでいる。顔は私の頭の上あたりに軽く乗せて。そうして、

「Kyoko・・・My angel・・・」

クオンが・・・私の中の彼のイメージでは到底発するはずでないであろう・・・蕩けるような声で囁き始める。

(ままま、まい・えんじぇる!? いいい、今、どどど、どこから声が出た!?)

「My sweet heart・・・」

(すいーと・はーと!?)

「My Love, honey, darling・・・以下同義語繰り返し・・・」

(・・・<(@ @)>・・・)

「I love you・・・babe」

(クオンが、なんだか変!!!)

彼のおかしな言動にアワワと目を泳がせていると、

「ねぇ、俺の事も、My honeyって呼んでみて?」

そう言って、耳元で囁く声が何だか・・・やけに甘いです!!

(クオンが壊れた~~~~~~!!!)

私は、そう思わずにはいられなかった。

「く、く、クオン?ど、ど、どうしちゃったのかしら?も、もしかして、私をからかって遊んでる~~~!?」

「・・・からかってなんかいないよ?だって、恋人同士だったら当然だし結婚したらなおさら。俺はね、君とこんな風に呼びあえる・・・本当の・・・愛し合う夫婦になりたかったんだ」

(・・・・・・本当っぽく見える・・・っていう、私の聞き間違い・・・よね?)

「えっと、私たちは愛し合ってる夫婦ですよ?その・・・人前でなら・・・クオンの事をhoneyって・・・呼ぶように鋭意努力します・・・」

「・・・嘘吐き」

クオンの声色が1オクターブ下がったような気がした。私・・・もしかしなくても・・・クオンを怒らせてる?私だって女優だもの!はにぃ・・・って呼ぶくらい・・・。

「さっき、俺に、いつでも離婚に応じるって。好きな男ができたら、そいつと付き合えばいい、って言ったくせに・・・」

「え?」

「君の愛っていうのは、相手に好きな奴ができたと言われれば、笑って手放してやれるものなんだ?俺はね・・・そんなの赦せないよ」

「へ?」

クオンの言っていることが理解できない。だって、クオンは・・・私達の結婚は・・・

「俺は・・・何があっても離婚に応じないから・・・浮気も絶対に駄目・・・君は一生、俺だけのもの・・・他の男になんて渡さないから・・・」

低く唸りながら・・・私の前で軽く組んでいた手がクロスして、きつく抱きしめられる。ちょっと待って?これじゃまるで・・・

「クオン?あの・・・まるで私の事を「ちゃんと」好きみたいに聞こえるんだけど・・・」

頭の中に浮かんだ疑問がつい口を出てしまう。

「そうだよ・・・何度もキョーコに言ったじゃないか・・・」


***


クオンが私にを好意を抱いている・・・そう伝えられて私は混乱している。

「おおお、落ち着きましょう。クオン」
「落ち着いた方が良いのはキョーコだと思うよ?」

Hホテルの、広いスイートルームの中、私は敦賀さんの家のそれより更に大きいベット・・・の下に逃げ込んでいた。私がぎりぎり入れる高さのベット下スペース。その真ん中まで転がり込んで・・・ここなら、クオンは入って来れないし、あの長い手足も届かない。

「キョーコ・・・そんなところに入り込んでいないで、出てきなよ?」

ホテルの床に二人して寝転がって・・・なんて間抜けな・・・。

「クオンは、じょじょじょ・・・女性には興味が無いって」
「そんなこと、俺の口からは一言も言っていないよ?」

確かに・・・敦賀さんはそう言ってたけれど・・・クオンからは聞いた事がなかった・・・かも。

「私が男の人と付き合って良いって言ったときだって、否定しなかったし」
「君が勝手に、俺の沈黙を誤解しただけだろう?それに、俺は・・・ちゃんと君は「incredibly sexy」だって言ったはずだけど?」

(せくしーって、最近日本語で嫌と言うほど聞いていたから軽く聞き流してたけど!英語の意味なの~!?(いや、クオンはアメリカ人だしっ!))

「ねぇ・・・俺の幸せが何より大事なんでしょ?だったら、そこから出てきて・・・?」

私は、さっきまで、50cm上で、クオンに洋服を脱がされていて・・・やっと逃げ込んだこの安住の地から・・・絶対に出られない!!

「今夜は新婚初夜なんだから・・・ね?」

(こ、この妙にエロい男の人は誰~~~??? 10歳の・・・コーンを私に返して~~~!!!)

「君を抱かせて・・・」
「○×▼あ;sんmggr~~~~~!!!」

ベットの下で、自分の絶叫が籠って・・・頭がクラクラする。

「・・・君がなんと思おうと・・・俺達はもう正式な夫婦なんだから、俺には君を抱く権利がある。
もう・・・君を相手に綺麗事を並べるのは止めたよ。正攻法が通じない事は嫌という程、味あわされたし・・・今日だって・・・いつでも君は・・・俺の予想を遥かに超えて逃げて行くんだから・・・」

そう言って、クオンが立ちあがり、ベットの端に手を掛けた・・・と思ったら、ベットが片側からめくれ上がって・・・私の手を掴んで引きずりだしてしまう。

(ひぇぇ・・・この人、こんな大きいベットを片手で軽々と持ち上げて!)

「助けて!!敦賀さん!!!」

本当はここで言うべきじゃない単語が思わず出てしまう。
今になって、彼の名前を呼ぶなんて・・・もう、遅いのに・・・どんなに後悔したって・・・時間は戻らないのに。

ちょっと前まで愛の無い結婚するんだ、なんて考えていた自分の想像力の無さに腹が立つ。クオンの事は大好き、なのに彼がストレートだと分って・・・動揺して・・・私がこうゆうコトをしたいのは・・・敦賀さんだけだと言う事をハッキリと自覚した。後は堰を切ったように、涙と共に・・・彼の名前が口から零れだす。

「つるがさーん・・・」

クオンに捕まえられて・・・身動きができない体。強く拘束されながら、思い出すのは敦賀さんの事ばかり。

「も、がみさん・・・ここで、俺の名前を呼ぶのは・・・反則」

敦賀さんの声が聞こえていたような気がするけど・・・きっと、私の・・・願望が作り出した・・・幻聴。

「でも、俺を呼んでくれて嬉しい・・・」

いやにハッキリ聞こえる・・・。

「ねぇ、最上さん?助けに来たよ?」

恐る恐る、声のする方を振り返ると、そこに居るのはやっぱりクオンで・・・。

「ひーん」

私は情けない声を上げてしまった。


***


SIDE REN

「だから、俺が敦賀蓮なんだって!」

最上さん・・・今は俺と同じヒズリ姓の彼女に「敦賀蓮」=「久遠ヒズリ」だという事を説明したけれど、全然信じて貰えない。

「クオンはクオンだって事!ちゃんと私はアメリカまで行ってこの目で確かめて来たんですっ!これ以上ない位、身元が確かなんです!!それに、映画で二人は共演してるじゃないですか!!」

「だから・・・あれは一人二役で。いや、俺が、敦賀蓮と刑事とスナイパーの三役をこなしていて・・・」

「幾ら私が騙されやすいからって酷いです!敦賀さんは、敦賀さんで!日本人としてずっと日本の芸能界で活躍されていたんです!!」

俺達は、お互いの(と言っても主に俺に関するものだけど)誤解を解こうと言う事で、ベットの上で向かい合い『冷静に』話し合っている。

(思い込みが激しい性格・・・いや、信じろと言う方が無理があるのか?でも・・・BJの時・・・彼女は、どうやって「BJ=敦賀蓮」だって見分けていたっけ?)

俺は・・・彼女が、嬉々として敦賀蓮の体の「構造」を説明していた事を思い出した。きっとそれが、口で説明するより早い。だから、

「ぎゃー!!何で服を脱ぐんですかーーーー!!」

彼女が枕を俺に向かって容赦なく叩き付けてくる。俺は、枕を避けながら服を脱ぎ捨てて、彼女の腕を素早く掴んだ。

「ほら、ちゃんと見て!体のパーツの対比とか!筋肉の付き方とか!敦賀蓮でしょ!!」

最初は暴れていた彼女が、徐々に俺の体を、驚きと共に見つめ始める。そして、ゆっくりと俺の周りを一周して、正面に戻ってきた。

「・・・敦賀さん・・・の体・・・」
「やっと分って貰っえた?」

(やっぱり、この方法が正解か・・・)

「本当に、クオンは敦賀さんだったんですね・・・」
「うん」

彼女の顔がクシャと歪んだ。

「良かったよ~」

その安堵した表情に、もしかしたら彼女に嫌われるかも?という一抹の不安が拭い去られる。

「ごめんね?もっと早く言わなくて。俺は・・・悪い男だね・・・」

「そうですよ!!もっと早く言ってくれれば・・・私がどれだけ悩んだと・・・」

そう言って、彼女の瞳から大粒の涙が溢れてくる。俺は、彼女をそっと抱き寄せて、

「一生掛けて償うから・・・許して?」

彼女の顔は俺の胸の上に伏せられていてその表情は伺いしれないけれど、耳が赤く染まっている。

(本当に怒っていない・・・良かった・・・)

そこで、ふと、自分たちが、下着姿のまま、ベットの上で抱き合っていた事に気付いた。

(・・・刺激が強すぎ・・・)

「ねぇ・・・キョーコさん?色々あったけど今夜、俺たちは入籍した訳で・・・新婚初夜を・・・新婚夫婦らしく過ごしませんか?」

とりあえず、髪の毛とこめかみにキスを降らせながら・・・声を掛けてみる。すると、耳だけでなく彼女の全身がみるみる真っ赤に染まり始め・・・ふしゅぅぅ・・・と今にも湯気が立ちそうで・・・

(可愛・・・もう、どうしてくれようか・・・って気にさせられるんだけど・・・)

とりあえず、俺は少し意地悪する所から始めたくなってしまって。
きっと・・・黙っている事で暗に肯定を示している・・・つもりであろう彼女に、ねぇ返事は?、駄目かな?と答えを促してみる。

「・・・・駄目・・・じゃないです」

やっと返ってきた彼女の小さな声に、俺は大きな喜びをかみしめる。

「ありがとう・・・俺の可愛い奥さん・・・」

FIN






あー恥ずかしい。これで、本編は終わりとさせて下さい。だって、長すぎですよ!!続きは、また今度!!

プロフィール

Author:Agren
本家のストーリの進行のじれったさに、素敵な2次小説サイトを巡って熱を冷ましていましたが・・・とうとうを自分自身で妄想を開始しました。
2次は愚か、小説初挑戦です!



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